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30年目を迎えたJリーグ。「12番目の選手」のあり方が今、問われている

下薗昌記記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 30周年の節目を迎えたJリーグでサポーターをめぐるネガティブな話題が相次いでいます。8月2日の天皇杯では名古屋グランパスに敗れた浦和レッズの一部サポーターが「暴徒化」。また、7月の天皇杯でもFC東京の一部サポーターが広告看板を損壊したり、スタジアム内に花火や発煙筒などを持ち込んだりする行為が発生しています。筆者はかつてブラジルに在住し、南米で700試合を超える取材をしてきましたが、サポーターの暴力行為や、暴走行為は日常茶飯事。だからこそ、ダービーマッチでさえも、女性や子供が安心して観戦を楽しめるJリーグの素晴らしさを実感し続けてきました。

 ACL決勝で素晴らしい後押しをした浦和レッズのサポーターは世界的にも話題になりましたが、サポーターの「過激さ」は、欧州や南米と異なる文化を持つ日本では受け入れられないのではないでしょうか。「安心・安全」を掲げるJリーグで今、サポーターのあり方が問われています。

 ▼天皇杯で、浦和の一部サポーターが常軌を逸する騒動。Jリーグが世界に誇る安全な観戦環境も脅かす

 ▼看板に生卵投げつけ器物損壊、スタンドでの花火や発煙筒も。FC東京がサポーターの問題行動を報告

 ▼「ガンバ大阪サポーター連合」が奮起促す“応援ボイコット”。「美談にならない」「絆が強固に」と賛否の声も

 ▼圧巻のコレオグラフィーで選手を後押し。3度目のACL制覇を果たした浦和レッズが「12番目の選手」として戦ったファン・サポーターへ感謝

 コロナ禍で行われたJリーグでは、緊急事態宣言時には無観客や観客数が制限された開催となり、声出し応援が全面的に可能となったのは今年からでした。

 かつてガンバ大阪を率いた元日本代表の宮本恒靖さんが監督だった当時、サポーターの熱狂的な後押しを「圧」と評していましたが、コロナ禍で「声なきスタジアム」を経験した筆者も、サポーターの存在なしにプロスポーツの興行は成り立たないと強く感じました。

 各種の暴走行為や、近年のJリーグで目立つSNSを通じた選手への誹謗中傷などは、報道で「サポーター」と括られがちですが、ごく一部の心無い行為がJリーグ全体の評判を落とすことにつながります。

 サポーターの高齢化が課題となり、新規サポーターやソフト層の取り込みが不可欠な今後、いわゆる「コアサポ(ゴール裏などのコアサポーター)」との距離感は、各クラブにとっての悩ましいテーマになりそうです。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが共同で企画したキュレーション記事です。キュレーション記事は、ひとつのテーマに関連する複数の記事をオーサーが選び、まとめたものです】

記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家

1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。日本テレビではコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも担当。

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