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円満退社ならぬ円満退団!? 選手と球団の双方が「年俸1800万ドルの相互オプション」を揃って破棄する

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィット・メリフィールド Jul 28, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ウィット・メリフィールドは、トロント・ブルージェイズからFAになった。11月2日、ブルージェイズは、相互オプションの年俸1800万ドルを両者ともに破棄した、と発表した。メリフィールドは、50万ドルの解約金を受け取る。

 相互オプションは、球団と選手がどちらも行使した場合のみ、有効となる。発表のとおりであれば、どちらも行使しなかった、ということになる。

 今シーズン、メリフィールドは、143試合に出場し、打率.272と出塁率.318、11本塁打と27二塁打、26盗塁、OPS.700を記録した。先発出場は137試合。二塁手として67試合、レフトとして66試合、ライトとして4試合だ。

 ブルージェイズがオプションを破棄した理由は、わかりやすい。過去2シーズンの出塁率とOPSは、2021年が.317と.711、2022年は.298と.693。ホームランは、10本と11本だ。2021年は42本の二塁打を打ったが、2022年は今シーズンより1本多いだけ。その前の5シーズンは、トータルで出塁率.342とOPS.787ながら、来年1月に35歳の年齢からすると、再びその水準に達するかどうかには疑問符がつく。

 また、ブルージェイズには、キャバン・ビジオデビッド・シュナイダーデイビス・シュナイダーがいる。2人とも、二塁をメインに内外野を守る。今シーズン、ビジオは、111試合で出塁率.340、9本塁打、OPS.710。8月にメジャーデビューしたシュナイダーは、35試合で出塁率.404、8本塁打、OPS1.008。その前には、AAAの87試合で出塁率.416、21本塁打、OPS.969を記録している。ビジオは左打者だが、シュナイダーはメリフィールドと同じ右打者だ。

 一方、メリフィールドがオプションを破棄したのは、ブルージェイズに残っても――ブルージェイズにオプションを破棄されたので、メリフィールドが行使してもそうはならなかったが――出場機会が減ると判断したからだろうか。

 年俸1800万ドルはもちろん、2年1800万ドルの契約も得られそうにないが、今オフのFA市場に、大物の二塁手は見当たらない。しかも、アーメッド・ロザリオアダム・フレイジャーキーケー・ヘルナンデスアイザイア・カイナー-ファレファポール・デヨングジョーイ・ウェンデルトニー・ケンプら、メリフィールドと役割がかぶりそうなFAは、いずれもメリフィールドより若いものの、今シーズンの出塁率はメリフィールドより低く、ホームランは13本以下だった。

ドノバン・ソラーノは、出塁率.369ながら、ホームランはメリフィールドの半数に届かず、年齢は1歳上。メインのポジションは、二塁ではなく一塁だ。

 もしかすると、メリフィールドは、プロスペクトが台頭するまでのつなぎの二塁手として、意外な人気を博すかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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