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サントリーに大敗。清宮克幸監督、ヤマハの「谷の状態」を明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 ラグビーの日本選手権を兼ねる国内最高峰トップリーグの準決勝は1月6日、大阪・ヤンマースタジアム長居であり、清宮克幸監督率いるヤマハは昨季王者のサントリーに7―49で大敗。リーグ戦の雪辱は果たせなかった。

 9月2日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれていた同カードでは、試合終了間際に逆転トライを決められ24-27と惜敗。この日は、前半に0-28と差をつけられた。

 試合後、堀江恭佑キャプテンとともに会見した清宮監督は、苦しい台所事情に基づく本来のゲームプランなどについて明かした。

 

 チームは13日、秩父宮でトヨタ自動車との3位決定戦に挑む。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

清宮監督

「内容は見ての通り、完敗です。どういう風にして勝とうかを考え、準決勝の準備をしてきました。シナリオ通りに事が運べばヤマハが勝つ可能性もなくはないと見ていましたが、そうは甘くない。思っていたよりもプレッシャーを受けたし、勝てると思っていたところでも勝てなかった。

 1年間のなかでのきょうのヤマハの出来を言うと、谷の状態でした。谷の状態でセミファイナルを迎えてしまったことに関しては、我々、監督はじめスタッフの責任です。

 選手が輝いて、活きがよく、ヤマハのラグビーをするのが楽しいというギラギラした目をしていた時期は今季もありました。ただ今日は、苦しそうな顔で試合をしていたのかなと思います。

 持っているものをすべて出し切って、ぎりぎりチャンピオンを狙えるチームです。きょうのような状態、内容では、サントリーやパナソニックを相手にはこのような点差になってしまう」

堀江恭

「勝つために準備してきたのですが、後半勝負というところで、前半の入りから失点してしまって。セットプレーで思うような形ができず、フィールドでもフォワードたちはしんどそうな状態で…。相手に攻める時間を与えると、厳しいのかなと思いました。今季、最後にこのメンバーであと1試合、ある。最後までやる責任がある。チームとして、あと1週間どう過ごすかを考えやりたいと思います」

――サントリーを相手に、どこで優位性を持とうとしたか。

清宮監督

「まず80分で勝つ、というところで言うと、前半、マレ・サウをスターティングで使わなかった。これは、あえて後半勝負という形。前半は我慢をすると考えました。デューク・クリシュナンの代わりに5番(ロック)に入ったヨギー(ヨハン・バードール)ですが、粘ってくれるだろうという期待を込めて使いました。ただ、力がはっきりと把握できていない選手を使わざるを得なかった。そういうチーム事情なんですけど。…そういうシーズンにしてしまったことは後悔しています。悔しい」

――「谷の状態」。なぜそうなったのか。

清宮監督

「ヤマハは、ヤマハスタイルという戦い方をずっとやってきている。(車に)エンジン、タイヤ、ハンドルがあるという風に、それぞれの選手にそれぞれの役割があるんです。ただ今回、エンジン役の選手がことごとく怪我をしてしまい、推進力のない状態で車を走らせなくてはいけなかったという感じでしょうか。外見から見るときれいに光った車なんですけど、エンジンが積まれていなかった。それが今日の試合内容です。外国人がエンジンになって、日本人がフレームやハンドルを操作するというラグビーをしてきたのですが、ドライブできる選手がいないというのは、致命的ですね」

 ここでの「エンジン」とは、マレーシア代表経験のあるロックのデューク・クリシュナン、元トンガ代表のインサイドセンターであるヴィリアミ・タヒトゥア、日本代表のフランカーであるヘル ウヴェ、南アフリカ出身のウイング、ゲラード・ファンデンヒーファーなどの突破役とみられる。

 大まかに紐解けば、グラウンドの各所へまんべんなく人が散らばる攻撃システムを機能させるうえで、相手タックラーを引き付ける海外出身選手のパワフルなランは不可欠とされる。

 この日、ブラインドサイドフランカーで先発した元ニュージーランド代表のモセ・トゥイアリイはフル出場を果たしたが、過去のゲームでは途中で日本国籍を持っており、外国人枠外で起用できるウヴェと交代するケースが多い。それとほぼ同じタイミングで、センターなどのポジションに外国人枠の選手が複数並ぶ。

 清宮監督が「あえてスターティングで使わなかった」という日本代表センターのサウ(ニュージーランド国籍のため外国人枠)は、以前にもリザーブスタートの経験はある。もっともその時は、タヒトゥアが先発していた。

 この日は、かようなリレーを遂行するためのメンバーを揃えられなかった。今回、欠場したメンバーの穴を埋めた海外出身のプレーヤーは、ヤマハでのプレー歴の浅い選手や本職でない選手だった。

 会見後の囲み取材では、交流のあった星野仙一・東北楽天ゴールデンイーグルス副会長の訃報に触れ「数少ない尊敬するリーダー。男として魅力があって、こうなりたいと思える方でした」と話した清宮監督。次戦へ「(勝って終わって)銅メダルを」と言葉を絞った。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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