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カナダ政府、ウクライナ軍にリモートで操作できる「地雷除去ロボット」提供

佐藤仁学術研究員・著述家
(VANGUARD提供)

兵士の安全は守られるが時間がかかる地雷除去ロボット

2023年11月にカナダ政府がウクライナ軍にリモート操作で地雷除去や落ちている爆弾の撤去、回収などができるロボット「DIGITAL VANGUARD-S」を提供した。人間の兵士が行けない場所での作業や、危険で直接処理できないような爆発物の処理などを行うことができる。ロボットの先に鋏(はさみ)や物を取るタイプなど様々な形状のアームを取り付けて、用途に応じて作業ができる。1回の充電で5時間まで作業ができる。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ロシア軍は大量の対人地雷、戦車用の地雷をウクライナの最前線に設置している。ロシアは対人地雷の使用、生産、移譲などを禁止しているオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に加盟していない。

多くのウクライナ兵や一般市民が対人地雷の犠牲になっている。地雷では殺害されることはほとんどないが、手足が吹っ飛んでしまう。また小型のおもちゃのようにも見える対人地雷は子供や一般市民が拾ってしまい、爆発したら手足が吹っ飛んでしまう大けがをすることになる。地雷の他にも不発弾や、迎撃されたが上空で爆発しないで墜落した「爆弾を搭載した神風ドローン」なども地上に散乱しており、それらも何も知らずに踏んだり触ったりしてしまうと爆発する危険性がある。

ロシア軍はウクライナに侵攻してから対人地雷、対戦車地雷をあらゆる場所に敷設しており、ウクライナ政府職員やウクライナ軍の兵士が地雷を探知したら丁寧に爆破して除去している。人間の兵士が地雷を探知して除去するのは大変な作業で危険を伴っている。また時間も非常にかかっている。

大型の無人地雷除去車は稼働するときに鉄の塊やチェーンが回るので大きな騒音を伴うデメリットがある。そのため、すぐにロシア軍に発見されて攻撃の標的にされてしまう。

今回、カナダ政府が提供したような地雷除去ロボットは人間の兵士が犠牲になることも少なく、大型の無人地雷除去車に比べると作業中に大きな音がしたり目立ったりはしない。だが地雷除去ロボットでは爆弾や地雷を検知してから除去するまでに時間がかかる。1回5時間しか作業できない。そのため、ウクライナのあらゆる場所に大量に敷設されている地雷や爆弾を地雷除去ロボットで除去するには相当な時間がかかる。

ウクライナ紛争では多くのリモート操作のロボットタイプの兵器が利用されており、戦場の無人化が進んでいる。従来、戦場で人間(軍人)が行っていた「4D業務」(単調:dull、汚い:dirty、危険:dangerous、人間が入れないところ:distance)の任務の多くは既にロボットが行っている。カナダ政府がウクライナ軍に提供したロボットも4D業務の全てに当てはまる。

▼カナダ政府がウクライナ軍に提供した地雷除去ロボット

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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