CES2020総括 もはやデジタル技術にとどまらないイノベーションショーだった
KNNポール神田です。
ラスベガスで行われた世界最大のデジタル技術見本市CES2020が終わった。CES情報はメジャーどころはとりあげられているので、独断と偏見に満ちたマニアックな部分を紹介したいと思う。
■要素技術を何に活かすことができるか?の課題
『ROYOLE』のブースでは、自分で光を発行する自発光の『AMOLED アクティブマトリクス式有機EL(Active Matrics Organic Light Emitting Diode)』による『フレキスブルディスプレイ』を発表した。『フレキシブルなディスプレイ』として、まるで紙や葉のような薄さでの今後の活用シーンを提案する。
液晶ディスプレイと違い、どこから見ても鮮やかな色を見せることができる。しかも湾曲でき、限りなく薄いのでTシャツや帽子などに添付され展示されていた。しかし、どこかニーズと違う気がしてしまう。これでは広告宣伝マンにしか使ってもらえそうにない…。
むしろハンドバックなどのような思いもしなかったファッション製品に取り入れられることによって、大きく変化が起きそうだ。ファッション関係者にファッション素材としての『AMOLED』の情報提供はありだと思う。例えば、高級スポーツシューズだと夜間にいろんなブランドテーマが浮かび上がるなどの利用が可能だ。高価な値段であればあるほど高級ブランドでは歓迎される。
むしろ、今までディスプレィをつけることができなかったいろんな場面に、視覚情報を与えることが可能になる。想像もできなかった場所に情報を提供することができるようになる。最初は希少な価値だが、一気にブレイクすると誰もが手にしている時代がやってくることを物語る。タブレットがシートになっていくのだ。テレビジョンとかスクリーンとかを不要にしてしまう技術なのかもしれない。どんな技術も最初は間違った使われ方をされるものだ。二つ折りスマホとか…。
■既存業界から新たな業界への参入
保険業界から健康応援企業への変革をめざす『SOMPOひまわり生命』の場合。
従来の保険会社が提供する保障機能(Insurance)に、健康を応援する機能(Healthcare) を組み合わせた『Insurhealth(インシュアヘルス)』をコンセプトに、保険業界から健康応援企業へとの変革を進めている。万一の時のための金銭面を補償する保険ではなく、普段から健康状況を常にモニタリングできるアプリケーションを用意し、健康状態を維持する事業への変革を目指している。すでに『Insurhealth(インシュアヘルス)』事業は売上の25%を占めるところまで成長しているという。ある意味、保険業界は将来の不安への金銭面においてのサブスクリプションモデルであるが、競合も多く、差別化しにくく、さらにエンドユーザーに仕組みがわかりにくい。万一の補償よりも、万一を未然に防ぐためのサブスクもありだろう。
むしろ、保険業界としてではなく保険業界のノウハウを持って健康を応援するためには、将来の健康リスクを早めにモニタリングできる世界最先端のテクノロジーのパートナーと組み、日頃の表情から読み取れるストレスチェックや痴呆症の事前予測などのアプリなどを提供する。
「保険を売るために、健康支援を掲げられるところは多いが、私たちは保険業界のノウハウを持って新たな異業種へ参入する思いで、『Insurhealth(インシュアヘルス)』を掲げ、健康応援企業としての事業をすすめている」大場康弘社長
■ボタン製造部門からサービス部門への変革
パナソニックのブースでは、地味目だが、満足度を調査するボタンシステムを展示していた。本来は部品としてパーツを提供する部門がサービスとしてソリューション事例を提供する。海外ではよくあるこのサービスが気に入ったか気に入らなかったかのボタンのショーケースを展示している。日本では、アンケート用紙などを投函するようにしているが激怒したカスターマーはそんなアンケートには答えず二度と店に来なくなるだけだ。たとえば、出口に店員に見えないようにこの『IoTボタン』を押せれば、どこの店舗で何時何分に顧客が不満足だったのかを数値化することができる。リアルタイムに集計が出せれば本部は顧客からのクレームを店舗よりも早く把握することができ、対策が打ちやすくなる。IoT機器で投資対効果の一番高いのはクレームポイントの全チェーン店舗での定量把握だ。
空港などでのトイレなどにもこのようなタブレットでアンケートがすでに設置されている。不満のある人は必ず押していくことだろう。このしくみがなぜ日本で普及しないのが不思議だ。
■代替肉市場へのシフトがホットなアメリカ
バーガーキングにも採用された『IMPOSSIBLE』は、植物由来の代替肉。米国スタンフォード大学の教授のパトリック・ブラウン(Patric Brown)らが2011年に創業。
同様に2019年にIPOを果たした『Beyond Meat(2009年創業)』と共に注目される。
CES SHOWでは『PORK』を提供し、特に中華料理での使用をイメージしたセッションが展開された。実際にシューマイを試食したが、見た目も味も、豚肉と遜色なく感じた。何よりも地球環境に良い食事をした満足度の方が大きいのだろう。実際にポークを出したことは中国市場へのインパクトを期待しているとのことだ。現在はまだミンチ肉だがより進化してくると部位ごとの味が求められることだろう。
実際にCESのラスベガス会場を後にして、現在ロサンゼルスに滞在中であるが、いたるところで『代替肉ブーム』を感じ取ることができた。
『MONTY'S Good Burger』は100%IMPOSSIBLEの代替肉だけのハンバーガー店だ。ここはリムジンでのりつけて行列する人までいるほど大人気でいつも行列している。
狭い店内にぎっしりと客がIMPOSSIBLEの肉を頬張る。代替肉専門のハンバーガーショップに人が行列していることに驚いた。
通り向かいの『Cal's Jr』では『Beyond Meat』のメニューが本物の肉よりも2ドル高く表示されている。2ドル高くても代替肉を消費するエシカル消費層が多いことがよくわかる。
しかし、本格的な地球的な問題を解決するためには、代替肉が本物の肉よりも安く提供されない限り地球的なインパクトは難しいだろう。しかし、肉を食べるのに、植物由来の餌を必要としない、命をうばわない肉という選択肢が増え、外食産業から取り入れだしたことは、日本にも伝搬するフードテクノロジーとなることだろう。 旨さと頭で考える食肉問題の可能性だ。
■CES 巨大展示会をすべてを把握するのは至難のワザ
会場が肥大化するCESの会場。筆者がよく訪ねていた1990年代頃と比べると規模的に何倍にも大きくなっているように感じる。これもすべて展示会場の運営の手腕であると思う。ショーの名前はCESだが、「デジタル技術見本市」という名称もすでに「消費者家電ショー」と言われたいた時代のように陳腐化する傾向を感じた。そう、すでにデジタル化が普遍化してきているからだ。常に、「次世代のイノベーション技術の見本市」としての地位を獲得し、各会場ごとの企画のまとめかた、それに規模感、さらにシャトルバスの円滑な運行まで、常に「ASK Me」の案内人がフレンドリーに対応してくれるなど、運営のうまさを非常に感じる。おかげでラスベガス滞在期間、会場以外へはどこへもいくことができなかったほどだ。また、会場に実際に足を踏み入れることによって、それぞれが感じるCESがそこにあることだろう。すべての出展者を把握することはもはや至難のワザだ。1日に5万歩近くを毎日歩くだけでもかなりのスポーツ取材だった。