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次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第13節)【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
スクラム職人として鳴らす青木は、豊富な運動量でも知られる。(写真:築田純/アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグ第13節(12月24日~12月25日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。

昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。

トップリーグの第14節は1月7、8日、各地でおこなわれます。詳細はこちらをご確認ください。

1 左プロップ

石原慎太郎(サントリー)…ヤマハとの首位決戦で勝利。敵陣深い位置でのターンオーバーを奪った1本など、スクラムで魅せた。後半12分には防御網のギャップを突き、貴重なトライを決めた(スコアが24―17から31―14となる)。

2 フッカー

青木佑輔(サントリー)…ヤマハ戦。0―10とビハインドを背負って迎えた前半15分、敵陣22メートル線付近左の相手ボールスクラムをターンオーバー。聞けば、組み合う瞬間の「ヒット」で手応えを感じたとのことだ。スコアを7―10と追い上げ、流れを変える。

3 右プロップ

須藤元樹(サントリー)…勝利を引き寄せるスクラムの組み手。レイルア・マーフィー(キヤノン)もクボタ戦の後半9分から登場し、自陣ゴール前でのスクラムターンオーバーやチャンスゾーンでの力強いランで魅せる。

4 ロック

ジョー・ウィーラー(サントリー)…攻防線上には何度も出現する。空中戦のラインアウトでも、2メートルの長身を生かしてスティールを繰り出す。東芝に惜敗した谷口智昭(トヨタ自動車)も、こぼれ球への反応や肉弾戦へのブローで存在感示す。

5 ロック

真壁伸弥(サントリー)…試合終盤の自陣22メートル線上で好守示す。攻撃時の肉弾戦でも、味方ランナーをサポートする延長で相手防御の身動きを封じた。そうして向こうの動きがノット・ロール・アウェー(タックラーが倒れたままプレーに関与する反則)と判定されることもあった。豊田自動織機戦で快勝したマイケル・ブロードハースト(リコー)も出色。先制トライ時のモールで効果的な壁(相手の防御からボールを守る役割)になり、前半30分のトライにつながるラック連取時にも、人垣をすり抜ける好ランを繰り出す。

6 ブラインドサイドフランカー

ヤコ・クリエル(クボタ)…大量リードを許していたキヤノン戦の後半途中から登場。杭打つランで流れを変え、スコアを縮めた。ラポーニ・ウォーレンボスアヤコ(NTTコム)はホンダ戦で初スタメン初トライ。文句なしの速さと強さが光る。

7 オープンサイドフランカー

ジョージ・スミス(サントリー)…ハーフタイム。語学堪能なスタンドオフ小野晃征(後述)、キャプテンのスクラムハーフ流大を伴い、レフリーに判定の解釈をヒアリングしていた。時間を追うごとに、相手ボールでの密集戦で存在感を示す。特に自陣ゴール前で釘付けにされた後半20分台は、何度もボールへへばりついた。最後はゴールラインの手前でノット・リリース・ザ・ボール(球を手離さない反則)を誘った。

8 ナンバーエイト

リーチ マイケル(東芝)…トヨタ自動車戦で2連勝。後半開始初頭の勝ち越しトライなど、防御の壁を破るランを連発した。2点差を追っていた後半30分頃には、自陣ゴール前でタックルを繰り出し落球を誘った。フランカーに入ったリアム・メッサム(東芝)とともに、最前線で身体を張った。対するワイクリフ・パールー(トヨタ自動車)も敗れはしたが、球を持てばほぼ必ず前に出た。

9 スクラムハーフ

田中史朗(パナソニック)…サニックス戦は、徐々に点差を離して快勝。まだ勝負の行方がわからぬ前半17分、敵陣深い位置でフェーズを重ね、一転、ラックのパスダミーを織り交ぜて前進。瞬時の動きで相手防御を引きつけると、改めてパス。ヴァル アサエリ愛のトライをアシストした。守っても、スクラム脇でのタックルで相手の勢いを殺した。流大(サントリー)も、相手防御の背後へのキックで首尾よくエリアを獲得した。コカ・コーラ戦に出場した茂野海人(NEC)は、相手防御の揃わぬうちに球を持ち出して左右へ配球。テンポを速めた。

10 スタンドオフ

小野晃征(サントリー)…相手防御の幅を見定め、目の前のスペースが空けばランを仕掛けた。前半32、40分台の2トライはそうして生まれ、21―17とリードして後半を迎えた。ジャン・クロード・ルース(キヤノン)はクボタ戦で活躍。抜け出した味方へのサポートでトライを決め、50メートル超のペナルティーゴールを決める。田村優(NEC)は、再三、技ありのキックでチャンスメイク。

11 ウイング

パトリック・オズボーン(クボタ)…ハンドオフで防御と間合いを取って、ぐいぐいと直進。文句なしの推進力を披露した。小松大祐(リコー)は5―7と勝ち越された直後のキックオフで快足を飛ばし、ビッグタックル。すぐに起き上がって倒れた選手を乗り越え、援護についた味方(ブロードハーストら)とともに相手の反則を誘う。ペナルティーゴールでの再逆転を誘った。

12 インサイドセンター

エルトン・ヤンチース(NTTコム)…ホンダ戦では、小倉順平と2人でスタンドオフ役を分担していたような。味方のゲインを引き出すパス、防御網のスペースへ駆け込んでのトライ、囮役としてのスペースメイクなどで水を得た魚だった。立川理道(クボタ)は相手防御を引きつけながらのパスやこぼれ球への反応など、鎹としての働きをいつものように全う。ヴィリアミ・タヒトゥア(ヤマハ)の強烈なぶちかましは従来通り。林泰基(パナソニック)は囮役として防御を引きつけ、インターセプトからトライを奪取。

13 アウトサイドセンター

リチャード・カフィ(東芝)…敵陣の接点へ身体を入れ、ターンオーバーを奪ったり、相手の反則を促したりする。(直後に別のエリアでトライされたものの)自陣深い位置で、意を決しての「詰め」のタックルなどを繰り出したことも。勝負勘と献身性の合わせ技。

14 ウイング

後藤輝也(NEC)…スピードランナーとして大暴れ。前半31分にはスタンドオフ田村優のキックパスへ反応してトライ。後半19分には、ライン参加してのパスでフルバック吉廣広征のスコアをアシストした。中つる隆彰(サントリー)も持ち前の俊足でトライ、チャンスメイク。羽野一志(NTTコム)は鋭い出足でのタックルで落球を誘い、深い角度からのランニングで前に出た。

15 フルバック

ウィリー・ルルー(キヤノン)…最後尾からの鋭いキック、トライを生みだすパス、鋭いチェイス、高く飛び上がってのハイパントキャッチで光った。特にチェイスを繰り出したのは前半18分。自陣でのターンオーバー直後に自ら蹴った球を追い、カバーに回った相手選手はそのままタッチラインを出るしかなかった。その後キヤノンは敵陣ゴール前左でラインアウトを獲得し、モールでのトライを導いた。得点に繋がったパスは2本。前半4分にはオフロード気味のパス、後半1分には大外へのロングパスと、種類の違うものをスペースへ送った。塚本健太(サントリー)はハイパントキャッチやグラウンド中盤に走路を定めたカウンターアタックなどで、ヤマハとのエリア合戦を引き締めた。

<備考>

・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)

・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。

・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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