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なぜバルサはフェリックスの完全移籍を望んでいるのか?シャビとシメオネの考え…最後の取引の行方。

森田泰史スポーツライター
バルセロナで輝くジョアン・フェリックス(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

新天地で、羽ばたいている。

ジョアン・フェリックスが好調だ。リーガエスパニョーラ第15節、バルセロナはホームでアトレティコ・マドリーと対戦。フェリックスの決勝点で勝利を手にしている。

アトレティコに勝利したバルセロナ
アトレティコに勝利したバルセロナ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「アトレティコ時代のチームメートのコメントで、逆にフェリックスのモチベーションが上がったのだろう」とはシャビ・エルナンデス監督の言葉だ。

「フェリックスはバルセロナで満足している。定期的にプレーしていて、コミットしている。私は彼の適応と素晴らしいパフォーマンスを喜ばしく思っているよ」

■フェリックスの移籍と適応

フェリックスは今夏、アトレティコからバルセロナにレンタル移籍を果たした。ここまで、公式戦17試合に出場して5得点3アシストをマークしている。

バルセロナは当初、フェリックスを補強の優先として考えていなかった。シャビ監督はベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)、ジョシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)らの獲得を要望していた。

だが夏のマーケットの終盤に、ジョルジュ・メンデス代理人がフェリックスとジョアン・カンセロのバルセロナ移籍と、アンス・ファティのブライトン移籍という複数のオペレーションをまとめた。前線とサイドバックの補強を敢行して、バルセロナのシーズンはスタートした。

シュートを打つフェリックス
シュートを打つフェリックス写真:ムツ・カワモリ/アフロ

フェリックスは加入直後、ベティス戦(◯5−0/ラ・リーガ)とアントワープ戦(◯5−0/チャンピオンズリーグ)で躍動した。先のチャンピオンズリーグ・グループステージ第5節ポルト戦では、決勝ゴールを挙げてチームをベスト16進出に導いている。

シャビ監督はフェリックスを【4−3−3】の左WGに配置している。昨季途中からガビを左サイドに置いて「偽WG」にしたように、フェリックスにインサイドのハーフスペースを使わせ、大外のレーンを左SBに与えて【3−4−3】の可変式システムを形成している。

ガビの負傷と長期離脱があり、今後、フェリックスの重要性は高まっていくだろう。当然、バルセロナとしては、フェリックスの完全移籍を考え始めるはずだ。

■移籍の行方と争点

バルセロナは、フェリックスを1年レンタルで獲得した。ただ、スペイン『ムンド・デポルティボ』紙によると、この冬のマーケットで移籍金4000万ユーロ(約60億円)を準備して完全獲得に向けて動くという。

だが交渉は簡単ではない。

アトレティコは2019年夏に移籍金1億2700万ユーロ(約190億円)でフェリックスを獲得した。また、今夏、2029年夏までの契約延長でフェリックスと合意している。

バルセロナは前述の通り、移籍金4000万ユーロを用意している。一方、アトレティコ側は移籍金8000万ユーロ(約120億円)を要求している。その差額は大きい。

■アトレティコとの関係性

フェリックスはバルセロナで輝きを放っている。しかし、アトレティコでは居場所を確保できなかった。

「アトレティコに移籍すれば、(シメオネ監督が)どのような監督で、それがどういったチームなのかは、おおよそ分かるはずだ。そこに適応して、ハードワークする。そうじゃなければ、物事は順調に進まない」と語るのはアントワーヌ・グリーズマンだ。

「フェリックスは、ハードワークをして、良いプレーをしていた時期があった。でも、ここでは、継続性が求められる。彼も、疲れていったのだろう。自分がアトレティコでプレーする姿が見えなくなり、クラブは彼の移籍先を探した」

アトレティコでプレーしたフェリックス
アトレティコでプレーしたフェリックス写真:ロイター/アフロ

フェリックスには継続性が欠けていた。それがグリーズマンの弁である。他方で、フェリックスは「グリーズマンに同意しない。彼には、彼の意見がある。そのことに関しては、ノーコメントだ。僕は、もっと良いプレーができたかもしれない。だけど、他の選手たちも一緒だ」と話している。

「僕はアトレティコよりバルセロナのプレースタイルを好む。僕だけではなく、多くの選手がそうだろう。アトレティコの選手たちだって、もっと攻撃に時間を割きたいと思っているはずだ。そう言わないとしたら、嘘だよ。フットボーラーなら、誰もが、ボールを保持して、攻めて、ゴールを取りたいと考えている」

競り合うギュンドアンとエルモソ
競り合うギュンドアンとエルモソ写真:ロイター/アフロ

バルセロナとアトレティコのプレースタイルは異なる。とりわけ、ディエゴ・シメオネ監督の提唱するフットボールにおいては、高いプレー強度と労働が求められる。

どちらがフェリックスに合うかは明白だ。とはいえ、移籍にはお金が絡み、容易ではない。だが今冬、あるいは来夏、フェリックスの動向から目が離せなくなるのは間違いないだろう。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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