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フィロ・ティアティア&ジェイミー・ジョセフ。2年目のサンウルブズへ抱負。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
向こう数年間、日本ラグビーの浮沈のカギを握る?(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズが、2シーズン目に向けて会見。フィロ・ティアティアヘッドコーチ、選手との契約や諸般の準備を進める上野裕一・業務執行理事(CEO)、今季から着任の渡瀬裕司・CEO代理、日本代表のヘッドコーチでもあるジェイミー・ジョセフ・チームジャパン2019総監督が抱負を語った。

サンウルブズにとっての2017年度のスーパーラグビーは2月25日、東京は秩父宮ラグビー場で開幕。相手は前年度王者のハリケーンズとなる。

以下、会見要旨(編集箇所あり)。

上野CEO 

「2016年度は我々の準備不足、経験不足があだとなり、選手、スポンサー、マスコミ各社の皆さまに多大な心配をおかけしたことをお詫びいたします。暗中模索のなか、マーク・ハメット(前ヘッドコーチ)という稀代のスキッパーのもと、この船に勇敢にも乗り込んでくれた選手とともに、ボロボロになりながらも無事、帰港することができました。全国のファンの皆様の支えがあって、ここまで乗り越えることができました。

2016年シーズンの結果を真摯に受け止め、新たな再出発の気持ちで前に進んでいきたい。サンウルブズは、2019年のワールドカップ日本大会でジャパンが好成績を残すために結成されたチームです。世界トップレベルのゲームを経験することで、選手の知識、スキルを存分に引き上げることが目的です。日本代表との連携を密にし、運営を進めていきたいと思っています。

フィロ・ティアティアは昨季、ハメットの右腕として辣腕をふるってくれた。昨年度の経験を十分に活かしてくれるものと期待しています。今季は初戦のハリケーンズ戦を含め、ニュージーランドのチームとの試合が5つ組まれています。ニュージーランド事情に詳しいティアティア、それを俯瞰するジョセフの存在は大きい。

経営陣の強化は必須となります。その点で渡瀬を経営の中心人物に据え、ファンの皆様に楽しんでいただけるような取り組みをしたいと思っています」

渡瀬CEO代理 

「新ヘッドコーチを決めるに至った経緯をお話しさせていただけたらと思っております。2016年シーズン終盤から、さまざまな人選をおこなってきました。前ヘッドコーチのハメットから色んなインプットをおこなって、どういった人間、どういった素養がヘッドコーチに必要かを考え、選考にあたりました。

一番は2019年をにらんで、日本代表と連携して強化を進められる人材です。日本のチームであるが故、日本の選手や文化を理解できる人材がいい。

8月の始め、私と薫田さん(真広・男子15人制日本代表ディレクター・オブ・ラグビー)とニュージーランドへ渡り、ジョセフと合流。候補者の絞り込みをおこないました。再度、『サンウルブズのヘッドコーチに必要なものって何だろう』という話をさせていただきました。そして、『一番、大事にしたいのは、選手とスタッフをまとめられるリーダーシップ』という話が出ました。特にサンウルブズは、日本人と外国人が交わる多国籍のチーム。国や言語のバリアを越えてチームをまとめられる素養が必要だろうね、という話をしました。さらには2016年の経験を糧にして、継続性を担保できる人…。そうした観点をもとに候補者の絞り込みをさせていただきました。

そして、全会一致で彼(ティアティア)に頼もう、ということになりました」

ジョセフ総監督

「これからはフィロのサポートを精一杯させていただく。私のスーパーラグビーの経験が役に立っていくと思います。ひとつの役割だと思っております。代表とサンウルブズがきちんと連携するのが選手のベネフィットとなる。

スーパーラグビーは難しい。さらに日本は遠征をしていかなければいけない。とてもハード。そのうえでは準備が肝になる。フィロの経験、そのほかの経験が有益だと思っています。

いま、日本のラグビーは新しい景色を観ている。トップの選手は試合に出ずっぱりで、多ければ45試合、戦っている。これからはスケジュールをプレーヤーにとって適正なものにしなければいけない。それをサンウルブズのメンバーと考えていく。大事なのはプレーヤーです。

メディアの助けも必要。ファンの方々にこういった状況を伝えていただいて、日本人のラグビー選手の成長を目にしていただきたい、応援していただきたいと思っています。

ティアティアヘッドコーチ

「(にこっと笑みを浮かべ、一旦、静止。以下、しばし日本語で挨拶)こんにちは。フィロ・ティアティアです。私は去年アシスタントコーチをしていました。今年は素晴らしいチームを作るので、応援よろしくお願いします。

