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新潟・福島豪雨と災害時要援護者

饒村曜気象予報士
大雨イメージ(写真:アフロ)

平成16年7月12日夜から13日にかけ、活発となった梅雨前線により、新潟県中越地方から会津地方にかけて大雨となっています(図1)。「平成16年新潟・福島豪雨」です。

図1 新潟・福島豪雨時の天気図(2004年7月13日9時)
図1 新潟・福島豪雨時の天気図(2004年7月13日9時)

五十嵐川や刈谷田川の堤防決壊

日本海から東北南部にのびる梅雨前線の活動が活発となり、新潟県中越地方や福島県会津地方の同じ地域で1時間雨量が50ミリを越す激しい雨り続きました。新潟県から能登半島沖を通って朝鮮半島にのびる梅雨前線の中に、積乱雲の列ができ、発達した積乱雲が次々に新潟・福島両県のほぼ同じ場所にやってきたため、記録的な豪雨となりました(図2)。

図2 気象レーダー(2004年7月13日7時)
図2 気象レーダー(2004年7月13日7時)

日雨量は、新潟県の守門岳で356ミリ、福島県只見で325ミリを観測するなど、これまでの記録を更新する大雨となり、新潟県三条市、見附市、中之島町を流れる信濃川水系の五十嵐川や刈谷田川では、相次いで堤防が決壊しています。

避難指示は新潟県の見附市・五泉市・中之島町の計6000世帯に対して行われ、避難勧告は、新潟県と福島県の7市15町6村の約2万5000世帯に対して行われました。

「平成16年新潟・福島豪雨」では16名が亡くなりましたが、ほとんどが溺死によるものでした。しかも、70歳代が10人、80歳代が3人と、高齢者の割合が非常に高いという特徴があります。

「新潟・福島豪雨時」の5日後の7月18日、未明から昼前にかけて福井県嶺北地方から岐阜県西部で起こった豪雨では、足羽川などの堤防が決壊して多数の浸水害が発生したため、気象庁では「平成16年福井豪雨」と命名しています。また、平成16年は、台風23号など台風が10個も上陸し、そのたびに大きな気象災害が発生しました。

このため、平成16年は、日本の防災体制の大幅な見直しが行われるきっかけとなった年ということができます。

災害弱者から災害時要援護者へ

「災害弱者」という言葉は、昭和60年代には使われていた言葉で、昭和62年の防災白書では、「災害弱者とは、必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全な場所に避難するなど、災害時の一連の行動に対してハンディを負う人々」と定義しています。

しかし、平成16年新潟・福島豪雨の直後から「災害弱者」という言葉にマイナスイメージがあるということで、「災害時要援護者」という言葉に置き換えられ始めました。

「災害時要援護者」は、災害時に援護する者が把握している名簿にある「災害弱者」のことということから、「災害時要援護者」という言葉が使われたことにより、対象範囲が狭まったともいえます。そして、個人情報保護の流れの中で、災害時要援護者の名簿をどのように作り、名簿管理を含めて、どのように運用するかという問題がでてきました。

「要配慮者」と「要支援者」

最近は、高齢者、障がい者、乳幼児などの、特に配慮を要する人を、「要配慮者」といい、そのうち、災害が発生したり、災害が発生するおそれがある場合に、自から避難することが困難な人のうち、円滑で迅速な避難活動のために支援を要する人を「避難行動要支援者」と呼ぶなど、いろいろな言葉が使われています。

新しい言葉が使われるということは、防災活動が新しい概念で行われることを意味すると思いますので、言葉の変更は当然のことと思います。

そして、防災活動で大事なのは、行動を表す言葉そのものではなく、行動が効果的に働いているかどうかだと思います。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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