『ペイペイ』の100億円プロモーションがわかりにくい理由
KNNポール神田です。
ソフトバンク株(50%)とヤフー株(50%)の合弁による、PayPay株式会社のQRコード決済『PayPay』の『100億円分を還元するキャンペーンが明日、2018年12月4日火曜日から開始となる。しかし、なぜかピンとこないその理由を分析してみる…。
『PayPay』とは、孫正義氏が牽引する『ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVJ)』が投資するインド最大の電子決済サービス『Paytm』の技術を受けたサービス
中国のAlibabaが推進する『Alipay』やTencentの『Wechat Pay』などのQRコード決済は、中国で爆発的な普及を及ぼした。同時に、現金利用率が8割を超える日本は一気にキャッシュレスの後進国となってしまった。ソフトバンク陣営は、『ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVJ)』を経由して、インドの1000万加盟店舗で、3億人ユーザーを誇る『Paytm』に対し、2017年5月18日に14億ドル(1,582億円)の投資をしており、ソフトバンクグループの群戦略の核企業となっている。中国のAlibabaも『Paytm』に出資している。そして、日本で先行する『LINE Pay』や『楽天ペイ』に対しての、あとだしジャンケンでPaytmの技術をベースに生み出したのがこの『PayPay』だ。
いまだに『PayPay』でググると『もしかしてPayPal』と表示されるジレンマ
まず、最初に『PayPay(ペイペイ)』という名前にまったく馴染みがない。たとえば『ソフトバンク・ペイ』や『ヤフー・ペイ』ならば企業名が浸透しているので、初期段階はその名前でのローンチもありだったことだろう…。そして、いまだに『PayPay』でググると『もしかしてPayPal』が表示されてしまう。ようやくウィキペディアにも『PayPay』が登場し、『PayPay』の検索で電子決済サービスの『PayPal』のサイトは表示されることはなくなってきた。しかし、読みではちがっても、字面ではついつい空目してしまうPayPayとPayPalだ。まず、サービスも名称も『決済』で同業なだけに認知がしにくい…。
キャンペーンの全体像が掌握しにくい
ソフトバンク・グループは、ど派手なキャンペーンがとっても得意な会社だ。かつてはヤフーのモデムを駅前で無料配布して驚かせた。その結果、日本のインターネットADSL常時接続時代の幕開けとなった。また、楽天市場に対して、手数料ゼロでの『ヤフーショッピング』出店など、そして今度は、明日2018年12月4日火曜日からなんと『100億円』の大判ふるまいとなった。しかし、どうも、そのキャンペーンが複雑にみえてピンとこないので整理してみたい。
今回のキャンペーンは4弾建て
まず、今回のキャンペーンは4弾建てになっていることを説明したい。
第1弾 PayPayアプリをダウンロードして初登録するといつでも500円分チャージ
第2弾 PayPayに5,000円チャージすると5,000円+1,000円分チャージ ※『PayPayライト』本日2018年12月3日月まで!
第3弾 2018年12月4日(火曜日)9時からPayPayで店頭支払いをすると『20%チャージ分』がもどってくる ※最大25万円まで
第4弾 2018年12月4日(火曜日)9時からPayPayで店頭で支払いをすると毎回、抽選で全額チャージバックが ※最大10万円まで戻ってくるさらに当選率は、40回に一度(一般)、20回に一度(ヤフープレミアム会員)、10回に一度(ソフトバンクモバイル、ワイモバイル)の確率でユーザーの契約レベルによって当選率が変わり、全額チャージバックが行われる。
第1弾、そして、第2弾までは、まだ、わかりやすい。それは入会キャンペーンとして付与されるキャンペーンイメージだからだ。
ただ、ラインナップが、モンテローザ系を中心とした居酒屋ばかりだった…。この時点でPayPayを使おうという気にまったくなれなかった…。
しかしだ…。2018年12月4日火から全国のファミリーマートで使えるとなるとようやく使い道が見えてきた。旅行代理店でのH.I.S.も12月1日から使用可能だった。また、ビックカメラやヤマダ電機、エディオンなどの量販店やアパレル店舗も近日対応予定とクレジットされた。
第2弾は、5,000円チャージすると、5000円+1,000円分で、6,000円分のチャージになるのだ。
しかし、この第2弾の6,000円分のチャージは本日2018年12月3日(月曜日)23時59分までなのだ!
さらに、通常時(キャンペーン終了時)の利用特典としては、0.5%の還元があり、それは『PayPayボーナス』である。
PayPayライトとは…:Yahoo! JAPANカードや、Yahoo!ウォレットの預金払い用口座からPayPay残高にチャージした金額
PayPayボーナスとは…:特典やキャンペーン等の適用に伴い、PayPay残高に進呈された金額…とあるが、違いがまったくわからない。
本日、2018年12月3日終了の6,000円分チャージを急げ!
