【京都府長岡京市】老舗和菓子屋さんの玄関に手作り茅の輪も! 夏越の祓いって何? 水無月食べようよ!
古くから寺社で行われている「夏越祓」は「水無月の祓い」とも呼ばれ、1年のちょうど折り返しにあたる6月30日にこの半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事です。「茅の輪くぐり」とも。2022年6月15日、セブン商店街にある竹の子最中などでも有名な「喜久春」さんの玄関に大きな茅の輪が出されていました。店主の手作りだそうです。
この時期から、京都の神社の境内などにも茅草(ちがや)で作られた大きな輪が用意されはじめます。参拝者が左まわり、右まわり、左まわりと八の字に三回通ってくぐると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。正式には「千歳(ちとせ)の命のぶというなり」などと唱えながらくぐると良いのだとか。
さてその謂れはというと……。
旅の途中で宿を乞うた牛頭天王(須佐之男尊・スサノオとも)を裕福な弟の巨旦将来(こたんしょうらい)は断り、貧しい兄・蘇民将来は粗末ながらもてなしました。後に再訪したスサノオは、弟将来の妻となっていた蘇民の娘に茅の輪を付けさせ、目印として、娘を除く弟将来の一族を滅ぼしたのです。以後、茅の輪を付けていれば疫病を避けることができると教えたとされ、蘇民将来の一族は子孫代々に至るまで災いなく栄えたといいます。
701年の大宝律令によって正式な宮中の年中行事に定められ、この日には、朱雀門前の広場に親王、大臣ほか京にいる官僚が集って大祓詞を読み上げ、半年間の身の汚れをはらい、来たる半年の清浄を祈念しました。衣服を洗濯する習慣などのない時代、半年に一度、雑菌の繁殖し易い夏を前に新しい物に替える事で疫病を予防する意味があったとも考えられています。
6月30日は「水無月」を食べる日。
これは、「夏越祓(なごしのはらえ)」という行事に関係があります。「水無月」とは白の外郎(ういろう)生地に小豆をのせた、三角形の菓子ですが、其々に意味がこめられています。
小豆の色は魔除けの色、白色は清浄無垢、三角形は暑気を払う氷を表すのだとか。旧暦6月1日は「氷の節句」または「氷の朔日」といわれ、室町時代には幕府や宮中で年中行事とされていました。御所では「氷室(ひむろ)」の氷を取り寄せ、氷を口にして暑気を払いました。最高の贅沢でもありました。
氷の解け具合によってその年の豊凶を占ったとも、氷室の氷を口にすると夏痩せしないと信じられ、臣下にも氷片が振舞われたともいわれています。「氷室」とは冬の氷を夏まで保存しておく涼しい場所のことです。京都の北山には「氷室」という名の場所(衣笠山麓)があり、宮中に氷が献上されました。今でもその氷室の跡が残されています。
しかし、冷凍庫などない昔、庶民にとっては夏の水でさえとても貴重で、ましてや氷など手に入りません。そこは、京童たちの智慧、代わりに氷をかたどった菓子を作って無病息災を祈り、涼を楽しむようになりました。これが「水無月」なんです。
ちなみに、乙訓地域の神足神社、向日神社は茅の輪くぐりを、例年7月31日から、長岡天満宮は2022年8月24日、25日を予定しています。いずれも旧暦に合わせてのことだそうです。
「喜久春」(外部リンク) 長岡京市長岡2丁目28−40 075-955-8016