朝日新聞の信頼度、五大紙の中で最下位 産経新聞を下回った理由とは
トップは日経
[ロンドン発]英オックスフォード大学内に設置されているシンクタンク、ロイター・ジャーナリズム研究所の調査報告書「デジタルニュース・リポート2018」で、朝日新聞に対する信頼度が日本の五大紙の中で最下位となりました。
37市場の7万4000人以上を対象にアンケートした大規模調査だけに、衝撃が広がっています。媒体を認識している人の信頼度を0~10で指標化したところ新聞の中では日経新聞が6.08ポイントでトップです。
2位は地方紙の5.87ポイント。3位は読売新聞5.76ポイント、4位は産経新聞5.68ポイント、5位は毎日新聞5.63ポイント、朝日新聞は6位の5.35ポイントに沈みました。
読者の信頼度で見てみても日経新聞がトップの6.83ポイント。2位は産経新聞で6.51ポイント、3位は地方紙と読売新聞で6.45ポイント。朝日新聞は毎日新聞を0.01ポイント上回って5位の6.27ポイントです。
右派の攻撃に沈んだ朝日
取材現場で受ける筆者の印象では朝日新聞の記者は地道に足で稼いで記事を書いているように感じますが、読者の認識は全く違うようです。日本の分析を担当した共同通信の澤康臣氏は調査報告書の中で次のように指摘しています。
「朝日新聞の信頼度は、極めて保守的な産経新聞を含む五大紙の中で最下位となった。リベラルな高級紙(朝日新聞)は保守派の与党・自民党と右寄りメディアの両方からの批判にさらされてきた」
「安倍晋三首相はフェイスブックに朝日新聞の学校法人『森友学園』報道の検証記事に対して『哀れですね。朝日らしい惨めな言い訳。予想通りでした』と書き込んだ」
「また、保守系の足立康史・衆議院議員(日本維新の会)は『朝日新聞は万死に値する』とツイートし、右寄りの雑誌は『朝日新聞を廃刊に追い込まなければならない』と見出しを掲げている」
「さらなる分析から、朝日新聞の信頼度が低いのは部分的に、右派からの声高で党派的な批判からくる高いレベルの不信の結果によることが分かっている。今年の調査が終わってから、朝日新聞は政府を立ち往生させ、安倍首相の支持率を下げるスクープを連発したが、このインパクトは今年の調査には反映されていない」
尾を引く「吉田証言」と「吉田調書」
14年、朝日新聞は過去の従軍慰安婦報道を検証し「吉田清治証言」を取り消し、元福島第一原発所長、吉田昌郎氏の「吉田調書」についても誤報を認め、当時の木村伊量社長が引責辞任しました。
筆者はやはり、この2つの問題が大きく尾を引いていると思います。
北朝鮮が米本土を直撃できる核ミサイルを開発、中国の国防費が日本の5倍近くに達し、韓国の国防費も日本を追い越すかもしれない現状を考えると、平和憲法を守っていれば平和は守られるという朝日新聞の主張は「信頼できない」と感じる人が増えたとしても不思議ではありません。
右派メディアの産経新聞や読売新聞は「本音」をぶつけるのに対し、左派メディアの朝日新聞は「理想」を語るため、読者には夢物語のように聞こえてしまうのでしょう。
公称611万部の朝日の実売部数は藪の中
週に一度は利用するテレビ、ラジオ、新聞、雑誌を挙げると、NHKニュースが57%で断トツです。朝日新聞は五大紙の中ではトップの15%、新聞の中では21%の地方紙に次いで2位です。
80万部以上の新聞社では販売収入が総収入の6割近くを占めるので、発行部数が一番大きな指標になります。昨年後期の朝刊発行部数は読売新聞873万部、朝日新聞611万部、毎日新聞293万部、日経新聞263万部、産経新聞153万部(日本ABC協会より)です。
しかし「朝日新聞の販売店は送り部数のうち約3割が『押し紙』というのが一般的」(ジャーナリスト、幸田泉氏の報告から)という指摘もあり、実際には読者には届けられない「押し紙」を除いた実売部数は藪の中です。
その点、オンラインの数字はごまかすのが難しく、より正確な現状を浮き彫りにしています。週に一度は利用するオンライン・メディアではYahoo!ニュースが断トツの51%。これにNHKニュース、民放4社が続いています。
新聞では、日経新聞10%、朝日新聞9%、産経新聞、読売新聞各6%、毎日新聞5%の順になっています。
オンライン・メディアに期待
前出の澤康臣氏はYahoo! ニュースについて「日本でトップのオンライン・ニュースソースのYahoo! Japanはニュースを集めて掲載するプラットフォームとしてだけではなく、オリジナルなニュース・コンテンツを増やしている」と評価しています。
「元調査報道記者で現在は東京都市大学メディア情報学部教授の高田昌幸氏を編集のアドバイザーとして招いた。自閉症や民族的なマイノリティー(少数派)、発達障害の子どもについても報じている」
ニュースソースとして利用しているメディアはテレビがトップで65%(13年は69%)、オンライン59%(同85%)、紙媒体37%(同63%)、ソーシャルメディア21%(同17%)。
紙媒体でニュースを見る人は減ってきているのに、新聞社のオンライン化は欧米のメディアに比べると随分、遅れています。こうした状況では、Yahoo! ニュースのようなオンライン・メディアの社会的な役割はますます大きくなっていくでしょう。
(おわり)