これがマンションの間取り?しかも10億ション!
新築マンションを買うとき、多くの人は立地・価格・広さの3点を重要な評価ポイントとする。これに加え、「将来、高く売れるか、高く貸せるか」という資産価値も勘案する人もいるので、立地・価格・広さ・資産価値が4大チェックポイントということになる。
しかし、都心の高額マンションの場合、上記4つのチェックポイントで購入されるのは、2億円台から3億円台の住戸まで。5億円とか10億円の住戸になると、上記4点よりも重要視される要素がある。
お金を持っている富裕層に、「これがあれば、将来、高く売れなくてもかまわない」とまで思わせる要素がじつは購入の決め手になっている。
もう一つの要素こそが、超高額マンション開発のキモ
そもそも、立地・価格・広さ・資産価値でマンション購入を決める場合、あまりに高額な住戸は検討対象外となる。「この立地、この広さで、この価格は納得」と判定した住戸を買うわけで、「この立地、この広さは魅力的だが、いくらなんでもこの価格は高い」と思えば、買うことはないからだ。
だから、高額化する東京都心のマンションでも、普通は3億円台まで、どんなにがんばっても4億円台までを購入対象とする人が多くなる。
ところが、実際の都心部では5億円以上、10億円以上の住戸が販売され、超高額住戸から売れてしまう状況がある。
いわゆる富裕層が、一般とは異なる観点で超高額住戸を購入するからだ。
では、富裕層は超高額住戸のどこに惹かれて購入を決めるのか。
富裕層が超高額住戸の購入を決めるもう1つの要素とは……一言でいえば、「特別感」だ。
「こんなマンション、今までなかった」とか「今後も出てこないだろう」と思わせる特別なつくりやデザインを備えていれば、5億円でも10億円でも買い手は現れる。
逆に、特別感がなく、ただ広いだけの住戸は富裕層に振り向きもされない。特別感こそが超高額マンションの決め手になるため、不動産会社の開発担当者は、特別な住戸に仕上げるため、知恵を絞ることになる。
では、特別感を感じさせるマンション住戸とはどんなものなのか。実例を取材できたので、写真とともに紹介したい。
取材したのは、「パークコート神宮北参道 ザ タワー」。東京メトロ副都心線北参道駅から徒歩1分、代々木駅から徒歩6分の立地となる超高層マンションだ。
柔らかな曲線がマンションの個性に
11月9日、約61平米〜237平米が1億2880万円から13億7000万円という同マンションの販売センターが報道陣に公開され、最も広く、高額な住戸のモデルルームを見ることができた。
冒頭の間取り図が、その「237平米住戸」のものである。
約237平米の住戸は角住戸タイプの1LDKとされており(基本プランは3LDK)となり、曲線だらけの間取りだ。改めて、その間取り図を下に掲載するが、「これがマンションなのか」との思いが湧き起こる。
間違いなく、特別感が際立つプランである。
「パークコート神宮北参道 ザ タワー」は、曲線を存分に生かしたマンションとなる。建物外観も柔らかな曲線で構成される。
間取り図で紹介した住戸は、モデルルームとして公開されており、その内部も特別感にあふれていた。
この住戸は、コーナーウィンドウが設けられ、展望ルームのような眺望が特徴。展望ルームのようにするため、建物の角に配置される柱を室内側にずらしている。
リビング内に鎮座する柱が、真四角では曲線の部屋にそぐわない。そこで、柱も円柱形になっている。
円柱は室内に複数設置されているのだが、窓に近い円柱は他の円柱よりもスリムにされ、なるべく視界を遮らないようになっている。
他の円柱は四角い鉄筋コンクリート造の柱にカバーを付けて円柱形にしているために太くなる。が、窓に近い1本だけは、もともとの柱が円柱形なので、他の円柱より細い。
専門的な解説は省くが、通常の鉄筋コンクリート造ではない特別な構造柱を採用しているのだ。35年に及ぶマンションの取材経験で、この特殊な構造柱を見たのは今回が2回目。極めて、希な柱である。
モデルルームの内装も特別なものに
曲線を生かしたモデルルームでは、トイレの壁にも特別な工夫が凝らされていた。
トイレでは、曲線の壁にモザイクタイルをきれいに張っている。トイレ横の棚も、モザイクタイル張り。いずれも、曲面の張り方が見事だ。
国際基準プールのタイル張りを担当できる最高レベルのタイル職人でないと、この緻密なタイル張りはできないだろう。
さらに、曲線のモデルルームでは、曲線の室内ドアも設けられていた。
販売価格が10億円を超えるような超高額住戸は、オーダーメイドで仕上げられるのが普通で、モデルルームでは「こんな風にするのはいかがでしょうか」という提案が行われる。
10億ションを購入検討する富裕層は、今度はどんな提案が行われるか、と楽しみにしており、特殊な柱やモザイクタイルの見事な張り方、曲線のドアといった特別な仕様に敏感に反応する。
建築に対する造詣も深く、他のマンションでは、国産天然大理石の産地や内装を手がけた伝統職人の名前まで当てられた、という逸話も残っている。
そのような、目利きが見学に来るので、超高額マンションは、ますます凝ったつくりを追求するようになった。
販売価格が10億円を超える、いわゆる10億ションは、そのようにつくられ、購入されている。