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「小1の壁」民間学童保育選びで気をつけたいこと・コロナ禍の長所と短所

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
コロナ禍の休校で、子供の居場所に困った家庭は多い(写真:ohayou/イメージマート)

新入学の季節が近づいてきた。コロナ禍で在宅ワークの家庭が増えたものの、出勤や集中する時間が必要な保護者もいて、小学生の居場所に悩む。近年は、公立の学童保育が満員で入れない地域もあり、入れてもコロナ禍では利用の自粛を求められた。一方、民間の学童保育は、学びのプログラムや送迎サービスが用意され、コロナ禍も休まず対応してきた。ただ、デメリットもある。料金や運営体制、感染予防の対策・休校時の対応などは、確かめておきたい。

前編→「小1の壁」居場所がない!を解決する?民間学童保育ってこんなところ

●運営体制に不信感

 筆者は、娘が1年生の時に、民間学童保育を選ぶのに失敗した。ある民間学童保育が、夜10時まで預かり可能で、学校からも近い。ワンオぺ状態が多い筆者は、わらにもすがる思いで入会した。1年生の時は公立学童保育に入れたので、普段はそちらに行っていた。仕事で夜遅くなる日や、2年生以降に入れなくなった時のセイフティネットとして想定していた。その民間学童では、簡単な勉強のプリントが用意され、娘自身も「遊んでいるだけでは物足りない」と楽しみにしていた。

 利用を始めたばかりで、トラブルが起きた。娘に聞くと、来るはずの迎えが来なかったという。責任者に電話したら、意外にも逆ギレされた。曰く、規約に書いてあるし説明会で話したとのこと。後日、夫から冷静にメールもしたが、私がクレーマー扱いされた。

 迎えが来なかったことが問題なのではなく、トラブル時の対応や、そこから見える運営体制に不信感を持った。他にもスタッフが足りていないのでは?と思う件があり、よく考えると、民間学童保育は、特に届けや認可が必要なわけではなく、個人経営も少なくない。信頼する家庭が数年前に利用していたので、比較・検討もせず入って反省した。

 ビジネスチャンスとして民間学童保育が増え、最初は頑張るが、拡大するとスタッフが足りなくなり、運営にほころびが出る。こんなパターンが想像できた。ギリギリの個人運営では、スタッフが足りなくなったら、いきなり閉鎖になりかねないとも思った。1か月たたないうちに退会の手続きをした。

送迎サービスが売りだが、送迎時のトラブルも多いと聞く
送迎サービスが売りだが、送迎時のトラブルも多いと聞く写真:Paylessimages/イメージマート

●帯に短し、たすきに長し

 それから1年生の4月という中途半端な時期に、友達にリサーチしながら民間学童保育の見学を始めた。前編の記事で紹介したように、英語・プログラミングに力を入れる新しい民間学童保育がいくつもできていた。「保護者のわがままを聞きます」という充実のサービスだけれど、料金がそれなりにかかり、事業の拡大を考えたビジネスでもある。そういう目で見ると、どこも「帯に短し、たすきに長し」だった。

 運営の疑問点は聞き、娘も連れて行って、悩んだ末に、ある民間学童保育に週1回だけ通うことにした。困った時に駆けつけてくれる身内がいない我が家は、公立学童保育のほかにセーフティネットが必要だった。

●居場所、数か所は用意したい

 リスク分散の対策としては、夜の延長や土曜の預かりも可能。駅も近くて、送迎は可能だが丸投げにせず、親が仕事帰りに迎えに行けるのも決め手になった。細かい問題はあったけれど、前編に記したように、2年生になって公立学童保育を辞めざるを得なくなったので、通っておいてよかったと思った。

 学校内の預かりや、児童館もあるが、友達とトラブルが起きたり、コロナ禍に閉鎖されたり、職業で区切られ利用できなくなったりした時期があった。セイフティネットは、1か所では弱いと痛感した。

休校中、オンライン教育にいち早く取り組んだ民間学童保育も
休校中、オンライン教育にいち早く取り組んだ民間学童保育も提供:m.tsukasa/イメージマート

●預かり休み→オンライン授業に振替

 コロナ禍の休校中、民間学童保育は、保護者のニーズに答えてオープンしていた。娘が週1回だけ、セーフテフィネットとして通っていた民間学童保育は、朝からのオープンを決め、スタッフを確保し、温かい食事を出した。保護者から食事の要望を受け、お弁当を手配したところ、食が進まず、温かい食事にしたら好評だったという。初めのうちは、娘も通っていたのだが、「密になるから」と行きたがらなくなった。

 利用しなかった分は、オンライン授業に振替できた。民間学童保育のスタッフが先生になり、急きょ作られたプログラムだ。算数・国語のほか、体育・英語に、クイズや音楽もあった。娘は、この授業を通して、zoomの使い方とオンラインコミュニケーションのコツを学び、休校でしぼんでいた心がぱあっと開いた。良い思い出を持って、民間学童保育は、休校明けから休会した。その後、学校内の預かりの体制が整い、そちらを利用している。

●コロナ対応調べ、リスクも考える

 都市部では、コロナ禍の昨年も、新しく民間学童保育に入った子も少なくない。地域によっては、利用が減ったそうだが、居場所はコロナ禍でも必要とされているのだろう。再び休校になったり、公立の預かりの場が利用できなくなったらという心配もある。英語の学びのため、習い事として継続している子もいる。学年が上がれば、塾や習い事など、オンライン可能な関わりも増えるのだけれど…。

 民間学童保育を選ぶ際は、充実のサービスに目が行くが、運営の体制や理念を確認することも大事だ。また、厳しい英語の学童保育に泣いた1年生や、民間学童保育で習い事を詰め込まれたけれど花開かず辞めた子もいる。「それが子供自身の希望に合った内容かどうか」という観点も、忘れないでほしい。

 民間学童保育にも、感染リスクはあるし、何かあれば閉鎖せざるを得ない。コロナ禍では、民間学童保育のそうしたリスクと、衛生面や非常時の対応についてもよく調べ、世の中の流れを見ながら、保護者が考え、判断していく必要がある。

(講談社現代ビジネスに掲載の記事に加筆し、再構成しました)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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