Yahoo!ニュース

令和を商標登録することは可能か

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

新元号「令和」が発表となりました。ちょっと前に「新元号を商標登録することは可能か?」という記事を書いています。

再度まとめると、

  • 「令和」単独→登録不可
  • 令和+<識別力のない文字>(たとえば、「まんじゅう」を指定商品にして「令和まんじゅう」)→登録不可
  • 令和+<識別力のある文字>(たとえば、「令和教育委員会」)→(他の拒絶理由がない限り)登録可能

ということになります。

上記最後のパターンにおいては、通常の出願と同様に先願優先となりますが、同一・類似の商標が同日に出願された場合には、特許庁から協議命令が出され、協議が成立しない場合には、くじ(特許庁にあるガラガラポン)で優先順位が決まります。

なお、出願の時刻の先後は関係ないので特許庁に駆け込む意味はありません。本日の深夜までに出願すれば(郵送の場合は本日の消印があれば)、4月1日の出願としてすべて同等に扱われます。

これだけですと内容的に前回とほぼ同じで怒られそうなので、この機会に「平成」が発表された時の状況を調べてみました。

「平成」という元号が発表されたのは1989年1月7日です。特許情報プラットフォームで見る限り、当日の出願で「平成」を含むものはありません(その他、「平成」を想像させる商標の出願もありません)。なお、出願されたものの何らかの理由で拒絶された、あるいは、登録されたが更新料未納により抹消になったものもあるかもしれませんが、それらは特許情報プラットフォームでは仕様上検索できません。

発表後で「平成」を含む最初の出願で現在も登録が残っているものは、1989年1月9日の、月桂冠株式会社による「平成蔵」です。その後、1989年1月11日の、岩塚製菓株式会社による「平成庵」と続きます。ちなみに、現時点で「平成」を含む商標登録(および審査中出願)は全部で131件存在します。

平成の時は、発表日当日に商標登録出願が殺到するという状況ではなかったようです。言うまでもなく当日は昭和天皇崩御の日でもあったので即出願するという雰囲気でもなかったのかもしれませんし、現在ほど「商標ゴロ」的な人がいなかったのであわてて出願するまでもないという認識だったかもしれませんが、今では何とも言えません。(追記)と書きましたが、公告番号ベースで検索して目視で見ていくと発表から数日間の間には「平成」を含む出願は結構な数がありました。単に、その多くがビジネスとして長続きせずに10年後の更新がされなかっただけのようです。

(追記)

「令和」を含む登録商標は存在しません(もしあればそもそも「令和」が候補からはずされていたでしょう)。「レイワ」を称呼の一部に含む商標も(「 とれとれいわし]」のようなパターンを除けば)ほとんどありません。強いて言うと「愛美礼和」くらいです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事