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井岡一翔とS・フライ級統一戦に臨むマルティネスがビザ取得でトラブル。来日遅れる

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
プーマ・マルティネス(右)vs.アンカハス第2戦(写真:SHOWTIME)

井岡、マルティネスともラスベガスで合宿

 7月7日、東京・両国国技館でIBF世界スーパーフライ級王者フェルナンド“プーマ”マルティネス(アルゼンチン)と2団体統一戦を控える同級WBA王者の井岡一翔(志成)が23日、約1ヵ月のラスベガス合宿を終えて帰国した。キューバ人の名将イスマエル・サラス氏の指導でトレーニングを行った井岡は「スパーリング相手も食事の環境も良く、バッチリ過ごせた」と充実した調整を振り返った。強敵マルティネスとの対決がいっそう楽しみになってくる。

 一方マルティネスも今月2日にラスベガスに到着。同地の「パウンド4パウンド・ボクシング」ジムでスパーリング中心の合宿を行った。同ジムと井岡が汗を流した「サラス・ボクシング・アカデミー」とは車で20分の距離だという。

 筆者は7日夜、電話でマルティネスとトレーナーのロドリゴ・カラブレッセ氏にインタビューしたが、IBF王者は日本での勝利と王座統一に意欲十分。「お互いに一つのミステイクがキャンバスへ直行する試合」と何度も言い、スリリングな展開を予想すると同時に打倒・井岡に自信をみなぎらせた。

 その時2人は「ラスベガスからロサンゼルス経由で日本へ向かう。スケジュールは23日」と明言していた。ラスベガスで調整を敢行したのはスパーリング相手に恵まれることと日本行きがスムーズに運ぶメリットがあるからだった。だから今頃、来日していると思っていたが……。

日本で行われた発表会見でフェイスオフする井岡とマルティネス(写真:ボクシング・ビート)
日本で行われた発表会見でフェイスオフする井岡とマルティネス(写真:ボクシング・ビート)

イベント会社の不手際

 ところがマルティネスと陣営は母国アルゼンチンのブエノスアイレスへUターンしていた。伝えたのは以前リング誌にも執筆していたアルゼンチンのベテラン記者カルロス・イルスタ氏。以下がその顛末である。

 日本へ旅立つためマルティネスと陣営はラスベガス空港へ向かったが、足止めを食らってしまった。日本入国ビザが用意されていると思っていたが、パスポートにスタンプは押されていなかった。ビザは出生国で申請し取得する決まりがあり、不都合が生じたためだ。彼らはマルティネスが最近3試合を戦った米国大手興行会社PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)の関係者に航空券、ビザなどの手配を依頼しており、大船に乗った気持ちだった。カラブレッセ氏はその関係者が仕事に熟達していなかったか、怠慢のせいだと明かす。

井岡戦が3度目の防衛戦。マルティネスは好調さが伝えられていたが……(写真:BoxingScene.com)
井岡戦が3度目の防衛戦。マルティネスは好調さが伝えられていたが……(写真:BoxingScene.com)

 泣く泣く彼らはヒューストン経由でブエノスアイレスへ戻り、現地時間の月曜日24日、日本大使館で申請する運びになった。「ラスベガスで手続きが完了できると聞いていた。それだったら(合宿のため)ラスベガスへ旅立つ前に取得しておけばよかった」と同トレーナーは後悔することしきり。マルティネスのコンディションの良さが伝えられていただけに、大一番を前にしてこの遠回りは痛い。

 イルスタ記者は「ブエノスアイレスからロサンゼルスまで約14時間、ロサンゼルスから東京まで約11時間」と記述。トランジットを入れれば、ゆうに1日を超える。記事でカラブレッセ・トレーナーは「我々はビザを取ったら、1日ゆっくり休養して日本へ向かうようにしたい」と強調。そうなると出発は早くて26日ぐらいか。到着は試合10日前ぐらいになりそうだ。

 とんだアクシデントに見舞われたIBF王者。これで5-3ほどで井岡有利と出ているオッズが変化するかもしれない。それとも回り道を強いられたマルティネスが奮起してピンチをチャンスに変えるか?七夕決戦に向けて両者の動向から目が離せない。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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