楽天の補強戦略。マネーボール路線で目指すは日本のアスレチックス
「マネーボール」で一躍脚光を浴びたアスレチックス、統計学を応用した選手評価指標・セイバーメトリクスを駆使し低予算でも勝てるチーム作りを目指した。具体的には高打率のスター選手を揃えるのではなく地味ながらも出塁率の高い選手を集める、などだ。日本でもチーム編成にその考え方を積極的に取り入れている球団がある。楽天だ。日本一に輝いた昨季、143試合で4番を務めたA・ジョーンズは26本塁打を放っているが打率は.243でリーグ31位。規定打席に到達した選手の中では下から3番目だ。しかし.391という出塁率はリーグ5位。今季もフォアボールのギリシャ神という異名を持ち非常に出塁率の高いケビン・ユーキリスを獲得していた。左足かかとを痛めた影響もあり残念ながらNPBで結果を残すことは出来なかったが、投手ではしっかりチームに貢献した選手がいる。
浜のサブちゃんから楽天のサブちゃんへ
2012年にDeNAを戦力外になった福山は同年オフに楽天と契約。北島三郎に顔が似ていることからついたあだ名は「サブちゃん」。投手でありながら代走で起用される程の俊足の持ち主は今季チームトップの65試合に登板し4勝2敗23ホールド、防御率1.87。福山の特徴はゴロアウトが54.0%と非常に多いこと。セイバーメトリクスではゴロを打たせた方が失点を減らせると考えている(詳しくは失点を減らすにはフライよりもゴロを打たせろ)。そしてもう1人、ルーキーの西宮もフライアウトは18.6%なのに対しゴロアウトが38.6%と多い。1年目から46試合に投げ3勝0敗、防御率3.17とチームに貢献している。登板数は福山と西宮がチーム1位と2位。チーム全体の1271投球回の内、125回2/3を2人でまかなっている。推定年俸は2人合わせても1900万と格安。さらに今オフ、再びセイバーメトリクス的には高い評価がつきながらDeNAを戦力外となった投手の獲得調査を進めている。
藤江の評価は浅尾、林昌勇並み?
2008年に横浜からドラフト2位で指名された藤江は、5年間で148試合に登板し11勝13敗44ホールド、防御率4.06。特別秀でた成績ではないがK/BB、DIPSというセイバーメトリクスの指標ではかなり優秀な数字を残している。
K/BB・・・与四球1つ当たりの奪三振数を表し3.5を超えると優秀。
DIPS・・・守備力に影響されない奪三振、与四球、被本塁打のみに注目し、投手の真の実力を示した数値。3.5を切れば優秀、3.0を切ればかなり優秀。
藤江(2013年)
被OPS.520
K/BB 4.20
DIPS 2.27
防御率1.27
浅尾(2010年)
被OPS.529
K/BB 7.50
DIPS 2.31
防御率 1.68
林昌勇(2011年)
被OPS.525
K/BB 3.14
DIPS 2.38
防御率 2.17
ちなみに2010年は中日が得失点差+18で貯金17を積み上げ、2011年はヤクルトが得失点差が-20だったにもかかわらず11の貯金を作った年である。こうして見ると藤江の成績は絶対的リリーバーと遜色ない。しかも戦力外の選手を獲得するのだから年俸は抑えられる。浅尾や林昌勇級とまで行かなくともリリーフ陣の一角として機能すればかなり賢い買い物になるだろう。楽天で好投すれば「環境が変わったことがいい方向に出た」という報道のされ方が多くなると思うが、その裏にはしたたかなフロント戦略が隠されている。