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スウェーデンの感染者数を上回ったノルウェーとデンマーク

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
ハッレングレーン保健・社会大臣とテグネル疫学者によるスウェーデン政府の記会見(写真:ロイター/アフロ)

ノルウェーとデンマークでの新型コロナの感染者数がスウェーデンよりも高くなっている。

北欧諸国のコロナ患者数

  • スウェーデン(人口1032万人)感染者数86505/死亡者数5846/人口100万人あたりの感染者数8565/死亡者数 578 
  • デンマーク(人口582万人)感染者数19216/死亡者数629/人口100万人あたりの感染者数3317/死亡者数 108
  • フィンランド(人口552万人)感染者数8512/死亡者数337/人口100万人あたりの感染者数1536/死亡者数 60
  • ノルウェー(人口537万人)感染者数11866/死亡者数265 /人口100万人あたりの感染者数2188/死亡者数 48
  • アイスランド(人口36万人)感染者数2162/死亡者数10/人口100万人あたりの感染者数6335/死亡者数 29
  • 日本(人口1億2596万人)感染者数75218/死亡者数1439/人口100万人あたりの感染者数594/死亡者数 11

※人口は各国の統計局、数値はWHOを参考(2020/9/14時点)。 北欧諸国は人口が少ないので、コロナの話をするときはそこに注意しないと問題を見誤りやすい。感染者数の多さは検査数の多さにも関係しているので、死亡者数をどれだけ抑えられているかにより着目を。

これを見るとスウェーデンの人口100万人あたりの死亡者数は飛びぬけたままだ。

「過去14日間における人口10万人あたり」で比較すると、見えてくる違う風景

北欧メディアはWHOの数字を参考にすることが多いが、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の数字で比較することもある。

すると、

「過去14日間における人口10万人あたりの感染者数と死亡者数」の比較数もでているため、9月13日時点のデータではこうなる。

  • スウェーデン 感染者数24.0/死亡者数0.2
  • デンマーク 感染者数43.3/死亡者数0.1
  • フィンランド 感染者数8.4/死亡者数0.0
  • ノルウェー 感染者数24.8/死亡者数0.0
  • アイスランド 感染者数17.4/死亡者数0.0

こうなると、ここ最近の感染者数は、スウェーデンよりもデンマークとノルウェーでのほうが高くなる。

現在各国では首都以外の地域でも複数のクラスターが発生中。

8月になってから各国は次々とマスク着用の要請と義務化に乗り出した(スウェーデン除く)。欧州の中でも北欧諸国は全体的にマスク着用には懐疑的で、政府が推奨し始めるまでに時間がかかっていた。

各国では長期の夏休みが終わり、市民が職場に戻り始めたり、学校が始まるなどして、新たに人の動きが増えたこと、気のゆるみなどが各地のクラスター発生につながっている。

「私たちの国の感染者数は今やスウェーデンよりも高い」というニュースはデンマークとノルウェーでも報道されている。

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スウェーデンの現状は良い知らせ

デンマークでの感染者数がスウェーデンよりも多いことに対して、オーフス大学の免疫学Soren Riis Paludan教授は「検査数が多い」ことを理由に挙げている(デンマーク公共放送の記事ではスウェーデンよりもデンマークの検査数が圧倒的に多いことをグラフで説明している)。

同時に同教授はスウェーデンでの感染者数が以前ほどのペースで増加していないことを「スウェーデンの人々のコロナ対策における経験値が増加しているということもであり、良い傾向だ」とも話す。

感染者数が増加傾向にある時、北欧各国では「他国よりも検査数が多いからだ」と説明するのはよくあることだ。

ノルウェー側もスウェーデンの現状を「良い傾向」と評価している。

公衆保健研究所(FHI)のディレクターであるストルテンベルグ氏は「背景にはスウェーデンで免疫を持っている人の増加もあるかもしれない。だとしたら良いニュースだ。スウェーデンは免疫率をもっと高めようとしているが、そもそもそれがどれほど感染防止の効果を果たしているかはわからない」と話している(VG紙

国境が近く、人口規模も似ており、文化や言語も近いスカンジナヴィア3国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)は互いの様子を今も気にかけている。

現状をふまえて、ノルウェー首相は「これ以上の規制緩和を進めることはできない」と、感染者の増加が続けばまた規制を強化すると10日の記者会見で話した。デンマークではアルコールを伴う飲食店業界のナイトライフをより規制するべきかなどの議論が起きている。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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