9/26土より再開。国勢調査のインターネット回答 10/20火まで
KNNポール神田です!
国勢調査のインターネット回答ページ
本日(2015年9月26日土曜日)より、インターネットによる国勢調査が再開されることとなった。期限は、10月20日(火)23:59までが可能となっている。再開の理由としては、総務省統計局国勢統計課によると「雨天などの災害のための延期措置」ということだった。
東京・練馬区のボクのマンションでは、9月20日(日)に在宅中にもかかわらず、ポストに無造作に投函されていた。本来、国勢調査は約70万人の臨時の地方公務員が面接の上、手渡しを基本としているので、封筒に封印されずに世帯を確認して渡されるものだ。
しかし、集合ポストに投函された調査票は、無惨にもDM同様にゴミ箱に廃棄されていた。
さらに、投函されたその日がインターネットの回答締め切りであったので、翌日に登録しようとするとすでに締め切られており、国勢調査のコールセンターに苦情をよせたが、自治体によって徹底指導なされていない点が露見された。
■日本国内初のインターネット国勢調査
国勢調査は5年に一度、総務省がおこなっている全世帯調査。予算規模は、672億円(※一世帯あたりの換算で@1,293円)の予算をかけておこなわれる国内最大規模の調査である(2010年前回は649億円)。第一回は1920年(大正9年)で2020年には100年目を迎える調査だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/国勢調査_(日本)
今回、初の日本全国でのインターネット国勢調査(都内でのみ前回2010年に実施)が行われ、すでに1917万5769世帯分のデータが2015年9月20日に集められた。日本の総世帯数5195万世帯(2010年)の36.9%がネットで回答を寄せている。これは快挙ともいえる数字だと思う。すでにこの回答世帯のデータは公開され、全国平均36.9%に対して、滋賀県(51万世帯)の 48.4%が最も高く富山県(38万世帯)、岐阜県(73万世帯)、愛知県(293万世帯)、奈良県(52万世帯)など17の県において4割を越えた。それに対して大阪府(383万世帯)は35.4%、東京都(639万世帯)26.0%、沖縄県(52万世帯)22.7%となっている。これらもすぐに公開できる点がネット利用の利点だろう。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/houdou/pdf/20150925.pdf
この4割近くの人たちが地方都市でネットで回答を寄せている。結果は2016年2月の発表予定だ。ネット回答がもっと普及すれば年内に発表という時代がやってくるかもしれない。しかし、単身世帯が増える東京都での26%の回答率の低さが気になる。単身世帯の増加が日本の将来の問題でもあるが、そこの回答協力が得にくいことは、セキュリティの高いマンションなどの、現在社会のしくみと合致していないことと関係していることだろう。本当は国勢調査は統計法で罰金は50万円以下と法律で定められているが、その抑止力はあまり期待できない。
■報告義務を拒むと50万円以下の罰金
基幹統計調査に対する正確な報告を法的に確保するため、基幹統計調査の報告(回答)を求められた者が、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすることを禁止しており(第13条)、これらに違反した者に対して、50万円以下の罰金が定められています(第61条)。
http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm
■ネット調査のメリットの最大化で郵送関連費用だけでも、18.4億円節税
単純に考えても、国勢調査の返答分の郵送費82円+開封作業や入力手数料を約10円としても、92円が約2,000万世帯からは発生しない。これだけでも18億4000万円の節税効果が発生している。そして何よりも統計データの処理化、データ化のスピードアップが図れる。サンプリング調査でない、全世帯調査の国勢調査ほど、多岐にわたる国民を知るための基本データなので、何よりもそのデータの精緻さにも期待したいが、かける予算もできるかぎり削減したい。
■プライバシー時代の国勢調査
国勢調査が、なぜこのような方法で調査されているかというと、住民票ベースで掌握できない実際に世帯が居住しているデータから知ることができるからだ。市区町村の住民票ベースで調査票を送ったとしても実際の住居と同じでないほど単身世帯が増えている。これは選挙の投票券と同じ理屈だ。しかし、調査員が個別の住居ごと、基本的に郵便ポストごとにIDを作成し、住居とのみヒモづけしているからこそ、国勢調査のデータにはプライバシーデータとヒモづけがなされない。しかしだ。回答する側は、「住所」「氏名」「電話番号」「仕事の有無」「職場」「業種」「職務内容」を応えるので心理的に情報漏洩などがとても気になる。国勢調査はデータの重複をふせぐための「氏名」なので、これだけプライバシーが問題とされる社会に対応するためには、「住所」「氏名」「電話番号」などの個人を特定されるデータを取得しないほうが良いかもしれない。その方が、回答を「統計法」で義務づけされている国民の心理的負担は軽減できることだろう。
マイナンバーとの連動は?
