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鈴鹿で1分36秒台の大接戦。タイヤが変わってもスーパーフォーミュラはコンペティティブだ!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
トップタイムをマークした中嶋大祐

GP2王者も参戦する「全日本スーパーフォーミュラ選手権」(スーパーフォーミュラ)の2016年シーズン開幕へ向けた戦いがいよいよ本格的に始まった。3月14日、15日の2日間、開幕戦の舞台となる鈴鹿サーキット(三重県)では「第1回公式合同テスト」が実施され、テスト走行ながらコースレコードを5台が上回る好タイムを叩き出した。

快晴に恵まれた鈴鹿でテスト走行が重ねられた。
快晴に恵まれた鈴鹿でテスト走行が重ねられた。

横浜ゴムの新タイヤで36秒台の戦い

2016年の「スーパーフォーミュラ」の大きな変更点はタイヤである。長年に渡ってブリヂストンが供給を続けてきた国内トップフォーミュラの足元を任されることになったのは「横浜ゴム」。これまで全日本F3選手権やWTCC(世界ツーリングカー選手権)などにタイヤ供給を行い、安定したパフォーマンスで実績は証明済みだったが、鈴鹿サーキットで1分40秒を上回るレースカテゴリーにおける供給は同社にとって未知の領域だったといえる。

今季から横浜ゴムがタイヤを供給する。
今季から横浜ゴムがタイヤを供給する。

昨年から横浜ゴムはテスト走行を行ってきたが、今回のテスト走行で導入されたのはいよいよ「量産体制」に入った本番用のタイヤ。全車イコールコンディションを保つために「性能の均一化」とチームからのフィードバックを得ての「改良」が課題だった。そして、本番用の新タイヤを履いたスーパーフォーミュラのマシンは安定した性能を発揮し、1分36秒台を5台がマーク。さらには1秒以内に14台のマシンがひしめき合う接戦状態で、レース本番に向けて大きな期待が高まっている。開幕までの準備はOKという状況だ。

ラインナップは強烈なメンバー揃い

2016年のエントリーを見てみよう。昨年と同じ全11チーム、19台がシリーズ参戦。エンジンはトヨタが11台に、そしてホンダが8台に供給する。

同シリーズのチャンピオン経験者は5人。石浦宏明(2015年)、中嶋一貴(2014年、2012年)、山本尚貴(2013年)、アンドレ・ロッテラー(2011年)、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(2010年)はそれぞれ昨年と同じチーム体制でレースに挑む。ルーキーとして参戦する関口雄飛、ストフェル・バンドーンを除くと移籍したのはナレイン・カーティケヤンだけ(Docomoダンデライアン→チーム・ルマン)。そういう意味では多くのドライバーがゼロスタートではない所からシーズンをスタートさせることができ、新タイヤへの順応もうまくいっている点からも激しい競争は継続されそう。

ホンダエンジンをt積むDocomoダンデライアンの野尻智紀
ホンダエンジンをt積むDocomoダンデライアンの野尻智紀

また差が非常に大きかった2メーカーのエンジンの性能もかなりホンダが追いついてきた印象で、テストのタイムを見る限りでは、コンペティティブな激戦になっていく可能性が高い。ドライバーがメインの戦いとなるシングルシーターレース「スーパーフォーミュラ」はファンが望む理想へと近づきつつある。

テストでは中嶋大祐が首位!ホンダが躍進!

3月15日、快晴の中、ドライコンディションで行われたテスト2日目。各チームは6セット24本が用意された新品タイヤをフルに使って、積極的に周回を重ねた。

2年目で初優勝が欲しい小林可夢偉
2年目で初優勝が欲しい小林可夢偉

午後のセッション終盤には激しいタイムアタック合戦が展開され、小林可夢偉(SUNOCO Team LeMans/トヨタ)が最初に1分36秒台に突入。そこから一気にタイムをあげてきたのは、中嶋大祐(NAKAJIMA RACING/ホンダ)だった。中嶋は小林のタイムを上回り、1分36秒706をマーク。ブリヂストンタイヤ時代にアンドレ・ロッテラーが記録した1分36秒996のコースレコードから約0.3秒も縮めてきた。気温、路面温度ともに低く、エンジンがパワーを発揮しやすい条件だったとはいえ、タイヤが変わった今季の進歩には驚くばかり。タイムアップの要因にはトヨタ、ホンダ各陣営のエンジンの性能アップが大きく影響していると考えられる。

特に素晴らしい進化を遂げているのはホンダ勢で、中嶋大祐がトップタイムをマークした時の西ストレートの最高速は290.8km/hを記録した。追い風に後押しされた部分はあるが、今季はホンダ陣営のドライバーたちも開幕から非常にポジティブに捉えられる状況になってきた印象。

中嶋大祐は兄弟揃ってのチャンピオンを目指す
中嶋大祐は兄弟揃ってのチャンピオンを目指す

躍進するホンダ陣営で、近年苦戦が続いていたNAKAJIMA RACINGの中嶋大祐がトップタイムを奪ったことは意外な結果だったが、中嶋大祐のエンジニアは今季も平野亮エンジニアで変わらず。昨年から平野エンジニアと積み上げてきた中嶋、そしてチームの力がようやく実りつつある証といえる。ファン感謝デー時の走行からチームメイトのベルトラン・バゲットも上位のタイムを記録しており、チーム全体として上り調子。NAKAJIMA RACINGの躍進はシリーズを面白くするという意味では非常にポジティブな要素だ。

とはいえ、あくまでまだテストの段階。今後、3月31日〜4月1日に鈴鹿とはキャラクターの異なる岡山国際サーキットでの第2回合同テストを経て、4月23日、24日の鈴鹿サーキットで開幕する。

2015年のシリーズチャンピオン、石浦宏明はタイトル防衛を狙う
2015年のシリーズチャンピオン、石浦宏明はタイトル防衛を狙う

5人のシリーズチャンピオン経験者、4人のF1経験者、WECワールドチャンピオンにGP2のディフェンディングチャンピオンを加えたドライバーラインナップでスタートダッシュを決めるのはどのドライバーだろうか?史上最もコンペティティブな「スーパーフォーミュラ」が始まる。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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