明日、2018年12月4日火曜日から20%還元と言われても、『使ったこともないPayPay』のサービスのために、本日中に5,000円チャージしよう!というのも無理なキャンペーンの立て方だ。普通は、この便利さで、さらにオトクということで、TVCMや口コミなどで、話題のトルネード旋風が起きる。しかし、一度もPayPayで支払ったという経験がないものを事前チャージさせるというのは、無理があるだろう。
そう、消費行動理論の『AIDMAの法則』の正統なAttention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)という流れにないからだ。いきなり、リワード(特典)によるAttention(注意)→Action(行動)を要求されているようなものだ。
しかし、これはこれでここまで読んでいただいた読者の方々には、まずはアプリのダウンロードで500円チャージ、5000円の銀行かヤフージャパンクレジットカードからのチャージで6,000円分チャージが可能となるので、急いでチャージしておくべきだろう。明日2018年12月4日からは20%の還元が始まる。
『100億円あげちゃうキャンペーン』の真相
ようやく、明日の9時から、PayPayで20%チャージバックされるので、まずはビックカメラやヤマダ電機、HISなどで利用してみたい。それぞれの店舗が発行するポイントも満額でもらえるはずだ。ただ、ビックカメラやヤマダ電機が明日から参加するのかどうかは、現在ではわからない…。
少なくとも、現在の居酒屋軍団では20%分のチャージバックは発生する。しかし、100億円という予算は増額し、延長する場合もあるという。つまりそれだけ評判がよければ、PayPayは、一躍日本のQR決済のメジャーとなるかもしれないのだ。
そうであれば、単に100億円あげてしまうチャージバックだけでなく、アフィリエイトやネズミ講(笑)のように、友達を誘えば誘うほど、オトクになるというかキャンペーンもできたはずだ。ただし、これはユーザーを増やしたい場合だからいつでも可能な施策だ。まず、現在は、加盟店を増やしたいフェイズだからこそ、加盟店のところにユーザーが押し寄せてほしいのだ。この20%還元はオンライン決済は適応されていない。つまり、加盟店にユーザーがいることを認知させ、リアル店舗の事業者側から抑えていくという戦略発想だ。だから、100億円以上をかけても事業者を獲得できればPayPayとしても美味しいのだ。
『※ただし書き』が多すぎるキャンペーン
https://paypay.ne.jp/promo/announcement/20181122/
しかし、サイトを見るとよくわかるが、どのキャンペーンも『増量』『残高』『相当』のあいまい表記が多い。これはすべて、『チャージ』の一言で統一すべきだろう。また、携帯会社のDNAだろうが、※のただし書きが多すぎる。ユーザーや加盟店もそんな細かなただし書きをチェックしてまでPayPayを使いたいとは思っていない。PayPay は、キャンペーンをもっとシンプルにわかりやすく、明確にしておく必要があるだろう。しかし、現物のチャージでユーザーに100億円をばらまくという戦略は、日本で前代未聞の大キャンペーンなのに、それほど話題にのぼらないのは寂しい限りだ。
2019年4月『期間固定Tポイント』が『PayPay』に変更 これは大改善だ!
2019年2月、ヤフーショッピングやヤフオク、4月からは、LOHACOもPayPayが利用可能という流れも、のんびりした印象だ。
いや、それ以上に『文春砲』のようにPayPayサービスのキャンペーンを開始してから、立て続けに発表すればよいものを一気に発表してしまうと、さらにややこしく理解不能にみえる。
2019年4月(予定)よりYahoo! JAPANカードのキャンペーン等で進呈している期間固定TポイントをPayPayに変更するという。
期間固定Tポイントは、いままで、ヤフー内だけでの利用だったが、PayPayになることによってファミリーマートやビックカメラなどでも使えるようになるので、大改善だといえる。しかし、名称は『使用場所固定のTポイント』がPayPayによって『使用場所拡大のPayPayポイント』になったといえよう。
加盟店はすべて無料…しかしいつから有料?
最後に一番、危惧すること。それは加盟店が、すべて『無料』をいぶかしげに感じていることだろう。
ヤフーショッピングの出店料が無料などは、楽天にも出店している人にとってはパラレルで参加しやすかったが、今回はリアルな店舗で、しかもクレジットカードもとり扱わなかったような加盟店候補も多いはずだ。そんな加盟店候補は、いくら無料と言われても、いつから何%の有料になるのかがわからないとさすがにコミットメントしたくないだろう。
ユーザーが使いはじめ、手数料が有料になったので、やめましたでは、ユーザーに迷惑がかかってしまうからだ。むしろ、クレジットカードでない銀行からの直接なチャージ分に対しては、クレジットカードでは、実現できなかった格安の手数料を今から加盟店に提示しておくべきだろう。
クレジットカードは、国際ブランド、イシュアー、アクワイアラーらの最低手数料が決まっているから飲食の手数料は高くなりがちだ。しかし、QRコード決済はそのクレジットカードよりも激安な手数料を打破できるチャンスでもある。行動データやビッグデータも抑えられる。PayPayは広告モデルでも成立することだろう。すると無料のままでも成立する。イメージはこのビデオでで伝わるだろう…。
PayPayの目指す未来は、かなりユニークだ。
クレジットカードの手数料よりは絶対に安くなりますと一言、確約できれば、加盟店側のムーブメントは一気に動くことだろう。
そうコミットメントは重要だ。そして見える化も重要だ。
『100億円あげちゃう』のであれば、毎日、減額していくさまも電子決済で瞬時に算出し、本日の『100億円の残高』も見える化してほしい。それは、ユーザー側をアクセラレートすることができる。ただ、PayPayにとって一番重要なのは、加盟店側のアクセラレートだ。