Yahoo!ニュース

「過去よりも未来を」 米国が日韓関係悪化で韓国に圧力を掛け始めた!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
マーク・ランバート米国務省日韓担当副次官補(「JPニュース」提供)

 米国務省のマーク・ランバート日韓担当副次官補は一昨日(14日)、「3月の韓国の大統領選挙で選出された新大統領が就任するまでの2カ月間が(日韓にとって)非常に重要である。その間に米国は新大統領との関係を築き、安保政策を調整する必要がある」と語っていた。

 事を急ぐ理由についてランバート副次官補は多くを語らなかったが、大統領選挙後に北朝鮮がミサイル発射を再開することを念頭に置いての発言のようだ。実際に、米国や韓国内の北朝鮮専門家の間では北朝鮮が4月15日の金日成主席生誕110周年を前後に人工衛星と称して長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射するのではとの情報が駆け巡っている。

 ランバート副次官補の発言は米韓同盟財団と駐韓米軍戦友会が共催したオンラインによる懇談会でなされたものだが、その脈絡で「韓国と日本がしっかり協力しなければ我々は安全ではない」と語っていた。文在寅(ムン・ジェイン)政権に対して次期大統領が政権の座に就く5月9日までに両国の葛藤を解消しておかなければならないと言いたいようだ。

 以前の米国ならば同盟関係にある日本と韓国の関係修復のため介入、あるいは仲裁したものだが、この点について聞かれたランバート副次官補は「米国が望んでいるからと言って、両国に協力し合うよう圧力を掛ける時代は過ぎた」として、「両国が共通の利益を踏まえて対応するのが望ましい」との考えを明らかにしていた。それでも「安全保障の問題で日韓にもう少し公式の協議の場が設けられないのか」との会場からの質問に「我々としても何かやれることはあると思う」と述べていた。

 ランバート副次官補のこの種の発言は今回が初めてではない。先月26日にも国際戦略問題研究所(CSIS)で「アジア太平洋地域で我々にとって最も近い同盟国は日本と韓国だ。両国が協力しなければ、我々は安全でいられない」と述べた上で「文大統領は残りの任期中に日韓の懸案を進展させることができるだろう」と文大統領に注文を付けていた。青瓦台(韓国大統領府)は当時、この発言に「身分を弁えず、非礼だ」と反発していた。

 ランバート副次官補は昨年12月に国務省で面会した韓国最大野党「国民の力」の訪米議員団から「日韓関係が史上最悪のため日本で暮している我が同胞の生活が苦しくなっている」と言われたことが頭にあったのか、「韓国が日本と良好な関係を維持すれば、韓国の若い人らはより安全で、安定し、更に繁栄する可能性も高い」と発言していた。当時、「国民の力」の議員らはランバート副次官補から「尹錫悦候補は日本に対してどのような政策を持っているのか」と問われた際、尹候補は過去の歴史は直視しながらも日韓関係は未来志向でなければならないとの考えを持っていると説明していた。

 ランバート副次官補はまた、昨年7月にもワシントンで開かれた米韓同盟財団主催の会議での講演で日韓協力の必要性を説いていたが、その時も戦前の日本の占領行為を認めたうえで「未来のための協力が必要である」と韓国側出席者を諭していた。ランバート次官補は具体的には「正直に言って、歴史を変えることはできない。20世紀に起きた蛮行はそのとおりだ。そうしたことを一つのバスケットに入れて扱いながら、21世紀の協力に向けたもう一つのバスケットを用意するのが我々の課題である」と述べ、歴史問題と未来志向問題を分離する必要性を説いていた。

 この時も、ランバート副次官補は「両国から求められれば我々の役割を担うべきと考えている」と述べていたが、それが仲介を意味しているのかについては触れなかった。

 なお、上司のウェンディ・シャーマン国務副長官はかつて朴槿恵前政権下で日韓が元慰安婦問題でもめていた時に日本との関係を改善するよう陰に陽に働きかけたことで知られている。

 シャーマン副長官はオバマ政権下の2015年3月にワシントンDCのカーネギー国際平和研究所主催のセミナーでの基調演説で「過去史は韓国、中国、日本の全ての責任であり、政治指導者が民族主義感情を悪用し、過去の敵を非難すれば、安っぽい拍手を貰えるかもしれない」と、元慰安婦問題に拘り、「歴史に目を閉ざす者は未来を見ることができない」と日本を批判していた朴大統領の対日姿勢に釘を刺す発言を行っていた。

 この「シャーマン発言」に韓国の慰安婦関連団体が米大使館に押しかけ、謝罪を要求するなどの騒ぎが起きたが、アントニー・プリンケン国務長官もまた、副長官当時の2016年1月20日、前年12月に交わされた「日韓慰安婦合意」について「我々は全ての人々が両国の合意を支持するよう求めている。合意の精神に基づいて行動することを望んでいる」と述べ、合意に反対して抗議運動を続けていた韓国人団体に対して「両国が合意した内容と精神を尊重すべきである」として抗議を自制するよう促していた。

 次の大統領が誰になってもプリンケン・シャーマン・ランバートラインの 米国務省の韓国へのプレッシャーは北朝鮮がミサイルを発射すればするほど強まることになるであろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事