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ドラフト候補カタログ【1】野村尚樹(東京ガス)

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 松沼博久(元西武)や内海哲也(西武)、近年では美馬学(楽天)、石川歩(ロッテ)、山岡泰輔(オリックス)ら、好投手をプロに送り込んできた東京ガス。今季、エース・臼井浩に次ぐ存在と期待されたのが2年目の野村尚樹だ。

 ただ……社会人でプレーしていることが不思議であるように、野村はいう。

「高校は福岡の西田川ですが、3年間で、チームは1勝しかしていません(笑)。それほど弱小で、部員が足りずに2018年の夏は連合チームで出場したようです。高校時代はそんな球歴でしたから、大学はもちろん、社会人で野球を続けるなんて、考えられませんでした」

 もともとは遊撃手。ただ、高校3年の夏前にエース不在となり、「5月からピッチャーを始めたんです」。急造投手として登板した夏の初戦は敗退も、たまたま関係者の目に止まって広島経済大に。すると、最速が147キロに達するなどの急成長を見せて13勝を稼ぎ、3年時には大学選手権でも登板した。その大学時代には、都市対抗を観戦。「こんなにすごい応援のなかで投げてみたい」との思いがかない昨年社会人入りすると、夏以降に頭角を現して先発も経験し、いまやプロだって視野に入る。休部寸前の野球部出身者が、かりにプロ入りでも果たせば……これはもう、シンデレラ・ストーリーだ。

シンデレラ・ストーリーの結末は

 野村はいう。

「ピッチャーになってよかったですよ。社会人になって野手のレベルを見てみると、とても自分では通じないと思いますから」

 社会人入りして以降は、ストレッチなどを入念に行うようになり、「肩の可動域が広がった」今季は、フォークにも挑戦。またフォームも、テイクバックでグラブ側の左腕を高く上げるように微調整すると、

「投げ下ろす感覚になり、しっくりきています。また打者からの見え方が変わったのか、ボールの回転がよくなったのか、ファウルが取れるようになりました」

 ……などという話をしたのは、実はシーズン前。都市対抗出場を逃した東京ガスにあって、今季の野村はそれほど登板機会に恵まれていないようだ。シンデレラ・ストーリーに、サプライズはあるかどうか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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