チャゲアスCD回収に“SAY YES”とは言えない社会的責任
先週末に驚きのニュースがありました。人気アーティストの「CHAGE and ASKA」のASKA氏の覚醒剤取締法違反による逮捕です。
すでに多方面で話題になっており、ご存知の方も多いかと思います。当メディア、Yahoo!ニュース個人でも、いくつか記事が上がっていました。
・【コラム】ASKA逮捕でほくそ笑む安倍政権ー「衆愚」メディアにつける薬はあるのか?
・芸能人と覚せい剤の犯罪心理学:覚せい剤所持でASKA容疑者逮捕報道から
本稿では、コンテンツ・ビジネスにおける企業のCSR(企業の社会的責任)についてまとめてみたいと思います。
ちなみに、皮肉な事に、大きな話題となったからか、音楽配信サイトのランキングではトップ10位中4曲が「CHAGE and ASKA」が占める(5月20日11時現在)という事態になっています。
■各社の対応状況
問題はコンテンツにおける社会的責任です。今回は、CD回収やデジタルコンテンツの回収をコンテンツ・ホルダーの皆様が早々に決めた模様。逮捕報道から週末を挟んだ2日間での各社スピーディーな対応です。
○ロックダムアーティスツ(所属事務所)の対応
○ユニバーサルミュージックの対応
○ヤマハミュージックコミュニケーションズの対応
○フジテレビの対応
■企業のリスクヘッジと社会的責任
“反社会性のある行動”をとった人を容認するのは、現代の企業経営にとって大きなリスクであります。
著名人の“反社会性のある行動”で思い出すのは、「ペニーオークション詐欺事件」や「反社会勢力との関与疑惑」などでしょうか。この手の話はあまり詳しくなのですが、テレビなどのマスメディアや今回のコンテンツ所有企業などは、リスクを考慮し行動を取っているように思います。
企業の社会的責任(CSR)のそもそもの定義は、“企業が社会に与える影響に責任を持つこと”とされ、環境、社会、経済へのマイナス影響を最小化し、良い影響を最大化するものとしています。つまりCSR=「企業が自らの事業活動により環境や社会に及ぼす影響への責任」というわけです。
企業のコンプライアンス的な側面については、『あれから半年、カネボウ「白斑」問題から学ぶコンプライアンス』、『半沢直樹にはなれないっしょ! コンプライアンス違反を密告できないわけとは?』という記事もご参照下さい。
今回で言えば、影響力のある人気アーティストが逮捕されたことにより、企業として容疑者をビジネスとして支援してはならないと考えたのでしょう。この被害額がどれだけ大きいのかわかりませんが、僕も以前よく聞いていたアーティストでもありますし、1人のファンとして残念でなりません。
今後、各社に期待されることとしては、コンテンツの回収等で終わらせることではなく、今後も同様のことが起きないように、社内監視体制の強化(ガバナンス領域)などの対策案でしょう。
著名人の社会への影響は計り知れません。リスクヘッジを含めて、超有名アーティストであっても、最低限の監視などが必要な時代かもしれません。
拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いたのですが、企業として一番怖いのは、事件・事故などの適切な初期対応を行わず(私たちは悪くない的なヤツ)、二次不祥事(不祥事・ミスの初期対応をミスって更なるバッシングを受けること)が起きる事です。
これは当事者だけではなく、企業のブランド価値を著しく毀損する可能性があります。1人のアーティストが犯した行動で、企業全体のイメージダウンになってしまってはたまったものではないですよね。
そう考えれば、今回の各社の対応は非常にスピディーかつ厳格な対応だったと評価できると思われます。
コンテンツ・ビジネスをしている皆様は今回の事例を参考にしつつ、日々のビジネスをしていただければ幸いかと思います。