ガーナを2-0で下したヤングなでしこが決勝トーナメント進出に王手!第3戦は強豪アメリカ
U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)が、U-20女子W杯決勝トーナメント進出に王手をかけた。初戦のオランダ戦(○1-0)に続き、第2戦でガーナに2-0で勝利。第3戦のアメリカ戦は、引き分け以上で自力でのグループステージ突破が決まる。
「ガーナはロングボールに特徴があるチームだったので、難しいゲームになることはわかっていました。いろいろなタイプの国と対戦して経験値を上げながら、この試合も無失点で終えられたことは収穫です」(池田太監督)
ガーナには、20歳以下でも大人顔負けの体格やスピードを持った選手がいた。守備は組織的とは言えないが、球際は激しく、体ごとボールを奪いにくる。そして、ロングボールを目掛けて走るスピードは陸上選手のように速かった。試合前、選手たちはそれらの特徴をしっかりと把握していて、ミーティングや分析でもしっかりと共有されているようだった。
だが、実戦に勝る経験はない。実際に対峙すると、その跳躍力や加速力に対応するのに苦労したようだ。
「ここまで相手の足が届くんだ!と驚くようなシーンもあって、いつもの感覚でやっていたらミスになってしまうことを痛感しました」
左サイドハーフで先発したMF吉田莉胡が、攻撃陣の声を代弁した。
ボールを支配した日本に対し、ガーナは自陣のゴール前をしっかりと固め、縦に速い攻撃を狙っていた。
狭いスペースを打開する個々のアイデアの多さやテクニックは日本の強みだが、相手の逆を取ろうとするたび、ガーナの選手の長い脚にボールが引っかかった。
サイドを崩して、中央にフリーでFW松窪真心が走り込んだ前半15分の決定機や、ゴール右隅を狙った30分の藤野の強烈なミドルシュートも、ギリギリで伸びてくる相手の足やGKの手に阻まれた。
ただ、そうしたイメージと現実のギャップは、ガーナにとっても同じだっただろう。
ボールを奪っても、すぐに囲まれる。丁寧にコントロールされた日本の最終ラインを突破するのは容易ではなく、一発で背後のスペースを狙うのは難しい。ガーナはトップのFWムラカマ・アブドゥライのスピードを生かす形でワンチャンスを狙っていた。
その形で左サイドからクロスを上げられ、アブドゥライにシュートを打たれた前半36分のシーンは、日本にとって最大のピンチだった。だが、最後はシュートの精度の低さに救われた。
ショートパスばかりの攻撃だと相手が守りやすくなるが、日本はロングパスを効果的に織り交ぜ、ガーナの守備を間延びさせた。前線は裏への抜け出しが得意なアタッカーが並ぶ。ボランチのMF大山愛笑やGK野田になが、精度の高いキックで前線の動き出しに合わせてパスを送り、惜しいシーンを作り出した。
「相手の(最終)ラインが揃っているというよりは、個々で戦ってくるという分析があったので、相手より一歩早く前に出たり、持ち味であるキックを出していけたらと思って狙っていました」(野田)
だが、ゴール前ではやはり、ガーナのフィジカルが一枚上手だった。
待望の先制点は、後半からピッチに立ったFW土方麻椰がきっかけになった。
61分、ペナルティエリア内で浜野からパスを受けた土方がフリーでクロスを上げると、DFスーザン・ドゥアーの手に当たってPKが与えられる。
「相手の4バックと中盤の間が結構空いていて、そこに(土方)麻椰が入って、ライン間で受けてターンしてくれたので、そこからチャンスが生まれました」(浜野)
PKのキッカーは、事前に浜野が指名されていた。真剣な眼差しでボールをセットした浜野は、冷静にゴール左隅に蹴り込み、ガッツポーズを決めた。
後がないガーナはパワープレーに転じるが、日本は迷わず2点目を狙いに行った。池田監督が切ったカードは、初戦のオランダ戦でゴールを決めたFW山本柚月と、中盤で攻守にハードワークできるMF岩﨑心南。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属の選手たちが前線に揃い、再び攻撃にスイッチが入った。
