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2024年の外食の一大トレンド? 大型M&Aは2025年も続くのか

三輪大輔フードジャーナリスト
(写真:イメージマート)

外食業界M&Aが活発になっている。特にここ数カ月の動きはすさまじい。

まず9月6日、株式会社すかいらーくホールディングスが、「資さんうどん」を運営する株式会社資さんを子会社化すると発表し、大きな話題となった。「資さんうどん」は、創業の地の北九州では、知らない人のいないブランドだ。1976年に福岡県北九州市戸畑に一号店をオープンし、1980年には法人化。福岡県北九州市に本社を置き、九州全7県をはじめ、山口県と岡山県、大阪府、兵庫県の1府10県で70店舗展開している。2024年冬には墨田区・両国に東京一号店のオープンも控えていた中でのM&Aだった。

また、10月25日には、ワタミ株式会社がサンドイッチチェーン世界大手「サブウェイ」の国内運営を行う日本サブウェイを買収し子会社化し、フランチャイズ展開を行っていくことを発表した。今後、商業施設や駅前を中心に展開し、まずは10年で250店舗の出店を計画。将来的には3000店舗の展開を目指し、日本最大のファストフードチェーンである「マクドナルド」に対抗できる存在になることを目指す。

先日の新戦略発表会で、ワタミ会長兼社長CEOの渡辺美樹氏はカーネルサンダースが、65歳で「ケンタッキーフライドチキン」をつくったことを例に出しながら「居酒屋のワタミという代名詞からサブウェイのワタミに変えたい」という意気込みを語っていた。高杉良氏が小説『青年社長』を出版してから20年以上の歳月が過ぎ、10月5日に65歳を迎えた渡辺氏。培ってきたノウハウをどのように活かし、サブウェイのポテンシャルを引き出していくのかに注目が集まっている。

そして11月1日には、「サンマルクカフェ」などの展開を行う株式会社サンマルクホールディングスが、牛カツ定食店「牛カツ京都勝牛」などを展開するジーホールディングス株式会社の全株式を取得し、子会社化。サンマルクホールディングスは「サンマルクカフェ」の他にも、「鎌倉パスタ」という強いブランドを持つ。そこに「牛カツ京都勝牛」を加えることで、さらなる成長を目指す。

この他にも、「0秒レモンサワー仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」などを運営するGOSSO株式会社は、「じげもんちゃんぽん」を展開する株式会社大高商事を買収するなど、24年は外食業界のM&Aが活発な年だった。実際、現時点で、24年はM&Aの件数と取引額が、ここ数年で最高になる見込みである。

一方で、株式会社東京商工リサーチの調査によると、24年の上半期の飲食業倒産(負債1000万円以上)は493件(前年同期比16.2%増、前年同期424件)で、2年連続で過去最多を更新。現在のペースで推移すると、年間では初めて1000件超えとなる可能性も出てきている。

大きな原因は、人手不足と原材料費の高騰だ。人流が回復し、前年を上回る売上を上げる企業も多くなっているものの、コストの高騰も続いているため、あまり利益が残っていないケースも目立つ。その中で、各社でDXの推進なども進めなければならず、取り組みの濃淡にかなりの差が出てきているのも事実だ。そうした背景もあり、投資ができる体力のある大手の傘下に入り、コスト高騰の問題を解決するとともに、経営スタイルも一気にアップデートする動きが盛んになっているように見受けられる。

買収する企業の方にも、業態ポートフォリオを豊かにして経営を安定化させながら、より多くのお客にリーチをしていきたいという思いがある。現在、居酒屋をはじめとしたアルコール業態のニーズがコロナ禍前と同水準に戻っていない。また、社会の変化のスピードが激しくなり、既存業態の陳腐化のスピードも上がっている。その中で、幅広いお客を囲い込み、そのニーズを汲み取りながら、時代の波をとらえていこうとする動きが活発化している。

その他にも、日本市場は人口が減少し、マーケットが縮小しているため、海外市場を開拓する動きも盛んだ。8月6日には、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスがアメリカで飲食店を展開する企業からベーカリーレストラン事業を買収。また、9月6日には「コメダ珈琲店」を運営する株式会社コメダホールディングスも、シンガポールの外食企業POON(プーン)の買収を発表するなど、日本の外食企業が海外の会社を買収する動きが加速している。

今後も、こうしたM&Aの動きはより盛んになっていくのは間違いない。その中である程度の寡占化が進んでいくだろう。

フードジャーナリスト

1982年生まれ、神奈川県出身。2007年法政大学経済学部卒業。2014年10月に独立し、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなど、テレビ、雑誌などのメディアに多数出演。2021年12月には「外食業DX」(秀和システム)を出版するなど、外食の最前線の取材に力を注ぐ。

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