若者の声が活かせる環境をつくることが必要だ!
最近たびたび議論されるように、国および地方の政府には現在総額で約1000兆円を超える借金があり、世代間会計における高齢者優遇と若い世代の冷遇などの多くの問題がある(注2)。このことは、若い世代およびこれから生まれてくる世代に対して、多くの負担をかけていることと可能性を狭めていることを意味する
このような現状は、若い世代やこれから生まれてくる世代には全く責任はない。むしろ、私も含めた上の世代に全責任があるといっていい問題だ。それにもかかわらず、重い負担と大きな制約が、若い世代等に課せられている。
また日本は、ディスカレジングな社会だと思う。特に若い世代に対してそうだ(注1)。若い世代が、何か新しいことをしたり、的外れのことをすれば、上の世代は、「今の若い者はなっていない」と非難するのが通例だ。それは、結果として、若い世代の可能性や試みの芽を摘むことにもなっているといえる。
このようなことを考えていくと、私たち上の世代は、若い世代に対して、あまりに酷な状況を生み出しているといえないだろうか。上の世代は、このような状況をつくった責任も含めて、若い世代に対して、彼らがもっと活躍したり、彼らが発信できるような環境の整備に努める責任があるのではないだろうか。少なくとも、筆者は常々そう考えてきた。
特に、近年、それが現実味を帯びてきている憲法改正の問題の場合、その結果の影響は、特に若い世代やこれから生まれてくる世代に、時間的にも、質量的にも、より大きいといえる。その意味では、彼らの声や意見を、憲法改正論議に活かしていくべきだと考えることができる。
筆者は、このような状態の中で何かできないかと考えてきた。その一つの試みとして考えたのが、憲法やその改正に関する若い世代の意見や考えをまとめた書籍の出版をすることであった。
そのような考えで生まれた書籍『僕らの社会のつくり方~10代から見る憲法~』(注3)が最近出版された。同書は、「高校生100人×国会議員」というイベントを開催している任意団体「僕らの一歩が日本を変える。」(略称、僕1)(注4)の活動に参加している10代の大学生や高校生を中心にとした若い世代が、「憲法」を材料にして、徹底的に議論しており、若い世代の意見や考え方が満載だ。筆者も、「自称15歳」なので、コーディネータ役として参加している。
また、同書の特徴は、若い世代の意見や考えを知れるだけでなく、それを題材にして若い世代(さらに他の世代の方々も)が、憲法やその改正問題について考え、議論していけるように工夫してつくられていることだ。しかも、表紙デザインやイラスト等も10代の若手アーティストの手によるものだ。つまり10代の、10代による、10代を含めたすべての世代のための本になっているのだ。
同書は、若い世代が活躍し発信していくための環境づくりの小さな試みに過ぎない。しかし、このような試みなどを通じて、若い世代が、厳しい条件や制約の中でも、少しでも活躍したり、役割を果たせる環境が整備されていってほしいと考えている。筆者は、今後ともそのために活動していきたいと考えている。他の上の世代の方々にも、ぜひ協力していだきたいと思う。
(注1) 拙記事「日本をエンカレジングな社会に!――ユース・べンチャーの試みから(朝日新聞WEBRONZA 2014年2月19日)」参照。
(注2) そのことに関しては『若者は、選挙に行かないせいで、4000万円も損している!?…35歳くらいまでの政治リテラシー養成講座』(森川友義著、携書ディスカヴァー、2009年)参照。
(注3)『僕らの社会のつくり方~10代から見る憲法~』(鈴木崇弘・青木大和編著、遊行社、2014年3月)
(注4)僕1に関しては拙記事「高校生、おそるべし!――政治における『静かな革命』(2013年4月2日)」 やHPなどを参照のこと。