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出掛ける前からジャズ気分:ジャズが導く平和への刺激的な3ヵ国協調(JUST MUSIC@BAJ)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
クリヤ・マコト=シルヴェスター・オストロウスキー『ジャスト・ミュージック』
クリヤ・マコト=シルヴェスター・オストロウスキー『ジャスト・ミュージック』

2014年3月にアルバム『ジャスト・ミュージック』をリリースした、3ヵ国混合のジャズ・ユニット“クリヤ・マコト=シルヴェスター・オストロウスキー・クインテット”によるステージ。

3ヵ国=日本とポーランドとアメリカというメンバー構成で、クリヤ・マコト(日本)とシルヴェスター・オストロウスキー(ポーランド)の双頭バンドとして結成されたのが昨年。

もともとはクリヤ・マコトがこの10年ほどヨーロッパ・ツアーやアルバム制作などを通して交流を深めてきたなかで生まれた、「さらに一歩踏み込んで音楽による相互理解を目的とした国際交流ができないか」というアイデアがかたちになったものだ。

編成はトランペットとテナー・サックスのフロントにピアノ・トリオのクインテットで、結成時にクリヤ・マコトに取材したさいにはV.S.O.P.クインテットのようなハード・バップのサウンドに挑戦してみようと思っているというコメントをもらったことを覚えている。なるほど直後のライヴでは“ネオ・ハード・バップ”と言いたくなるような、懐かしさと新しさが入り混じった熱いプレイを聴かせてくれた。

ちなみにV.S.O.P.クインテットとは、アメリカ建国200年にあたる1976年の米ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演するために結成されたユニット。ジャズのひとつの究極を表わしているとされる1960年代のマイルス・デイヴィス・クインテットのサウンドを蘇らせようという趣向だったが、マイルスが術後療養中だったためフレディ・ハバードが代演して“黄金のクリンテット”を再現した。これが評判となって世界ツアーも成功させるなど、その後のジャズのイメージを方向づける重要なパフォーマンスになった。

ハード・バップをさらに発展させ、ハード・ブローイングの完成形を示したV.S.O.P.クインテットを器に、3ヵ国の“異文化”を混ぜ合わせることで新たなジャズ・フレーヴァーを生み出そうとしたのが、この“ジャスト・ミュージック”ユニットであるとボクは読んだ。

2014年はポーランドの民主化25周年という節目の年にあたる。この国際交流ユニットがお互いの国にとって貴重な成果を上げていることは、9月にポーランドのワルシャワ王宮で行なわれた記念式典で演奏する機会があったことでもわかるというもの。その報告もこの日本凱旋(あるいは来日)ツアーのステージできっと語ってくれることだろう。

では、行ってきます!

●公演概要

9月19日(金) 開場 18:00/開演 19:30

会場:ブルース・アレイ・ジャパン(目黒)

出演:クリヤ・マコト(ピアノ)、シルヴェスター・オストロウスキー(テナー・サックス)、ピョートル・ヴォイタシク(トランペット)、ニューマン・T・ベイカー(ドラム)、エシェット・オコン・エシェット(ベース)

♪Just Music- Sylwester Ostrowski & Makoto Kuriya Quintet

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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