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【名古屋市】純喫茶ライオン2号店「メゾン ド ライオン」さんが11月24日にリニューアルオープン!

羽矢旬良ライター(名古屋市)

昭和33年創業の老舗「純喫茶ライオン」さんが移転オープンしたのは2019年6月のこと。60年以上営んだ場所から新たな場所に移っての再スタートでした。「実は、移転すると決めてから実現するまで2カ月くらいしかなかったんです」今回は、承継という形でお店を引き受けた3代目店主の北林三奈さんに、移転することになったきっかけ、そして、2号店となる「Maison de Lion(メゾン ド ライオン)(以下、メゾン ド ライオン)」をオープンした思いについてお聞きしました。


「以前のお店は老朽化が進んでいて、2018年に一度大掛かりな改装をしたんです。でも、しばらくしたら他にもいろいろ不具合が出てきてお店を閉めたりすることもたびたびあったんですね。そんなことが続いて、これ以上この場所でお店を続けるのは無理なのかなと感じ始めていました。他にもいろんなことがあって、今思うと少し疲れていたのかもしれません。そうした気持ちを抱えていた頃、老舗のお店ということもあって、いろんなところからコラボ企画のお話をいただいたんです。とても面白そうに感じて乗り気になりました。ただ、企画を受けるにはお店の営業が安定していなければなりませんから『今の場所で続けるのではなく、新しい場所で再出発させよう』そう考えて急いで物件を探し始めました。次の場所は、スタッフの人数のことも考えて、すこし小さめの空間にしようと考えていたところ、たまたま紹介された物件が自分のイメージしていたものに近く、急いでいたこともあって、今の場所にお店を構えることにしたのです」(北林さん)
こうして新たなお店のハコは決まったのですが、その後お店をどの様に展開させていこうかという部分は、まだ迷いがあったそうです。
「今までずっと古いお店でやってきたので、そこしか知らない。でも、今はとてもきれいな場所に来てしまった。そこにすごくギャップを感じていました。昔の常連さんには『変わっちゃったね』なんて言われそうですし、これで良かったのかななんて考えたりして。そんな時あるスタッフさんから『ノアの箱舟のように、本当に大切なものだけ詰め込んでここに来たんじゃないですか?』って言われたんです。それで、『65年という重みを背負ってやってきたことや持ち込んだものを少し休ませてあげよう』と、いったん気持ちを落ち着けてゆっくり周りを見渡してみました。そうしたら『ここは地下鉄の駅から近くて若い人も多い。承継を考えると、若い世代の人にも来てもらえるお店づくりをしていけばいいのかな』と感じたんです」(北林さん)
こうしてスタートした新たなお店は、大学生など若いスタッフの意見も取り入れ、若い世代が集まるお店になっています。

「世代をこえて、古き良き文化を伝えていきたい」と新たに歩みを進めた北林さんですが、一方で、子供の頃に見た昔のお店の情景も忘れることができなかったといいます。
「私が物心ついた頃は、お出かけするといってもそんなに行くところがない時代で、喫茶店は少しおしゃれをして出かける場だったんですね。そのせいか、子供の頃にお店の中で見た人はみんなキラキラしていました。デート中の人、一人考え事をしている人、物書きの人、みんなすてきだったのです。私はそんなお店が大好きで、よくお店に降りていきました。まだ子どもだった私は、当時ロングスカートにこだわっていて、おかっぱ頭にロングスカートといった格好でお客さんの前に現れていたのですが、みなさん、本当にかわいがってくれて。その時の優しい笑顔は今でも鮮明に覚えています。小さい時に見ていた光景をもう一度見たい。私たちくらいの年代の人に『懐かしいわ』って言っていただきたい。すべてに応えることができるわけではないけど、なんらかの形にしていきたい。特にコロナ禍で時間があった頃は、気がつくとそんなことを考えていました」(北林さん)

イラスト:北林さん
イラスト:北林さん

実は、2号店となる「メゾン ド ライオン」さんは、北林さんのそうした思いから生まれたお店です。2022年1月に思いを形にしようと物件探しやスタッフの確保に走り、2022年8月にオープンしました。
「オープンしたら、思った以上に新しいお客さんがたくさん来てくれました。当初、私の中にあったここのイメージは、65年続いた昔の「純喫茶ライオン」でした。だから、お店の調度品もお店で使っていたものを置いて、当時の雰囲気を感じてもらえるようにしようと。ただ、私が一人で走りすぎていたのかもしれません。65年の歴史という重みを背負ってこのお店をやりたい、やれるっていう人がいなかったんです。先日、東武デパートで開催された『昭和レトロな世界展』に出店したのですが、そこで出会った他県の老舗を運営している人たちと話したら、皆さん親族ベースで経営されているんですね。そういう形で長く続けているんだと言うことに改めて気づきました。そんなこともあって、いったんはオープンしたお店ですが、休止することにしたのです」(北林さん)

こうして、しばらく再開のめどがたたないままでいたのですが、最近になって、2017年頃に「純喫茶ライオン」にスタッフとして参加してくれていた人たちが手伝ってくれることになり、いよいよリスタートすることになりました。

レトロで落ち着く店内。左手奥の椅子とテーブル、チャンネル式のテレビは、「純喫茶ライオン」のお店で使っていたもので、65年の歴史があるものです。椅子は張替えをしていないため、当時の座り心地そのままなのだそうです。ブラウン管テレビは地デジが始まる前まで現役でした。当時は相撲中継などがよく流れていたのだとか。

年季が入ったスピーカー。実際に音は出ていませんでしたが、今後は、この上にレコードプレーヤーを置いて、音楽を流したいとのこと。

そして、娘さんが書いたイラストも。喫茶店にもカフェにも合いそうなテイストです。

今回、改めて「メゾン ド ライオン」をスタートするにあたって北林さんが心がけていきたいことは「すきまをつくる」ことだそう。「過去に失敗したと思うのは、何もかも詰め込もうとしたというか、何かしなければならないってガツガツしすぎてしまったこと。そうしたことを前のお店ではしていました。無理してしまったんです。これからは、そうではなくて「何をしないでおくか」を考えることに力をそそぎたい」(北林さん)

今回参加してくれるスタッフは、それぞれ本業を持っているそうで、その人がやりたいことも反映できるようなお店にしたいと思っているそうです。喫茶業をベースに、いろんな人が自分の得意分野を持ち寄って参加できるような、そんな場にしたいと考えていて、今はまだ使っていない2階のスペースも今後は生かしていきたいとのことでした。

「やる気や能力はあるけど発揮する場がない」そんな人はたくさんいそうです。そうした人たちと、それを暖かく見守る人たちが集うお店になるのでしょうか。
しばらくしたら、北林さんが思い描いていたやさしい世界が広がっているかもしれません。

店舗情報

店名:Maison de Lion(メゾン ド ライオン)
住所:名古屋市東区泉1-4-36
プレオープン期間:2023年11月24日(金)~12月9日(土)
プレオープン時の営業日時:水曜日~土曜日 14:00~18:00
公式Instagram
※プレオープン中に提供するのは、コーヒーとクリームソーダ、焼き菓子のみ。営業日時・時間・メニューは整い次第随時変更予定

ライター(名古屋市)

名古屋生まれの名古屋育ち、現在は近郊在住。ライトなものからディープなものまで、名古屋のリアルを主観を添えてお伝えします。

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