馬券が当たる!「ギャンブル詐欺」でなぜ、人はだまされる?わざと疑わせるリメイク版詐欺の手口があった!
特殊詐欺が減らない理由の一つ――「怪しい」とわざと思わせる、巧妙なリメイク版詐欺の存在がある。さらに、北京五輪の始まり、新型コロナの第6波の到来と、詐欺の危険が迫ります。
競馬情報を利用したギャンブル詐欺の手口で、男2人が警視庁に逮捕されました。
ギャンブル詐欺にご注意!「馬券の配当あげる」とうそ、2人逮捕 警視庁 2022/2/4(時事通信)
男らは70代男性に「代理購入をした馬券が当たった」と言い「当たり馬券の払戻金を手にするには手数料が必要」などと嘘をついて、70万円をだまし取ったとされています。
自分が買ってもいない馬券なのに、なぜだまされるのだろうか?
射幸心を煽られたから?儲けたいという思いに付け込まれた?
色々と思いを巡らせてしまうことでしょう。
今回の手口は、過去に成功した詐欺のリメイク版であったがために、だまされたことを知っておく必要があります。
これまでは「仕込みレースがある」の手口が多かった。しかし、今回は…
これまでの競馬情報を利用したギャンブル詐欺の手口では、競馬初心者や中高年に競馬情報会社を名乗り電話をかけて、当たる確率の高いレースの情報を教えながら、まず相手との信頼関係をつくります。
そのうえで「実は、着順がすでに決まっている、やらせのレースがある」と嘘をついて「事前に保証金を納めてほしい」と言って、お金をだましとるものが多くみられました。
筆者も詐欺業者から度々、話を受けたことがありますが、大相撲の八百長問題が取り沙汰されている時期には、「勝負ごとにはこうした“やらせ”が蔓延している」とこの問題と関連付けた説明をうけたこともあります。
しかし今回の手口は、それとは違うものです。
リメイクされた、ギャンブル詐欺の手口とは
逮捕された男らは、競馬情報会社をかたって高齢者宅に電話をかけます。おそらくターゲットにするための高齢者のリストなどをもっていたと思われます。
そして自分たちは競馬情報会社であり「馬券の代理購入をしている」という話をもちかけます。そして「代理で買っていた馬券が当たった!」と伝えて、相手を喜ばせたところで、手数料を要求しています。
特筆すべきは、この詐欺の話の過程に、“消費者関連団体をかたる”というワンクッションを入れている点です。この団体を通じて、競馬情報会社が怪しいところではないということを高齢者に伝えて、信じさせていました。
第三者機関を名乗り、「安心」させる詐欺で、過去に甚大な被害も
第三者機関を名乗り「安心」させてからだます手口は、今から10年ほど前に多発して、深刻な被害を出しました。それは、未公開株、社債、外国通貨を使った詐欺の手口です。
この時、詐欺グループは、事前に未公開株が優先的に購入できるなどの宣伝パンフレットを高齢者宅に送っておきます。そのうえで証券会社などを名乗り、電話をかけます。
「上場が確実な会社の未公開株があるので、買いませんか?」
いきなりの勧誘電話です。
「怪しい」
高齢者は疑いを持ちながら、ひと通りの話を聞いて電話を切ります。実は、そう思わせられていること自体が、詐欺グループのワナとも知らずに。
その後に、新聞社や消費者団体などの公的機関をかたり「最近、何か変わったことはありませんか?」「詐欺が多いから注意してくださいね」と電話をかけます。
すると、高齢者は先日の勧誘電話を思い出し、「怪しい投資話を持ち掛けられました!」と話します。
このように、わざと高齢者から話すように仕向けて、会社名を口にさせるのです。
それに対して、新聞社や消費者団体をかたる人物は、第三者の立場で次のように話します。
「その会社はとても評判の良い、信頼のおける会社です」
そうお墨付きを与えて、本人を安心させます。
一度、心に湧き出た疑問を払拭させられてしまえば、あとは信じた道をひた走ることになります。
そこに再び、証券会社からの電話がかかり、次々に高齢者はお金をだまし取られてしまいます。
ここでは、自分から思いつかせて相談させて、だますという巧妙な劇場型の手口が使われています。
こうした手口の横行もあり、2012年度の特殊詐欺の被害は、約364億4千万円、2013年に至っては、前年度をはるかに超える、486億円以上の被害金額になっています。昨年度(2021年)の特殊詐欺による被害額は約278億1000万円ですから、どれだけ被害が甚大だったかがわかります。
わざと疑わせ、それを取り払うことで、信頼を揺るぎないものにする。
過去に猛威を振るってって多くの被害を出した、未公開株・社債詐欺の手口が、ギャンブル詐欺の形でリメイクされ現れてきたわけです。
これにより、これまでだまされなかったような人が被害を受けてしまう可能性があります。
現代の詐欺は巧妙化、多様化している
被害金額こそ、10年ほど前に比べて減ってきているものの、いまだ昨年度のひと月の被害額は23億円以上の深刻な数字になっています。
しかも当時とはけた違いに、現代の詐欺はより巧妙化、多様化しています。
昨年は還付金詐欺の件数が増加しましたが、相変わらず自宅を詐欺犯が訪れて、封筒を使ってすり替えてキャッシュカードを持ち去る手口や、SMS(ショートメッセージ)を使った架空請求詐欺、さらには強盗という凶悪な手段まで起きています。
そこに、今回のようなリメイク版ギャンブル詐欺も加わってきました。
進化する詐欺の手口に対して、被害から身を守る私たちも、ニュースなどを通じて「ああ、あの詐欺ね。自分は大丈夫」と知っているつもりにならないようにしてください。だまし方は巧妙になっており、それを見抜かなければ、いつ被害が自分の身に降りかかるかわかりません。
北京五輪・新型コロナの第6波の今だから、要警戒
北京五輪が始まりました。
おそらく多くの方の関心はこちらにあると思います。
しかも、日本では新型コロナの第6波が到来していることもあり、自宅でテレビ観戦をする方も多いのではないでしょうか。
在宅率が高い。となれば、詐欺の電話をとってくれる確率も高くなる…。詐欺グループには、そう映っていると思います。
この状況を好機ととらえて、詐欺の電話が多くかかってくることが考えられます。
もはや巧妙化、多様化する詐欺の手口に、高齢者自身が対応できなくなってきている面もあります。それだけに、見守る私たちも、詐欺の手口の衣だけに目を奪われることなく「なぜ、だまされてしまうのか」その中身にも目を凝らし、より警戒を強めていく必要があります。