Yahoo!ニュース

メンタル教育系YouTuberだから分かる、古参YouTuberたちが解散に追い込まれる深すぎる理由

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

みなさんこんにちは。赤田太郎です。

私は、教育系YouTuberとして、「赤田太郎の仕事に役立つ心理学」というチャンネルを運営しています。そのチャンネルの中で、メンタルヘルスに役立つ情報をお送りしています。

最近、古参YouTuberが次々と解散や休止などを宣言しています。私からしたら、なんとうらやましいほどのチャンネル登録者を抱えておられるわけですが、(羨ましいというか、私からしたら天文学的ですが)たとえば、はなおでんがんさんは174万人、ヴァンゆんさんは217万人(いずれも2022年12月現在)という登録者がおられるのにもかかわらず、解散してしまうのです。

特に印象深いのが禁断ボーイズさんで、自ら「オワコンボーイズ」と改名し、200万人をめざしていたものの、達成することができず解散することになりました。

私は、メンタルヘルス(こころの健康)の専門家として「YouTuberのメンタルヘルス」について、本当に憂慮しています。今回の記事では、メンタル教育系YouTuberだから分かる、「古参YouTuberたちが解散に追い込まれる」深い理由についてお話ししたいと思います。

チャンネル登録者という呪縛

私がYouTubeを運営している中で感じることは、YouTubeのチャンネル登録者は、「累積された実績」というデータであって、現在の人気を表すものではないと言うことです。私のささやかなチャンネルでも、今見てくれていると人と、これまで見ていただいた人がおられるのが明確に分かります。これまで見ていただいた人ばかりが多くなると、「チャンネル登録者が多いのに再生回数が伸びない」という深い悩みにつながります。

コンテンツは、消費されるものです。皆さんが映画を見るときに次々新しいものを選択して、同じ映画を繰り返し見ることが少ないことと同じです。消費されるコンテンツは常に更新していかなければならず、クリエイティビティ(新しいアイディア)が続かないのです。

影響力があるチャンネルのはずなのに、再生回数が伸びない。これは相当強いストレスになるはずです。周りは影響力を賞賛する一方で、実際にはその影響力がないことを数字で毎回直面する苦しさは想像に難しくありません。

チャンネル登録者が増えると誹謗中傷にさらされる

チャンネル登録者の人数が少ないうちは、誹謗中傷にさらされることは少ないですが、この社会には「成功をねたむ」一部の人が必ずいます。人数が多くなると、誹謗中傷する人からのメッセージに苦しめられるようになります。平成フラミンゴさんはチャンネル開設1年半で156万人に達成したYouTuberです。そのメンバーのりほさんが、赤裸々にそのつらさについて語る動画は、そのしんどさを感じずにはいられないものでした。

普段、晒されることのない誹謗中傷を受けることは、大きなトラウマになります。特定されない匿名のユーザーになることが多いので、いつその攻撃を受けるか分からない恐怖感で毎日を過ごさなければならなくなります。私自身は、チャンネル登録者が7000人ぐらいですので、今のところそのようなことはありませんが、いつかそういう日が来ることがあるかも知れない恐怖感を感じています。

個人で発信するSNSプラットフォームは、組織的に守る仕組みもなく、結果的に無防備に晒されます。YouTuberをマネジメントする事務所であるUUUMは、「誹謗中傷および攻撃的という校対策専門チーム」を社内に設置し、その活動状況について報告しています。その報告では、1年間で通報が649件あり、中には殺害予告やストーカー行為で犯人検挙につながったケースが4件もあったとのことです。

こうした誹謗中傷がYouTuberのメンタルヘルスを悪化させていることは、現実なのです。

YouTubeチャンネルの運営は休みがない

「やりたいときにやれば良い」

これは、YouTuberに憧れるひとつのイメージかも知れません。しかし、これは現実ではありません。動画をアップし続けないといけないプレッシャーに常に晒されます(挙げ続けていてもです)。

数多くの視聴者がいると言うことは、動画を期待している人が沢山いると言うことです。この期待に応えること、そして答えられることが、チャンネル登録者が多いYouTuberの「ある意味の幸せ」だともいえます。

期待に応えようと一生懸命になってしまったら、どうなるでしょうか。

全く休むことができなくなります。YouTuberは不労所得者ではありません。常に動画を作り続けなければならないのです。それは、挙げ続けていても安心できるものではなく、強迫的に「あげなければならない」という気持ちで支配されてしまいます。

人間は働き過ぎると、過労死のリスクが高まります。しかし、労働時間を管理してくれる組織もありません。やるもやらないも、自分次第。本当に自由な労働です。その自由さが、逆に自分にとっての足かせになり、メンタルをむしばみます。

おわりに(私の願い)

メンタルヘルスを専門にしている私は、YouTuberの人たちに提供できるメンタルヘルスの知識や対策を伝えられたらと常に思っています。いずれ、そうしたサポートができる日が来るように、今日、この記事を書いてみました。

もし、しんどそうなYouTuberさんがいたら、私に教えてください。ご自身のメンタルヘルスに不安があったり、知識が知りたいと思われたら、ぜひ私のチャンネルもご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学のYouTubeチャンネルはこちらへ(リンク

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

赤田太郎の仕事に役立つ心理学の最近の記事