台湾軍艦を一般公開。市民の支持獲得狙いか
台湾海軍が軍艦3隻を台湾各地に寄港させ一般公開している。台湾海峡で軍事行動を活発化させる中国軍に対抗せざるを得ない台湾軍としては、市民に親しみやすさをアピールし、台湾社会から一層の支持を得たいという目的もありそうだ。
台湾海軍が一般公開しているのは、同軍最大の補給艦「磐石艦」と、フリゲートの「迪化艦」「成功艦」の計3隻。今月9日の南部の高雄を皮切りに、台湾を巡って計7都市に寄港する予定。
筆者が取材したのは台湾防衛の要衝の一つでもある基隆港。政権中枢のある台北から車で1時間かからない近さ。同港での公開初日は楽隊や儀仗隊がパフォーマンスを披露し、観衆の喝采を浴びた。
軍艦の公開に加え、基隆港には様々な軍事ネタを駆使した“アミューズメント”ブースが設置された。モデルガンの射撃を体験できるコーナーやおもちゃの手榴弾を投げて、的に当てるゲームなどで、子どものみならず、大人たちも楽しんでいた。
本物の防弾チョッキやヘルメットを試着できるコーナーもあり、チョッキを着ていた少女に感想を尋ねてみたら「重い」と一言。
それぞれのブースでは、「入隊募集」と一応表示してあるが、どう考えても入隊年齢に達しない子供狙いのアトラクションもあり、軍に親しんでもらうのが第一歩のようだ。
艦上を案内してくれた入隊8年目という士官は、話の流れで、鑑が魚雷攻撃を受けた時の回避の仕方などを説明してくれた。「もしそんな事態になったら、うまく回避してくださいね」と言うと、「そういう攻撃を受けるような状況にならないことがベストですね」と笑った。その通りである。
それにしても驚かされるのは、台湾軍のソフト路線だ。ゆるキャラまで登場し、訪問客との記念写真に応じては愛嬌を振りまくサービス精神ぶりを遺憾なく発揮していた。強面で、強大さと強力さばかりをアピールする中国軍とは大違いだ。
その違いは、政権が選挙によって選ばれ、国防政策さえも民意によって支えられる必要がある台湾と、「中華民族の偉大なる復興」や「台湾独立は歴史的必然」などといった仮想現実のスローガンだけを理由に、14億人の国民を戦場に送り込むことさえ正当化しかねない、一党支配の中国との体制の違いでもある。
台湾海軍の副参謀長、張献瑞少将は集まった市民を前に「先進的且つ開放的な民主社会における現代的な国防には、民衆との結びつきが必須だ」と述べた上で、今回の参観を通じて人々の国防意識が高まることを希望すると訴えた。