スペイン代表が「再生」した理由。ペドリ、ガビ、ピノという若き才能の台頭とL・エンリケの嬉しい悩み。
覇権を取り戻すために、確かな道を歩んでいる。
この夏に行われたEURO2020でベスト4に進出したスペイン代表。現在、開催されているUEFAネイションズリーグでは決勝まで駒を進めており、ファイナルでフランス代表と激突する。
■指揮官のテスト
現在のスペインの特徴のひとつが、選手の入れ替わりである。
「私は周りで何が言われているかを知らない。新聞を読むことも、テレビを観ることも、ラジオを聴くこともない。ニュースを読まないので、私にとっては、いつもの招集リストだ。私が求めているメンバーであり、信頼している選手たちだ」とは今回の招集リストに関するL・エンリケ監督の言葉だ。
「新聞は読まない。大多数の記者より、私の方がフットボールを知っている。選手たちの情報を持っている。何を望んでいるのかは自分で分かっている。ニュースになっているような意見に、私が興味を抱くことはない」
本当に多くの選手がL・エンリケ政権でテストされてきた。
GK :ウナイ・シモン、デ・ヘア、ロバート・サンチェス、ケパ
DF:アスピリクエタ、マルコス・ジョレンテ、セルジ・ロベルト、ベジェリン、ヘスス・ナバス、ポーロ、カルバハル、セルヒオ・ラモス、イニゴ、パウ・トーレス、ラポルト、エリック・ガルシア、ディエゴ・ジョレンテ、マルコス・アロンソ、ガヤ、レギロン、アルバ
MF :ロドリ、ブスケッツ、コケ、カナーレス、チアゴ、ファビアン、メリーノ、セバージョス、ブライス、オスカル、カンパーニャ、ソレール、ガビ、ペドリ
FW :モラタ、サラビア、フォルナルス、アセンシオ、ロドリゴ、アンス・ファティ、ピノ、オルモ、アダマ、ブライアン、アベル・ルイス、ジェラール・モレノ、オジャルサバル、フェラン・トーレス
ここに全てを挙げ切れたかは分からない。ただ、これだけの選手がいるというのは、指揮官としては嬉しい悲鳴だ。EURO2020までの20試合で言えば、L・エンリケ監督は一度も同じスタメンを使わなかった。
そのなかで、指揮官が腐心してきたのが、右サイドバックの選定だ。カルバハルの度重なる負傷離脱で、人材不足の問題が露呈した。
L・エンリケ監督が最初にチョイスしたのは、ジョレンテだった。だがジョレンテはアトレティコ・マドリーで、インサイドハーフでブレイクした選手だ。「僕はインサイドハーフでプレーして、キャリアで最高のシーズンを過ごした。一番良いパフォーマンスができて、快適にプレーできる。それは監督も分かっていると思う」とはジョレンテの弁である。
EURO2020グループステージ第3節のスロバキア戦でアスピリクエタを起用するまで、L・エンリケ監督はジョレンテに拘っていた。それと同時に、ラポルトやパウ・トーレスといった左利きのセンターバックを4バックで並べるため、ボールの循環は悪くなった。
一方、ミドルゾーンはコケ、ペドリ、ブスケッツで盤石の中盤が築かれた。ここに、先日のイタリア戦で、17歳62日の若さでデビューしたガビ、今季負傷するまでバレンシアで好調を維持していたソレールらが割って入る。無論、中盤は、ロドリ、チアゴ、メリーノ、ファビアンといった選手もおり“最激戦区“である。
前線では、フェラン・トーレスがL・エンリケ監督の信頼を勝ち得ている。21試合で12得点と、現政権におけるスペイン代表のゴールの37%がフェランの足から生まれている。
過去に遡っても、スペイン代表で20試合のキャップを刻んだ時点で二桁得点を挙げていた選手は、フェラン(10得点)とダビド・ビジャ(10得点)だけである。
通算得点においても、ビジャ(98試合59得点)、ラウール・ゴンサレス(102試合44得点)、フェルナンド・トーレス(111試合39得点)といった偉大な先達を超える可能性がフェランにはある。
先日のイタリア戦で躍動したガビ、昨季急成長したペドリ、ガビと同様にフル代表デビューを飾ったジェレミー・ピノとスペイン代表ではヤングプレーヤーが出てきている。
今季、バルセロナで長期の負傷離脱から復帰したアンス・ファティに関しても、L
・エンリケ監督は「アンス・ファティの(復帰戦の)15分のプレーを見て、代表に呼びたくなった。しかし彼の離脱期間や状況を考えてクラブに残すことにした。バルセロナでプレータイムを得て、将来的に我々を助けて欲しい」と語っていた。
加えてウナイ・シモン、パウ・トーレス、エリック・ガルシア、オジャルサバル、
メリーノ、ブライアン、オルモと東京五輪でも活躍したような若い選手たちがいる。
スペインは再生した。EURO2020の敗退は、未来に向けた敗戦だった。そう言えるだけのタレントが、このチームには揃っている。