PC市場、過去数十年で最悪の落ち込み HP消費者向け20%減、Dell低増収率、Intelは25%減
景気後退への懸念やインフレの進行により、パソコン市場が過去数十年で最悪の落ち込みに見舞われていると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
PC市場低迷で業績に深刻な影響
企業や政府機関、消費者はパンデミック時にパソコンを大量に購入していたが、今では相当の規模で買い控えの動きが広がっているという。
米デル・テクノロジーズのクライアントソリューションズグループ担当プレジデントのサム・バード氏は「我々が前四半期に見たのは、企業による支出の一時停止だ。消費者も同様に支出を抑えている」と述べた。
パソコンや半導体メーカーは市場の低迷が業績に影響を及ぼしたと説明しており、多くの場合は予想されていたよりも深刻な状況だと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
米HPの2022年5〜7月期の売上高は前年同期比4.1%減の146億6400万ドル(約2兆1800億円)だった。消費者向けパソコン事業の売上高は同20%減少した。
デルの22年5〜7月期の売上高は前年同期比9%増の264億2500万ドル(約3兆9300億円)と、プラス成長したものの、伸びは過去6四半期超で最も低い水準だった(ロイター通信)。
米インテルは主力のパソコン向け半導体事業が振るわない。22年4〜6月期の決算では、4億5400万ドル(約675億円)の最終赤字に加え、過去10年超で最大の減収を報告した。パソコン向けを中心とする「クライアントコンピューティング」部門の売上高は、前年同期比25%減の76億6500万ドル(約1兆1400億円)だった。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、22年初頭、企業がオフィス勤務と在宅勤務を並行するハイブリッドワークを推進していたため、企業向けパソコンは好調だった。しかしここ数カ月でそうした企業も支出規模を縮小している。
PC出荷、90年代半ば以来最も急激な落ち込み
米調査会社のガートナーが先ごろ公表した22年7〜9月期のパソコン世界出荷台数は6799万6000台で、前年同期から19.5%減少した。ガートナーが統計を取り始めた1990年代半ば以来最も急激な落ち込みで、4四半期連続で前年同期を下回った。
ガートナーの北川美佳子氏によると、サプライチェーン(供給網)の混乱はようやく緩和されたものの、消費者と企業向けの両市場でパソコン需要が低迷している。このことが過剰在庫問題を引き起こしているという。
「過去2年間に多くの消費者がパソコンを購入したため、大規模な販促キャンペーンや値引きが行われたにもかかわらず、新学期セールは期待外れに終わった。一方、法人向けは地政学的不確実性や景気の不透明感によって、IT(情報技術)支出が選択的になり、パソコンは優先順位リストの最上位ではなくなった」(北川氏)
上位3社が軒並み2桁減
米調査会社のIDCによると、22年7〜9月のメーカー別パソコン出荷台数は、1位から中国レノボ・グループ(1688万台)、HP(1270万6000台)、デル(1196万3000台)、米アップル(1006万台)、台湾エイスース(554万台)の順。
このうち、上位3社の出荷台数は前年同期から16.1%、27.8%、21.2%それぞれ減少した。5位のエイスースは同7.8%減だった。一方で、アップルは同40.2%増。IDCによると大手各社はいずれも受注減が生じ、出荷台数が減少した。これに対し「アップルは中国でロックダウン(都市封鎖)が敷かれた4〜6月期に供給できなかった分を補うべく、7〜9月に供給台数を増やした」とIDCは分析している。
- (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年10月18日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)