…日本語はここまでが限界です。ここから英語になることをお詫び申し上げます。

新しいサンウルブズのヘッドコーチとして非常にエキサイティングな気持ちです。コーチングチーム、選手を導けることを楽しみにしています。すでに隣にいるジェイミーが話をしてくれたように、メディアのサポートが必要です。これからサンウルブズが大変な戦いをすることを伝えていただきたいと思います。

さらに大事なのは、サンウルブズの来季のヘッドコーチとして大事にしたいのは、昨年のシーズンからの継続性です。皆さんにお見せするパフォーマンス、チーム文化は、マークハメットが基礎を築いてくれました。エキサイティングに思えるものはいくつかあるが、2月25日のハリケーンズとの試合が楽しみです。ホームでやる試合には全力を尽くす。

ホームゲームでは、ファンの皆様との関係を作って行けるのが楽しみです。昨年もファンの方々のサポートが素晴らしかった。ファンの方々が作ってくれたブランドは活きている。何らかの形で誇りに思ってもらえるものを作りたい」

――勝つためにプラスしたいものは。代表のレベルアップに繋げるためには。

ティアティアヘッドコーチ

「昨季、我々は初めてスーパーラグビーに挑みました。今季、スケジュールに大きな変化はなく、準備できるのは3週間。それでチャンピオンとぶつかるのは大きな挑戦。取り組みたい点はいくつかあるが、チームとして挑む強さを培いたい。

昨年、色々な経験をさせてもらって、得られた教訓は数えきれないものがあるが、プランニングが大事だと感じました。昨季のプランニングを振り返って、もっといいものにしていきたい。コーチングチームとしてもチームそのものとしても成長したい」

――日本代表との連関性、日本代表の選手のピックアップの方針、他のチームにいた日本代表選手について。

ティアティアヘッドコーチ

「サンウルブズが来季を戦うにあたって大事なことは、ここにいるジェイミーと話した。ハイレベルの舞台で我々がどんなプレーがしたいか、どんな強化が必要か。そのことについて、お互いが同じ方向を見ないといけない。そこでサンウルブズの私の責任は何かというと、少しでも日本代表の選手、日本代表となりうる選手に経験を積ませることだと思っています」

ジョセフ総監督

「私からも付け加えます。サンウルブズのプレーヤーのセレクションでもうひとつ理解しなきゃいけないことがあります。日本で代表資格を持つ選手を、2019年を見据えて観ていく必要があります。短期目標はスーパーラグビーを戦うことです。ただ、他のスーパーラグビーのチームもやっているところですが、日本で資格のある選手を育てていくことも大事です。

――4日に日本代表スコッドが発表された。ここからサンウルブズへどれくらいの選手が入るか。また、海外でプレーする選手について。

ジョセフ総監督

「私の考えを述べると、2015年以降、我々は国内外を問わず可能性のあるプレーヤーにはアプローチをしてきました。田中史朗、リーチ マイケル、五郎丸歩もです(いずれも海外のクラブと契約)。全員を日本代表やサンウルブズに入れたいという話はした。ただ、全部が全部、上手くいかないこともあるのが現状です。

先日、発表した代表スコッドでも、ノンキャップが15人います。それがひとつの特徴でもある。これが何を意味するか。新しいジャパン、です。

新しいプレーヤーに新しい挑戦の機会が与えられること。彼らには世界の舞台に挑戦し、サンウルブズでも戦ってもらう。それを念頭に置いています。望んでいることは、このままパスウェイを通って、日本代表になっていくことです。

仮にサンウルブズがいいプレーヤーを選んで成績を残しても、代表強化がままならない、となれば、意味がない。フィロと話しているのは、2チームの連携で日本のラグビーを次のステージに持って行くことが大事。日本には外国人選手も多くプレーしています。リーチは外れましたが、話はしています」

――選手やコーチとの契約状況は。

渡瀬CEO代理

「いまのところ、33名ほどに対してオファーは出しております。そんなななでサンウルブズで…と口頭で合意をいただいているのが14名ほどです。これからも選手と会っていきます。コーチは概ね…。ただ、最終的な契約書の締結はまだ。完了次第、公表させていただけたらと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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