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貧乏球団が「複数年の延長契約」を連発。宝くじに当たったわけではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェフリー・スプリングス(タンパベイ・レイズ)Sep 7, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、タンパベイ・レイズからは、7人が年俸調停を申請した。この人数は、群を抜いて多い。レイズに次ぐのは、ロサンゼルス・エンジェルスとシアトル・マリナーズの各3人だ。

 レイズの資金は乏しい。けれども、調停申請の人数は、レイズが申し出た年俸に不満を持っている選手が多数いる、ということを示しているわけではない。延長契約の交渉が、申請期限までにまとまらなかったのが理由だ。

 今月下旬、レイズは、ジェフリー・スプリングスピート・フェアバンクスの両投手と延長契約を交わした。さらに、MLB.comのマーク・フェインサンドやホアン・トリビオによると、三塁手のヤンディ・ディアズとも、延長契約の合意に近づいているという。彼らは、年俸調停を申請した7人に含まれている。

 スプリングスの契約は4年3100万ドル(2023~26年)、フェアバンクスは3年1200万ドル(2023~25年)だ。ディアズは、3年2400万ドル(2023~25年)と報じられている。どの契約にも、1年分の球団オプションがついている。スプリングスとフェアバンクスの契約には出来高もあるので、おそらく、ディアズもそうだと思われる。

 いずれも、年平均額は1000万ドルに満たず、年数もそう長くない。もう一つ、これらの契約の特徴としては、若手の囲い込みではないことが挙げられる。現在の年齢は、スプリングスが30歳、フェアバンクスが29歳、ディアズは31歳だ。

 それまでリリーフとして投げていたスプリングスは、昨年のシーズン序盤から先発に回り、5月以降の先発24登板で122.1イニングを投げ、防御率2.65を記録した。フェアバンクスは故障が多く、昨年も7月半ばまで出遅れたが、その後は素晴らしかった。24登板の24.0イニングで、奪三振は14.25、与四球率と防御率はどちらも1.13だ。ディアズは、一昨年に初めて規定打席に達し、昨年はリーグ3位の出塁率.401を記録した。

 レイズは、ブレイクを果たした――少なくとも、その兆しを見せた――彼らと延長契約を交わし、保有できる期間を伸ばした。この契約がなければ、スプリングスは2024年のオフにFAとなる予定だったが、レイズが球団オプションを行使した場合、FA市場に出るのは2027年のオフなので、レイズの保有期間はプラス3年となる。同様に、フェアバンクスはプラス1年、ディアズはプラス2年だ。

 いかにも、レイズらしい着眼点の契約、という見方もできよう。若くしてブレイクした選手を延長契約で囲い込むには、さらに高額を要する。また、契約の年数も長くなり、その分、契約後の故障や不調のリスクも高まる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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