世界初の「少子化税」検討まで飛び出すほど深刻な韓国の少子化問題を考える
韓国が世界初となる「少子化税」を検討しているという。韓国最大発行部数を誇る一般紙『朝鮮日報』が3月16日に報じ、日本でもいくつかのメディアで報じられたので、ご存じの方々もいるだろう。報道に触れて、「思い切った政策だな」と感じた方々もいるかもしれない。
「地球上で真っ先に消え去る国」との指摘も
そもそも韓国の少子化問題は深刻で、合計特殊出生率は昨年、過去最低の1.05人にまで落ちた。日本も少子化問題が叫ばれているが、合計特殊出生率は1.44人(2016年、厚生労働省)。この数字だけ見ても、韓国の少子化問題の深刻さがわかるだろう。
事実、韓国は数年のうちに“人口絶壁”を迎えるとされており、オックスフォード人口問題研究所が「地球上で真っ先に消え去る国は韓国」と指摘したこともあるほどだ。
(参考記事:「地球上で真っ先に消え去る国は韓国」…3年後に迎える“人口絶壁”の原因は)
もちろん、韓国が何ら対策を取っていなかったわけではない。
『朝鮮日報』が報じたように、韓国政府は「この12年間に126兆ウォン(約12兆6000億円)をつぎ込み」問題解決を図った。それでも「少子化問題を解決できなかった」と批判されているのだ。
「少子化税」に否定的な韓国人、なぜ?
それだけに世界初となる「少子化税」という話まで出ているというわけだが、この報道に触れた韓国人の反応はどうか。
文在寅大統領の支持率は高いにもかかわらず、「誰に負担させるのか。まさか結婚を諦めた独身から税金をとるのか?」「お金がなくて結婚できないのに独身税をとるつもりかよ」「税金の引き上げでしかない。なんでも税金で解決しようとする政府だ」といった否定的な意見が多いというのが実情のようだ。
実際に、韓国の人口保険福祉協会が男女1000人に行った設問調査では、子供手当が月10万ウォン(約1万円)出たとしても、少子化問題の解決は「難しい」と答えた人が81.9%にも上った。
韓国の少子化の原因としては、「養育に関する経済的な負担」(64.3%)でもっとも多く、次いで「仕事と育児の両立文化が未熟」(33.3%)だった。
経済的な負担が少子化の最たる理由というわけだが、韓国の「子供の貧困率」は悪くない。それどころか、日本の13.9%に比べると、圧倒的に低く圧勝といえるほどだ。
(参考記事:「子供の貧困率」で日本に圧勝した韓国だが…その背景にある“もうひとつの真実”とは?)
それでも競争社会を勝ち抜くための養育費などが、大きな負担になるということなのだろう。
“結婚離れ”も遠因か
一方で、そもそも韓国の少子化は“結婚離れ”と無関係ではないとの主張もある。事実、韓国の未婚率は30~34歳38.5%、35~39歳19.1%となっており、1995年から2倍以上も上がっているからだ。
「子供に時間を縛られたくない」「余裕のある生活をしたい」と考える若者が少なくないようだが、最近は“結婚離れ”が加速して、女性嫌悪や男性嫌悪にまで発展しているとの声もあるだけに心配でもある。
(参考記事:韓国で「一人世帯」が急増…その背景にある若者の“結婚離れ”が女性嫌悪vs男性嫌悪にまで発展)
こういった背景まで踏まえると、少子化税を導入したとしても、少子化問題は改善されないと考える人が多いのも納得せざるを得ない。ましてや「独身税では?」といった意見が出ているようでは、実現は難しいだろう。
実際、「企画財政部“少子化税の新設? まったく検討していない”」(『イーデイリー』)などと報じられているように、企画財政部(日本の財務省に相当)が検討自体を否定したとの記事も出ている。
つまり、少子化税については今後の経過を見守る必要があるわけだが、『朝鮮日報』が報じたところによれば、検討されている少子化税の方式は「一種の目的税。集まった税金で特別基金を運営」で、「住居支援・バウチャー支給などさまざまな事業に活用」とされているそうだが……。
いずれにしても、少子化税という話まで出ているほど韓国が深刻な少子化問題を抱えていることは事実だ。解決策はあるのか、その動向には注目したい。