Yahoo!ニュース

重症アトピー性皮膚炎の有病率と慢性全身疾患の関連性について【最新研究】

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【重症アトピー性皮膚炎の有病率が増加】

韓国の大規模な疫学研究によると、6~20歳の子供や青年における重症アトピー性皮膚炎の有病率が2011年から2019年にかけて有意に増加していることがわかりました。重症アトピー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎全体に占める割合も年々高まっています。

特に、13~18歳の年齢層で顕著な増加傾向が見られました。また、全ての年齢層で男性の方が女性よりも重症アトピー性皮膚炎の割合が高いことも明らかになりました。

アトピー性皮膚炎は、乳幼児期に発症することが多い慢性の炎症性皮膚疾患です。かゆみを伴う湿疹が特徴的で、時に重症化して全身に広がることもあります。近年、日本でも患者数の増加が指摘されており、今回の韓国のデータは日本の状況を考える上でも参考になるでしょう。

【重症アトピー性皮膚炎と慢性全身疾患の関連性】

さらに、この研究では重症アトピー性皮膚炎と慢性全身疾患との関連性についても調べています。その結果、重症アトピー性皮膚炎の患者群では、アトピー性皮膚炎のない対照群や軽症~中等症の患者群と比べて、慢性全身疾患の割合が有意に高いことが示されました。

慢性全身疾患には、心血管疾患、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、糖尿病、悪性腫瘍などが含まれます。アトピー性皮膚炎が重症化すると、皮膚のバリア機能が低下し、慢性的な炎症が全身に波及する可能性が考えられます。

重症アトピー性皮膚炎は単なる皮膚の問題ではなく、全身性の慢性炎症性疾患としての側面を持っている可能性があります。重症アトピー性皮膚炎の患者さんに対して、皮膚のケアだけでなく、全身の健康管理にも注意を払う必要があるでしょう。

【早期の積極的な治療介入の重要性】

本研究の結果は、重症アトピー性皮膚炎への進展を防ぐために、早期から積極的な治療介入を行うことの重要性を示唆しています。軽症~中等症の段階で適切なスキンケアや薬物療法を行い、症状をコントロールすることが大切です。

最近では、重症アトピー性皮膚炎に対する新たな治療選択肢として、生物学的製剤(バイオ医薬品)の開発も進んでいます。症状が遷延する場合は、皮膚科専門医と相談しながら、個々の患者さんに合った治療法を検討していくことが求められます。

アトピー性皮膚炎は、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす疾患です。重症化のリスクを早期に評価し、適切な治療とケアを継続していくことが何より重要だと言えるでしょう。

参考文献:

Shin S, Lee JY, Cho H,et al. Prevalence of Severe Atopic Dermatitis and Comorbid Chronic Systemic Diseases Is Increasing in Korean Children and Adolescents. Allergy Asthma Immunol Res. 2024 May;16(3):300-307. https://doi.org/10.4168/aair.2024.16.3.300

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

美肌アカデミー:自宅で叶える若返りと美肌のコツ

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月4回程度(不定期)

皮膚科の第一人者、大塚篤司教授が贈る40代50代女性のための美肌レッスン。科学の力で美しさを引き出すスキンケア法、生活習慣改善のコツ、若々しさを保つ食事法など、エイジングケアのエッセンスを凝縮。あなたの「美」を内側から輝かせる秘訣が、ここにあります。人生100年時代の美肌作りを、今始めましょう。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

大塚篤司の最近の記事