私的興味の夏の甲子園!(6) 8回途中コールドで制した大阪桐蔭。過去には、ノーゲームも経験している
それにしても、かれこれ60回近くになる春夏の甲子園取材だが、これほど雨にたたられる大会は記憶にない。現時点で過去最多タイの5度目の順延で、決勝は最も遅い8月28日となった。
4試合が予定されていた17日も、そもそも雨の予報。大阪桐蔭と東海大菅生(西東京)を強行したのは、1試合でも消化したいという思いのためだろうが、1回戦屈指の好カードが8回途中でコールドという、気の毒な結末となった。
公認野球規則によると、5回裏の攻撃が完了、もしくはホームチームがリードして5回表の攻撃が終了しているか、5回裏のホームチームの攻撃中に同点に追いつくか逆転した場合に、正式試合が成立する。ただ高校野球特別規則では、その5回を7回として適用。甲子園では降雨、雷などの要因で、正式試合成立以降の続行が不可能になった場合にコールドゲームとなる。
この日の試合は、7回表の東海大菅生の攻撃が終わった時点で、裏の大阪桐蔭がリードしているため正式試合となったが、即座にコールドにしてはあまりに忍びない。できるだけ長く試合をやらせたい、という温情から7回裏も続行したと思われるが、8回にはスイングしたバットが手からすっぽ抜けたり、野手の処理前に内野ゴロが止まったり、もはや「野球にならない」(大阪桐蔭・西谷浩一監督)状態。で、8回コールドとなったわけだ。
天気予報がより精密になった近年、コールドゲームはめずらしい。1998年夏、如水館(広島)と専大北上(岩手)が6対6で7回引き分けとなって以来、23年ぶりのことだ。
コールドゲームとノーゲームの線引きは……
今大会でも明桜と帯広農の一戦がそうだったように、正式試合が成立する前に、続行が不可能となった場合はノーゲームで、中止と同じ扱いになる。春夏の甲子園では、6回終了時に10点リードしていても、7回表の攻撃中にゲリラ豪雨に見舞われればノーゲーム、というケースもありうるのだ。
よく知られるのは2003年夏。駒大苫小牧(南北海道)が倉敷工(岡山)に4回途中まで8点をリードしながら、予報より早く降り出した雨のために降雨ノーゲームとなった。当時の脇村春夫高野連会長は、「(一方が大量リードしているのに)中止にするのは、非常につらかった」と話し、駒大苫小牧は翌日の再試合で2対5で敗退して甲子園初勝利を逃したから、さらに気の毒。ただその悔しさをバネとして、翌04〜05年と、夏連覇を果たしている。
93年夏の鹿児島商工(現樟南)の場合なら、まず2回戦、堀越(西東京)に3対0とリードした8回表、突然の豪雨で球場全体が水浸しになり、降雨コールドゲームの適用で勝利した。だが3回戦は、常総学院(茨城)に4対0とリードしながら4回表、前日に続く雨で今度は降雨ノーゲーム。翌日の再試合では投手戦となり、なかなか点が取れずに0対1で敗れている。
校名を樟南に変更した翌94年夏も、双葉(福島)との3回戦は3対1と2点リード。試合成立寸前の7回裏途中、降り続く雨で中断してまたもノーゲーム……と思われたが、1時間10分後に試合が再開され、4対1で勝利している。それにしても、2年続けてよくよく雨にたたられた。
09年夏の第2日、8月9日の第1試合だった高知対如水館(広島)戦は、3回終了時で降雨ノーゲームとなり、翌10日も5回表途中で降雨ノーゲーム。史上初の、2日連続でのノーゲームとなった。主催者の配慮で、11日の仕切り直しは第1試合ではなく第4試合に組まれ、9対3で高知が勝利。ノーゲームの2試合ともリードしていた如水館にとっては、悔しい結末だった。
大阪桐蔭も、08年の1回戦でノーゲームを経験している。日田林工(大分)を4対0とリードしながら、2回裏途中で雷雨により降雨ノーゲームに。ナインには「再試合は、リードしていた学校が敗れるケースが多く、嫌な予感」という声もあったが、翌日の再試合は打撃が好調で16対2と圧勝。大阪桐蔭はこの大会、常葉菊川(現常葉大菊川・静岡)との決勝戦も17対0と圧倒的な大差で全国制覇を果たした。