衆院選公示前最終議席予想、自公で絶対安定多数を確保も自民は議席減か
いよいよ明日19日(火曜)に、第49回衆議院議員総選挙が公示されます。横浜市長選での与党系候補敗北から菅総理の辞職予告発言、自民党総裁選、そして岸田内閣の誕生と、約2ヶ月もの間大きく動いた政局もいよいよ最終盤を迎えます。
今回は、公示前最終盤の情勢を鑑みた議席予想を各種情勢調査や現場での取材などをもとに行いましたのでお伝えするとともに、選挙戦全般の見どころについても解説していきます。
第49回衆議院議員総選挙の政党別・小選挙区比例別議席数予想
筆者(大濱崎)の、各政党の小選挙区・比例別の予想議席数は以下の通りです。
上記の表をもとにすると、自民党が単独で過半数(233議席)を超える可能性があり、また自民・公明の与党で絶対安定多数(261議席/全常任委員会で委員の過半数を確保し、かつその委員会で委員長を独占するのに必要な議席数)を確保する可能性がある情勢です。ただし自民党は議席を減らす可能性が高いほか、自公で圧倒的多数(310議席/憲法改正や参議院で否決された法案の衆院再可決に必要な議席数)を獲得するには至らないでしょう。野党は立憲民主党、日本維新の会、日本共産党が議席を増やすとみられています。社民党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反では苦戦するとみられています。
政党別の情勢と傾向
まず自民党です。小選挙区の傾向に関しては「不祥事のあった議員」「高齢議員」を中心に情勢の厳しい議員が目立っています。「不祥事のあった議員」については、今任期中に政治とカネの問題が発覚した議員について小選挙区で厳しい結果となる見通しのほか、女性問題等が週刊誌で報道された議員らも選挙区で苦戦している状況です。また、「高齢議員」についても特に当選回数10回を超える大物議員2人を含む高齢の議員が小選挙区で厳しい情勢となっており、比例重複がなされない場合には落選引退の可能性も否めません。比例に関しては、比例投票先未決定層もまだ多いのですが、順当にいけば前回(66議席)並の議席を獲得するとみられます。保守分裂で候補者調整を行った選挙区は、2,3の選挙区を除いて順当な結果となりそうです。
次に立憲民主党です。野党共闘が成立した選挙区を中心に、小選挙区では議席を伸ばす勢いです。前述の自民党「不祥事議員」「高齢議員」の選挙区で野党統一候補たる立憲民主党候補が小選挙区で上回る可能性があるほか、前回総選挙で僅差の小選挙区で、かつ地元での政治活動の量が与党議員を上回っている選挙区でも小選挙区での勝利を勝ち取れる見込みがあります。結果的に、解散時の議席を上回る可能性が極めて高い情勢です。
公明党は、小選挙区で激戦となる選挙区が複数あり、これまでの総選挙と比べても厳しい選挙戦になることは間違いありません。一方、現在のところ衆院選の想定投票率がそこまで高くないことなどから、現有議席維持と予測しています。比例に関しても支持母体となる創価学会員の高齢化やコロナ禍における活動の制限などの諸問題を抱えていますが、こちらも現有を維持するとみています。
日本維新の会は、小選挙区・比例ともに躍進する見込みです。大阪府内での勢いは従前同様に保持しており、前回小選挙区で惜敗した候補者も今回は上回る可能性があります。また、第1次・第2次公認合わせ94人の候補者を擁立する予定で、前回(第48回)の倍近くの候補者擁立が比例票を底上げするとみられます。
共産党は、比例代表で議席を増やすとみられます。野党共闘を成立させることで組織の弱体化を憂慮する声もありますが、想定投票率が低いことや都心部での共産党支持割合が微増していることなどから、議席も微増するとみられます。
国民民主党は、前回同様の議席数となる見込みです。社民党についても、同様に前回総選挙の議席を維持する見通しです。れいわ新選組は、党代表の擁立選挙区決定が遅れたことやその経緯から、比例での議席獲得もやや厳しくなっています。NHKと裁判してる党弁護士法72条違反では、総選挙での議席獲得は厳しいとみられます。
比例ブロック別・年代別比例投票先を読み解く
世論調査会社のグリーン・シップが10月13日に発表したリリースによれば、9〜10日に行った調査(222,695サンプル、うち固定146,185、携帯76,510)での比例ブロック別・年代別の比例投票先は次の図の通りです。
これらはオートコールで架電していることや携帯電話を含んだサンプルであることを加味して読み解く必要がありますが、ブロック比例投票先では自民党と答える割合が多く、立憲民主党が次に続く傾向があります。近畿ブロックでは日本維新の会が2位にくること、東京ブロックでは共産党が10%を超えることも特徴といえるでしょう。野党共闘(立憲・共産・社民・れいわ)の合計は、日本維新の会が強い近畿ブロックを除けば概ね25〜35%となり、自民党と肉薄します。
また年代別に関しては、自民党支持者が若い世代で割合的に多いことが示唆されます。一方、投票率が最も高いと言われる65~69歳を含む60代が最も自民党の支持率が低く、60代の投票率が底上げされれば、比例で野党側に有利に働く可能性があります。
選挙戦序盤の注目ポイントとまとめ
以上、ここまで議席予想と傾向をお伝えしました。ただ、これらの議席予想と傾向は現時点のものです。特に、今後国政レベルで大きな状況の変化があった場合には、情勢が変化する可能性もあります。
特に、10月24日に(衆院選より1週間早く)投開票を迎える参議院補欠選挙(山口県、静岡県)が岸田内閣にとっての初の国政選挙としての結果となりますが、この結果が与党にとって2勝0敗であることと1勝1敗であることは、衆議院議員総選挙にも必ず影響を与えるとみており、特に選挙戦中盤以降接戦との観測も出てきた静岡選挙区には注目をしておいたほうが良さそうです。いずれも与党系議員の辞職による補欠選挙のため、仮に静岡県選挙区で野党系候補者が勝てば、後半戦にかけて野党側に勢いが増す材料となる可能性があります。また、各党党首クラスの第一声での訴えについても選挙公約焦点化がうまくいくかどうかに注目です。