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ドーピング疑惑に「シロ」判定が下ったウエルター級世界ランカー

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 2023年10月8日に決まっていたウエルター級の世界ランカー、コナー・ベンと、クリス・ユーバンク・ジュニアの一戦は、ベンの禁止薬物使用が発覚したとの理由でキャンセルとなった。ベンは、昨年7月25日と9月1日に任意で行われたVADA(Voluntary Anti-Doping Association)の検査で、陽性反応が出たのだった。

写真:ロイター/アフロ

 当時ベンは、WBAとWBOで4位、WBCとIBFでも5位にランクされていた。また、コナー・ベンの父であり元WBOミドル級、WBCスーパーミドル級チャンプだったナイジェル・ベンと、クリス・ユーバンク・ジュニアの父で、WBOのミドルとスーパーミドルのベルトを巻いたクリス・ユーバンク・シニアは1990年11月と、1993年10月に対戦したライバルであった(ベンの1敗1引き分け)。

 息子同士の戦いも注目を集め、地元UKではPPVでの放送も決まっていただけに、多くのファンが失望した。

写真:ロイター/アフロ

 この2月22日、WBCは「ベンのサンプルから検出された微量のクロミフェンとその代謝物は、卵の大量摂取が原因と見られる」とし、"シロ"判定を下したことを発表。

 それを受けたベンは、WBCが自分に「不利益」を与えたと主張し、怒りを隠さない。WBCウエルター級ランキングへの復帰は間違いないが、心の傷は消える筈もない。

写真:ロイター/アフロ

 ベンは言った。

 「俺は決して手を抜いたり、不正をしたりしたことは無い。ドーピングをするような人間だと思われてしまった。それを受け入れるのが、とても辛い作業だった。

 自分のサンプルは、最初の3回の検査では問題なかったようだ。それなのに説明もなく再検査され、微量の陽性結果が出た」

 また、ベンは「公私ともに」彼を攻撃した英国ボクシング委員会(BBB of C)にも憤りを表している。彼は、BBB of Cが「公正な手続きや私の精神状態を全く考慮せず、軽蔑して扱った」と語る。

写真:ロイター/アフロ

 間もなく、ベンはリングに戻ってくるだろう。次のファイトで、胸の痞えを下すことが出来るか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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