“ソロ活”の流れで女性に大人気? 「ひとりしゃぶしゃぶ 七代目 松五郎」が流行る理由とは
一人しゃぶしゃぶという新ジャンル
コロナ禍では唐揚げやハンバーガーなどの業態が人気を集めた。しかし、多くの企業がこぞって参入したためいずれも一気にレッドオーシャンとなり、以前よりも競争が激化した結果、苦戦を強いられている企業も多い。一方で、コロナ禍で一人での活動を楽しむ「ソロ活」がブームとなっている。実際、ここ最近、「ひとりカラオケ」や「ソロキャンプ」など、一人でレジャーを楽しむ人の姿が目立つ。
自分の好きなときに、好きなスタイルで楽しむ流れは外食にも来ている。象徴的なのが「焼肉ライク」が切り開いた「ひとり焼き肉」だ。同店は2018年8月に、新橋に一号店をオープンさせると瞬く間に店舗網を拡大。22年6月1日時点で、国内に81店舗を展開させるまでに成長をしている。同店の勢いを受けて類似業態も続々と登場し、焼き肉の中にひとり焼き肉という新たなカテゴリーが出来上がったといっても過言ではない。
焼き肉に次いで、マーケットを盛り上げていきそうなのが一人しゃぶしゃぶだ。その中心的なプレイヤーが株式会社しゃぶしゃぶ松五郎の展開する「ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎」に他ならない。同店は5月2日に3店舗目となる新宿東宝ビル店をオープンさせると、初日から大盛況を見せている。
同店のコンセプトは「ワタシにちょうどいい、ひとりしゃぶしゃぶ」だ。自分の好みに合わせてパーソナライズ化されたしゃぶしゃぶを楽しめ、肉はもちろん、野菜やご飯、麺も、それぞれ自由に選ぶことができる。「ダイエット中だから野菜だけたっぷり食べたい」といったとき、肉やご飯を選ばないという選択肢も可能だ。ポーションもSMLの3サイズから選べるので、「肉は多く、野菜は少なめ」といった細かなカスタマイズにも対応できるので、使い勝手がとてもいい。
しゃぶしゃぶのマーケットは、客単価1万円以上の高級店か、客単価2500円前後の食べ放題の店がほとんどだ。その間の価格帯の店が成り立たない背景には「おいしいしゃぶしゃぶは高い」という既成概念がある。いい肉を食べるなら高級店、たくさん食べるなら食べ放題という棲み分けができているといっても過言ではない。
同店はそういう既成概念を壊そうと、高品質のしゃぶしゃぶをリーズナブルな価格で提供している。使用する肉は、牛なら目利きが選び抜いたA4、A5の黒毛和牛のメス牛だ。また、また豚肉は、佐賀県の養豚場と独自に契約した、オリジナルのブランド豚を使用している。しかもオーダーが入ってからお客様の目の前でスライスするので、鮮度が高い。
それにもかかわらず、新宿店では「超得まんぷくセット」という「お野菜(S)」と「多香豚バラ(150g)」「カルビ(50g)」「ご飯(大盛り)」が付いたセットを、1320円(税込)という破格の価格で提供を行う。
なぜクオリティの高い肉をリーズナブルに提供できるかというと、ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎のバックグランドには、渋谷にあるすき焼きの人気店「厨 七代目松五郎」があるからだ。同店は12年9月のオープン以来、多数の著名人が足繁く通い、各種サイトでの評価も軒並み高い。そこで培った肉に関してのノウハウや、取引業者との信頼関係などがあるからこそ、他店では実現できない価値を提供できている。
なお、同店のこだわりは肉だけではない。タレにも力を入れていて、数種の柑橘を配合した「特製ポン酢だれ」と濃厚でゴマの甘みたっぷりの「ゴマだれ」の2種類を用意している。好みはもちろん、肉によって使い分けることで、そのうま味を存分に引き立てて味わうことができるだろう。
オープンの度に進化を重ねる提案
ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎の一号店は、20年6月15日に赤坂にオープンした赤坂店だ。その後、21年11月に2店舗目の渋谷をオープンさせた後、三号店目の新宿店のオープンに至る。同店はオープンの度に進化を重ねており、それを代表する取り組みの一つが「熟成黒毛和牛の肉まぶし丼」だ。
熟成黒毛和牛の肉まぶし丼は、22年3月19日から渋谷店で発売された。特徴は、独自の熟成を施した黒毛和牛を、低温でじっくりと焼き、うま味を閉じ込めたステーキだ。その上に厨七代目松五郎で長く愛されている、自家製の醤油ベースのタレと、卵黄の色が濃い大分県産の「蘭王」が乗る。熟成黒毛和牛の肉まぶし丼はそのまま食べても、もちろんおいしい。しかし、同メニューの最大のポイントは味変が5回できるところだ。
2100円という金額や土日限定という販売だったにもかかわらず、熟成黒毛和牛の肉まぶし丼は月の売上の20%を占めるほどの人気メニューとなった。特に多かったのが女性客の姿だ。SNS映えするメニューだったこともあり、情報が一気に拡散。女性が入りやすい店舗の特徴も手伝って、多くの集客に成功した。
一人しゃぶしゃぶは、まだマーケットが成立して日が浅い。それだけブルーオーシャンであるということだ。しかし、これまでマーケットを立ち上げることができたプレイヤーがいないのも事実だ。同ジャンルが、ひとりしゃぶしゃぶ七代目松五郎の独壇場になる可能性も高い。