フランス次期空母は原子力空母に決定
12月8日、マクロン大統領はフランス海軍の次期空母計画PANGの推進方式を原子力にすると発表しました。CATOBAR方式(カタパルト発進、ワイヤー着艦)の空母で、全長約300m、満載排水量約7万5千トン、速力27ノット、電磁カタパルトを装備予定です。ドイツと共同開発中の次期ステルス戦闘機SCAF(FCAS)を30機搭載し、さらにE-2D早期警戒機や対潜ヘリコプターなどが加わります。
現行のフランス原子力空母「シャルル・ド・ゴール」は全長約260m、満載排水量約4万2千トンなので次期原子力空母は一気に大型化します。これは「シャルル・ド・ゴール」が大型化したジェット戦闘機を運用するには船体サイズが小さ過ぎて問題が出ていたことへの反映と、搭載予定のステルス戦闘機SCAFは現行の戦闘機ラファールよりもさらに機体が大型化することが原因です。
フランス次期原子力空母は右舷にあるアイランド(島型艦橋)が後方寄りに置かれているのが特徴です。これはアメリカ海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」級と同じ特徴です。設計の参考にされているのかもしれません。「シャルル・ド・ゴール」のアイランドは前方寄りに置かれているので全く逆になります。
電磁カタパルトは艦首とアングルドデッキ(斜め滑走路)に1基ずつ合計2基、エレベーターは右舷に2基となっています。
推進軸は3軸となっています。なお「シャルル・ド・ゴール」の推進軸は2軸です。艦が大型化したので推進軸が増やされています。
艦首と艦尾に大きな特徴があります。艦首は一般的なバルバス・バウ(球状艦首)ではなく、鋭角な形状をしています。艦尾は水線付近に向かって斜めにカットされて突き出されていて、他国の空母を含む軍艦でも見たことがない構造です。
艦尾の突き出し部分は近年、旅客船などで採用されつつあるダックテール(duck tail)に近い発想なのかもしれません。スターンフラップ(stern flap)という小さな部品なら軍艦にも採用されているものもあります。これは自動車に装着するリアスポイラー(rear spoiler)と原理は違うものの似たような効果があり、抵抗低減による推進効率の向上や安定性の向上が見込めます。
フランス次期原子力空母は2025年に建造を開始し、2036年に海上公試を始め、2038年に就役し実戦配備予定です。空母「シャルル・ド・ゴール」はこの年に入れ替わりで退役する予定となっています。
なお今回フランス政府から発表された次期原子力空母のイメージ絵はあくまで現時点のものであり、設計作業はまだ完了していないので、実際の建造時には変更される可能性があります。