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米債は5%でショートカバーが入る

久保田博幸金融アナリスト
(提供:イメージマート)

 米10年債利回りは現地時間23日早朝の取引で一時5.02%と2007年7月以来の水準に上昇した。その後利回りは急低下し、4.85%で引けている。

 実は同様の動きは、現地時間の19日の夕方にもあり、一時的に5%を16年ぶりに付けていたが、20日には4.91%に低下していた。

 これを見る限り、米10年債利回りの5%は大きな心理的な節目であり、押し目買いが控えているようにもみえる。

 ただし、23日の米10年債利回りが5%を付けたあとの急低下については、債券弱気派の一部の言動がきっかけとの見方があった。

 パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントの創業者である資産家ビル・アックマン氏は23日のソーシャルメディアへの投稿で、世界的なリスクが高まる中で、米国債のショートポジションを解消したことを明らかにした(24日付ブルームバーグ)。

 また、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同創業者であるビル・グロース氏は、年内のリセッション(景気後退)入りを見越して担保付翌日物調達金利(SOFR)に連動した先物を購入していると述べた(24日付ブルームバーグ)。

 アックマン氏は8月上旬、株式投資のヘッジおよび単独で確率の高い投資としてオプションを通じて米30年債をショートにしていると公表していたようで、米国債をショートし、それを買い戻したことでかなりの利益を得たものと思われる。

 5%がひとつの節目であることは、両氏に言われなくても確かであり、ショートポジションを解消する水準としたのは理解できる。両氏の言動が米長期金利の天井を示すものとなるのかどうかは、時間が経過しないとわからない。ただし、それなりのショートポジションが解消されたということも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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