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デビュー以来、異国でキャリアを重ねた新星

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C)Jenn Alas

 8歳にして、その才能を絶賛され、アマチュアで110戦ほどのキャリアを積んで10度全米王者となったアシュトン・シルべ。カリフォルニア州ロングビーチで育った彼だが、プロデビューから5戦はメキシコのリングに上がった。

 そして先日、満を持しての米国デビューで呆気なく2ラウンドKO勝ちを飾る。相手はブラジルからやって来た22勝(14KO)18敗の咬ませ犬だった。パンチを受ける前から動きがぎこちなく、シルべのジャブを浴びただけでバランスを崩した。

 シルべは、既に反射神経が壊れている相手を左フック1発で仕留め、自身の戦績を6戦全勝6KOとした。

(C)Jenn Alas
(C)Jenn Alas

 父のコーチを受けながら成長中のシルべは、フロイド・メイウェザー・ジュニアに憧れている。何度かラスベガスに赴き、直接指導を受けたこともある。また、フロイド・ジュニアのトレーナーだった、元パウンド・フォー・パウンドの叔父で世界タイトル2階級を制した故ロジャー・メイウェザーにボクシングを習ったこともある。

(C)Jenn Alas
(C)Jenn Alas

 地元ファンの声援を浴びながら階段を駆け上がるのではなく、敢えてメキシコで5戦させた父の意向を汲み取った18歳は言った。

 「故郷のファンからは、途轍もないエネルギーを頂いている。自分がやって来たこと全てが、来るべき大きな挑戦に結び付くと信じている。メキシコでの試合は素晴らしい経験で、多くの学びがあった。自分の目指す場所に行くための足がかりとなったよ。

 夢を追いながら、コンディショニングも勉強しているんだ。いかに疲れを取って次の日を迎えるかとかね」

 今回の勝利で6回戦は卒業か。咬ませ犬とはいえ、軽く相手を料理したシルべに、ロングビーチの隣人たちは熱い視線を送る。彼は真のスターになれるだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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