日本の高齢出産の実情をさぐる(2023年公開版)
女性の出産年齢が上昇する傾向を高齢出産化と呼んでいる。今の日本では高齢出産化が進んでいるとの話だが、その実情を厚生労働省の定期調査「人口動態調査」の調査結果である「人口動態統計」の公開値から確認する。
平均的な高齢出産化の実情は、母親の出産時における平均年齢から一目瞭然。平均初婚年齢が上がり、それに伴い出産年齢も押し上げられる形となっている。
それでは具体的に、母親の年齢階層別でどのぐらいの数の子供が産まれているのか。その推移を見たのが次のグラフ。各年の「母親の年齢別出産数」を単純に積み上げグラフの形にしている(年代区分の時間的間隔が異なることに注意)。さらに各年の出生数合計に対し、どれだけの比率を占めているのかを年齢階層区分別に見たグラフも併記する。
実のところ戦前においても、現在ほどではないものの高齢出産はごく当たり前の話で、しかも出生数そのものが多いことから、高齢出産による出生数は現在をはるかに上回る数となっている。例えば1925年においては一般定義に基づいた高齢出産(35歳以上の女性による出産)数は42万8299人。直近となる2022年の23万1323人の約1.85倍にあたる。
これは戦前・戦中までの日本においては(他国同様)衛生面や社会インフラ、医療技術の点などで現在と比べてはるかに死亡リスクが高く、その結果平均寿命が短いため、出産が国策的に奨励されていたことが要因(「産めよ増やせよ」「富国強兵」あたりのキャッチコピーを知っている人も多いはずだ)。また生物学的・本能の面でも、人口の維持増大のためには健康である限り高齢でも出産をする社会的性質が後押ししていた。いわば「多産多死」の状態だったことになる。
高度成長期以降は若年層(赤系統色)による出生が減り、その上の層(青系統色)が増えているのが、このグラフからはよくわかる。出生数の変化は単なる減少ではなく、若年層による出生数の減少と、中年層による出生数の漸増という状況変化を伴ってのものである。1970年では20代までで7割強だった出生数が、直近2022年では3割強の状態にまで減少している。なお昨今の高齢出産化は晩婚化や医療技術の進歩、社会観の変化などが要因となっている。
高齢出産に関しては母親の心身にかかる負担なども合わせ、さまざまな問題が指摘されている。同時に初婚年齢が上昇する社会情勢ゆえに、時節の流れの上で仕方がないとの意見もある。どの意見が正しいのかについて早急な回答が出せるわけではないが、社会現象の一端として認識するとともに、必要ならばしかるべき対応をとるべきだろう。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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