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ビジネスマナーは本当にくだらないのか?現役マナー講師が考える「くだらないマナー」と「必要なマナー」

太田章代新人育成トレーナー

昨今、「ビジネスマナーなんてくだらない」という言葉を耳にします。

私自身も、かつて「くだらない」とまではいかないものの、「ビジネスマナーは堅苦しいな」と良い印象を持っていませんでした。「マナーという型にはめられて、疲れてしまう…」と思っていたのです。ですから、「ビジネスマナーはくだらない」と考えている人を、否定したいわけではありません。

しかし、そんな私は今、ビジネスマナー研修の講師をしています。

悪者扱いされがちなビジネスマナーですが、ビジネスマナー講師としては、その価値を伝えていきたいのです。

これよりは、ビジネスマナーの本質から、くだらないと思うマナーまでお伝えします。

「マナー」と「ルール」を混同しない

「ビジネスマナーなんてくだらない」という人は、往々にして「マナー」を「ルール」と同じように考えているように見受けられます。実は、昔は私も全く同じ勘違いをしていました。

では、「マナー」と「ルール」はどう違うのでしょうか。

ルール:必ず守らなければならない規則。破ってしまうと、罰金などの罰則がある。

マナー:相手を思いやる、心の在り方を表現したもの。必ず守らないといけないわけではないが、違反すると相手を不快にさせ、信頼を失くすこともある。

自動車の運転にたとえてみると、「ルール」は、「赤信号では止まり、青信号では進む」などの規則であり、破ってしまうと罰則があります。それに対して、「マナー」は、「無理な割り込みをしない」などの心遣いであり、あおり運転と判断されるような場合を除き、特に罰則はありません。しかし、突然前に割り込まれた方は、嫌な思いをしています。

つまり、「マナー」は相手への思いやりの心であり、社会生活においてはコミュニケーションの基礎となるものです。「必ずこうしなければならない」というわけではなく、「どうすれば相手が不快にならないか」と考えてする行動こそが、マナーなのです。

職場においては、上司や部下がお互いに思いやりの心を持って仕事にあたれば、自然と働きやすい職場になります。

「マナー」は押し付けるものではない

何度も申しますが、「マナーは相手への思いやり」です。

ですから、「こうしなければならない」と押し付けるようなものではありません。また、自分の経験やビジネスマナー研修で得た知識が、必ず正解とは限りません。相手あってのコミュニケーションなので、相手に合わせて変えていくものなのです。

その観点に照らし合わせてみると、一般的に「当たり前」とされているマナーにも、「くだらないマナー」は混じっています。

たとえば、「お見送りは相手の姿が見えなくなるまでする」というビジネスマナーについてはどうでしょうか。広く知られていますが、杓子定規に行うと、かえって相手の重荷になってしまうことがあります。

前職の営業時代、訪問先に車が見えなくなるまでお見送りをしてくださる方がいました。とてもてありがたいのですが、運転席に乗って、シートベルトをして、次の訪問先をカーナビにセットして…とやっていると、その間ずっと待たせてしまうことになり、気を遣います。申し訳ないと思い、まずは訪問先から出て、近くのコンビニの駐車場でカーナビをセットしていました。

そんな経験から、自分自身がお見送りをする立場になった時は、相手の負担にならないよう、「お見送りは玄関口まで」にとどめていました。

マナーにうるさい人ほど、実は形式だけにこだわっている場合が多いと感じます。形式ばかりを押し付けてしまうと、「ビジネスマナーなんてくだらない」と言われてもしょうがありません。型も大事ですが、マナーの本質は「臨機応変な対応」にこそあるのです。

相手を思いやる気持ちを持って、どのように行動すればいいのか考えましょう。

「くだらないマナー」は存在する

ビジネスマナーは、取引先や社内の人との人間関係を築くために、なくてはならないものです。その価値をしっかりと理解できれば、「くだらない」と一概に斬って捨てることはないでしょう。

しかし、中には本当に「くだらないビジネスマナー」も存在します。ここでは、私の考える「必要なビジネスマナー」と「くだらないビジネスマナー」を紹介します。

必要なビジネスマナー:「上座と下座」

「上座や下座って要る?好きな席に座ったらいいのでは?」という意見もあります。

しかし、日本では「お客様や目上の人は敬う」という基本があります。その心を表すのが、座る場所なのです。

上座は、最も奥で人通りが少なく、落ち着く場所です。しかし、もしあなたが新人の場合、本当に奥の席が落ち着ける場所でしょうか。出入り口から近い席の方が、実際には出入りしやすく便利ではありませんか。

懇親会の場合、目上の人が座るのは「奥側の中央」ですが、同時にその場所は最も周囲に気を遣わないといけない場所でもあります。

「上座下座」というマナーがあった方が、迷わずに座ることができ、合理的だと思いますが、あなたの考えはいかがでしょうか。

くだらないビジネスマナー:「出されたお茶は『どうぞ』と言われるまで待つ」

このマナーはもちろん知っていましたが、以前から「まるでエサをもらったのに、『よし』と言われるまで、『待て』をされている犬みたい」と感じていて、嫌な気分でした。

お茶を出されたのに、飲むのを我慢しなければならないのもくだらないですし、せっかくお茶を出したのに、わざわざ「どうぞ」と言わなければ飲んでもらえない側も、くだらないと感じます。

そもそもお茶は「飲んでください」と意味で出されています。「どうぞ」というやり取りを挟むのは、不要だと思いますがいかがでしょうか。

とはいえ、現在のところ、「勝手に飲むのは失礼」と思う人もいるため、「どうぞ」と言われてから飲むようにしています。

くだらないビジネスマナー:「ビールのラベルを上側に向けた状態で注ぐ」

マナーの本質「相手への思いやり」という観点で考えたときに、「ビールのラベルを上側に向けて注ぐ」ことは、どんな思いやりがあるのだろうと理解ができません。それにより、相手が喜んでくれるならいいのですが、相手にとってもメリットが見つからないため、必要ないと思っていますがいかがでしょうか。

これら以外にも「くだらないビジネスマナー」は多くありますが、一体どこからそのマナーが発生したのか、由来も意味もわからないものもあります。

世間で一般的とされているマナーであっても、「面倒だからマナーは必要ない」ではなく、「相手はどのように感じるだろうか」という観点で判断し、行動していきましょう。

まとめ

実際の仕事の現場では、当然のことながら、さまざまなコミュニケーションのパターンが出てきます。ビジネスマナー研修の時間の中で、それら全てに対応するマナーをお話しすることはできません。

ですから、研修の場でお伝えするのは、相手への思いやりを示す基本的な動作や考え方です。まずは基本を知り、さまざまな場面に合わせて臨機応変に行動したいものです。

人間関係構築のために大切な、基本のビジネスマナーは「コミュニケーションの土台」として尊重しつつ、「くだらないビジネスマナー」は時代に合わせて変化させていきましょう。

アイキャリア株式会社

研修トレーナー太田 章代

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太田章代の『ビジネスコミュニケーション術』

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新人育成トレーナー

愛知県岡崎市出身。損害保険会社の事務員から広告代理店の営業職に転職。入社2年目から6年連続売上トップ。32歳で統括本部長に抜擢。50人の部下を指導する。35歳代表取締役に就任。その後、2006年人材育成事業で独立。現在まで研修&講演に2,000本以上登壇。離職率の低下や、職場のコミュニケーション改善などで成果を上げる。独自の体験型講演が好評をいただき、講師評価98.7%でリピート率も高い。研修&講演を通して【働くを楽しむ】社会創りに貢献するという使命のもと、日本全国で精力的に活動中。

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