Yahoo!ニュース

ジェローム・ウィリアムズがアスレティックスを相手に打ち立てた、いかにも彼らしいメジャーリーグ初の記録

宇根夏樹ベースボール・ライター

2014年9月20日、ジェローム・ウィリアムズ(フィラデルフィア・フィリーズ)はオークランド・アスレティックスを相手に投げ、勝利投手となった。ウィリアムズはこれがシーズン6勝目。最初の2勝もアスレティックス戦だった。ただ、ウィリアムズがフィリーズに加入したのは8月10日。4月26日のシーズン初勝利はヒューストン・アストロズ、7月25日の2勝目はテキサス・レンジャーズで挙げた。

イライアス・スポーツ・ビューローによれば、それぞれ違うチームの投手として1チームからシーズン3勝を挙げたのは、ウィリアムズがメジャーリーグ史上初だという。

ウィリアムズはメジャーリーグ9年目。7チームで投げてきたジャーニーマンだ。ピンクのグラブを使っているのは、チームカラーが頻繁に変わるからではなく、乳癌で亡くなった母を偲んでのことだが、傘下のマイナーリーグで投げただけでメジャーリーグに昇格できなかった球団――アスレティックスもその一つ――を含めれば、その数は10に上る。2008~10年はメジャーリーグの舞台から遠ざかり、独立リーグや台湾でも投げた。

アスレティックスから挙げた3勝のうち、先発登板した2試合はいずれも好投し、7月25日は6回1失点、9月20日は7回を投げて1点も許さなかったが、4月26日は7回表の途中からマウンドに上がって同点に追いつかれ、味方が8回裏に4点を挙げてリードしたものの、9回表に3ラン本塁打を浴びて1点差まで詰め寄られた。そもそも、投手の白星は必ずしも投球内容とは一致しない。

とはいえ、メジャーリーグ初の記録を作った投手としてレコードブックに名前を残すことになったのは、平坦ではない道のりを辿りながらも投げ続けてきたウィリアムズに対する、ささやかな褒美のように思える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事