マイナンバーは、住民票ベースに本人を確定し、社会保障や税、個人の収入の流れを把握し、役所の業務を合理化するためのものなので、未来を予測するための現状の国勢調査とは相性がよくない。国や地方公共団体からの調査や申請がスムーズに行われるメリットのあるネットのシステム利用は、税の歳出を抑えるためにも促進したいものだ。しかし、国や地方公共団体側だけのメリットしか目に見えないので、国民の協力が得にくく、統計法で罰金50万円が設定されていても、前述のようにDM同様に廃棄されるという事象も現れている。何よりも、ネットで個人情報が漏洩するという目に見えない恐怖に苛まされているからだ。知らない人とかかわらないということが最大の国民のセキュリティになってしまったからだ。
ネット調査協力費用の支払いによるモチベーションはありではないか?
面接で会えない人にとってのネットでの調査のモチベーションを上げるためには、ベネフィットしかないだろう。ネットで応えるだけで、例えば500円相当の「日本円ポイント」を付与する。エコポイントでも名称は何でもよい。ネットで流通するポイント貨幣を政府がプラットフォームとしてトライするのはちょうどいい規模だ。利用は、「電子印紙」や「電子切手」などの購買と合わせると総務省や財務省の監督庁だろう。さらに民間のポイントと相互乗り入れができれば消費動向まで統計的に処理できる可能性も見えてくる。税などの還付金がネットでどう使われたかも個人を特定せずに、統計的に知れるメリットは大きい。
全国5195万世帯で、259億円の予算だ。現在の予算の38%である。それが5年後の2020年を目標に100%ネット回答を目指せばメリットは多々あるだろう。まずは、個人のデータとヒモづけされていないことをアピールし続けることが重要だ。
首都圏の賃貸マンションの実態データであれば2年ごとに調査することによって、首都圏の移動と家賃との統計が取れる。これであれば匿名でも引越や住宅販売の実態を掌握し政策面などでも反映できる。日本版電子政府へのスタートともなるだろう。個人のプライバシーへの関与ではなく統計データのみへの反映のデータとなれば、シェアハウスやエアービーアンドビーなどの規制緩和へのニーズも掌握することができる。さらに追加インタビューも報奨金があれば、民間と組んで調査を深めることができそうだ。重要なのは監督省庁の縦ではなくネットに関するサービスを横断できる「ネット庁」のような存在をイメージしていくことだろう。
今回の、ネットによる試みで、国勢調査の回収率のうち何割がネットで回収されるのか?
5割を超えたら、5年後はすべてネットでという世界も夢ではなさそうだ。
その先には、日本版の電子政府を見据えたアクションも今から検討すべきだろう。
エストニアの電子政府を見ならおう
北欧の小国、エストニアでの「国民IDカード」の利用率は8割を超え、携帯電話から免許証、銀行までが連動し、選挙の投票率の15%までがカード利用だという。しかし、一番の利用の高さの理由は、自分の個人情報を誰が利用したのかを明確に開示している点に注目したい。
日本の「個人情報保護法」は情報漏洩を防ぐ方向での罰則がメインで、情報を活用どころか反対に扱いにくいものにしてしまった。さらに余分な情報を聞き出さなければ個人が特定できないというデメリットもある。ネット時代にふさわしいのはエストニアのように、自分の個人情報を国民が主権者として、誰に利用されたのかを可視化できる権利だと思う。政治も国民もガラス通しという共にデータを閲覧できる権利が必要なのだ。来年から、個人や企業だけがマイナンバーで管理され、政治家の政治資金団体のマイナンバーが公開されないほうがおかしくてしかたがない。成功交付金も自分がどの党に配布するのかをネット上で意思表示してもよいだろう。
政党交付金は、直近の国勢調査で国民1人あたり250円で金額が毎年、決定される。2010年(平成22)国勢調査人口により算出すると約320億円。国勢調査のネットのIDを使って、どの政党に交付するのかを個人の声として、反映できれば選挙の時だけでなく、国民の意思を聞くつもりがあれば5年に一度チャンスがまわってくる。18歳以上だけでなく、世帯全員が赤ちゃんから老人まで含めて国民世帯の意思が反映される。これも、「国勢」という国民の民意が可視化できるチャンスだ。同じ総務省管轄なので、いろいろと検討してみてほしい。
最後に、総務省統計局国勢統計課のインタビューのご協力にも感謝したい。