アップル、テスラ・モーターズを買収か? 自動車や医療など事業の多様化を模索中と米紙が報道
米アップルが、米電気自動車ベンチャー、テスラ・モーターズの買収に興味を示していると、米紙サンフランシスコ・クロニクルが報じたことが話題になっている。
アップルがテスラを買収するなどとは突拍子もない話だが、昨年10月に独投資銀行ベレンベルクのアナリスト、アンダーン・アハマド氏が、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と、元米副大統領でアップルの取締役、アル・ゴア氏に宛てた公開書簡で、これを要求していた。
M&Aの責任者がテスラのCEOと会談
書簡の中でアハマド氏は「私の提案は過激で、大きな変化が起きる可能性があることは承知している」としたうえで、「しかしアップルの成長の展望を根本的に変えることができる」と述べていた。
だがサンフランシスコ・クロニクルは、アップルがすでに同様の考えを持っており、その半年前に行動を起こしていたと伝えている。同紙によると、アップルは2009年に元米ゴールドマン・サックスのバンカー、エイドリアン・ペリカ氏を雇い入れ、M&A(合併・買収)の責任者に充てた。
このペリカ氏とテスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOが昨年春にアップルの本社で会談したという。この会談にはアップルのクックCEOも参加した可能性があると同紙は伝えている。
またペリカ氏はアップルに移籍後、多忙な日々が続いているという。過去2年半にわたり同氏は、検索エンジン、データ解析、地図ソフト、モーショントラッキング用半導体など、様々な企業の買収を試みている。
アップルの年次会計報告書によると、2013会計年度に同社が企業買収に費やした金額は4億9600万ドルで、前年度に比べ42%増えている。
また昨年10〜12月期の会計報告書を見ると、この期間の買収金額は5億2500万ドルとなっており、前年度の年間金額を上回っている。
アナリストらはこうしたデータを根拠に、アップルが事業の多様化を狙っていると予測している。
アップルとテスラはイノベーションの象徴
片や消費者向けエレクトロニクス製品、片や電気自動車。アップルとテスラの分野は大きく異なるが、両社には共通点が少なくないという。
両社とも高度なエンジニアリング技術や使い勝手の良いスタイリッシュなデザインをベースにした製品でブランドを確立した。製品を所有していない人にとっても、両社はシリコンバレーにおけるイノベーションの象徴なのだという。
またテスラはアップル出身者を雇い入れることでも知られている。例えば、アップルで直営店の店舗展開、企画を担当していたジョージ・ブランケンシップ氏という人物はテスラに移籍し、フランチャイズのディーラーを通さない販売事業を手がけた。両社の直営店のコンセプトには偶然とは言い難い共通性があるという。
M&Aではなく業務提携の可能性も
なおサンフランシスコ・クロニクルは、アップルとテスラの協議の内容はM&Aではなく、業務提携の可能性があるというアナリストの見解も伝えている。アップルはモバイル基本ソフト(OS)の音声アシスタント「Siri」を利用した自動車向け音声制御機能「アイズフリー(Eyes Free)」を開発しており、これをホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)など大手自動車メーカーが採用している。
またアップルの新事業を巡っては、先頃、同社がメディカル関連の技術開発を行っていると伝えられたが、サンフランシスコ・クロニクルもそのことに触れている。同紙によると、アップルは米食品医薬品局(FDA)へのロビー活動の経験を持つ医師や弁護士を雇い入れているという。
同社は昨年12月にFDAの管理官と会議し、「モバイル・メディカル・アプリケーション」について話し合った。サンフランシスコ・クロニクルによると、アップルは血流雑音を感知し、心筋梗塞を予見するセンサーとソフトウエアの技術を開発している。もしこれが成功すれば、アップルは巨大な医療機器の市場に参入できる可能性があると同紙は伝えている。
(JBpress:2014年2月19日号に掲載)