71分、コーナーキックのこぼれをファーサイドで受けた岩﨑が、左足でシュートフェイントを入れると、DFアナステシア・アチアーがたまらず足をかけて岩﨑を倒す。
「コーナーキックで、ファー(サイド)が空いているとコーチから言われていたので、冷静に相手を見てかわして、いい感じにPKをもらうことができて良かったです」(岩崎)
2本目のPKも、浜野が落ち着いて同じコースに決め、2-0。
終盤は激しい雷雨に見舞われたが、試合は最後まで行われ、リードを守り切った日本が勝利を収めた。
【勝利の舞台裏】
チャンスは多かっただけに、流れの中からのゴールを決められれば理想的だった。だが、集中力を切らさず攻め抜いた結果が2本のPKにつながった。
守備で体を張って粘り強く守り、2試合連続クリーンシートを達成。「はっきりした判断や安定したプレーをすること」(野田)、「背後を取られたシーンの対応」(西野)というように、その中でも守備陣は修正点をそれぞれに持ち帰った。
「勝って反省できるのはいいですね」と、宮本ともみヘッドコーチは初戦後に言っていた。この試合も、実り多き一戦となった。
前半は苦しんだが、後半にかけて修正できた点は収穫だろう。それは、交代で送り出された選手たちがしっかりと相手の特徴を掴んで試合に入っていたことも大きい。
「1対1のスピードでは絶対に勝てないので、予測や早めの判断を意識しました」と土方。岩﨑も「判断を早くして、しっかり相手を見ながらプレーすれば冷静にかわすことはできると思いました」と振り返る。
前半のうちに、ガーナにスタミナと集中力を消耗させた先発メンバーのバトンを、しっかりと結果に結びつけた。
個人に目を向けると、攻守に積極的な動きを見せ、2つのPKを決めた浜野が頼もしかった。
特に1本目は相当なプレッシャーがかかっていたのではないかと思い、試合後に聞くと、予期しない答えが返ってきた。
「いつも、(PKの時は)ボールに書いてある八咫烏(やたがらす)を上にして打っているのですが、ボールに八咫烏がなくて少し焦ってしまったんです。それで、W杯のトロフィーのカップを上にして蹴りました。いつも蹴る瞬間までコースは決めないんですが、GKの動きを見て2本とも左に蹴りました」
試合直後に、そんな微笑ましいエピソードをにこやかに話してくれたところを見ると、緊張とは無縁なのだろう。浜野は毎日の練習場でも笑顔を絶やさず、現地の警備スタッフにもスペイン語で明るく声をかけたりしている。一番年下の年代だが、年代別代表で長くプレーを共にしてきた仲間たちの中で伸び伸びと、W杯の舞台を楽しんでいるようだ。
ここまで2試合とも試合中に雷雨に見舞われたが、ピッチコンディションの変化にも対応できている。現在、コスタリカは雨季で、1日に1、2時間、必ずと言っていいほど雷と強風を伴ったスコールが来る。快晴だった空がほんの数分で黒い雲に覆われ、雷が轟き、バケツをひっくり返したような雨が降るのだ。
コスタリカの人たちはこの自然現象には慣れていて、少しぐらいの雷雨では中断しないそうだ。だが、今大会はFIFAの判断で試合中が一時中断した例もある。
この試合も、アディショナルタイムに空に稲光が走り、近くに雷が落ちた。中断になるギリギリのところで最後までやりきったような感じだったが、試合が中断すれば流れが変わる可能性もあった。
「雷が鳴っている中でも、最後まで試合に集中できていました。ただ、最後の一発(の雷)はすごかったです。試合終了の笛ぐらいで、ドカン!って近くに落ちて。みんなすぐに走って(ロッカールームに)帰ってきました(笑)」
この試合でゲームキャプテンを務めた西野は、落ち着いた表情でそう振り返った。そのような状況を平常心で乗り切る精神力も、今大会で勝ち上がるために必要になりそうだ。
グループステージ突破をかけた第3戦は、17日に同じスタジアムでアメリカと対戦する。A代表は世界ランク1位の競合だ。
日本はここまで2連勝でグループステージ首位だが、勝ち点3でアメリカとオランダが並んでおり、まだどうなるかわからない。アメリカは、日本に勝たなければグループステージ突破は絶望的な状況だ。
難しい試合になりそうだが、ここまで2試合で積み上げた成長をこの試合にぶつけて、決勝トーナメント進出を勝ち取りたい。
*写真は筆者撮影
(取材協力:ひかりのくに)