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電子版有料購読者が最多の英語媒体は米ニューヨーク・タイムズ これに続くのはどこか

小林恭子ジャーナリスト
米ニューヨーク・タイムズ社の外観(写真:ロイター/アフロ)

 英ニュースサイト「プレス・ガゼット」の独自調査(12月17日発表)によると、10万人を超える電子版有料購読者を持つ英語ニュースの媒体ランキングで、トップを占めたのは米ニューヨーク・タイムズだった。これに米ワシントン・ポスト、米ウオール・ストリート・ジャーナルが続いた。

 ランキングに入った24媒体の有料購読者数は合計で2000万人を超える。新型コロナウイルス感染症の拡大でニュース需要が高まり、一挙に数が増えたという。

 以下は、そのランキングである。

 1位はニューヨーク・タイムズの約600万人。購読料は4週間ごとに17ドル(約1750円)。

 トランプ米大統領の就任が追い風となり、マーク・トンプソン前最高経営責任者(CEO)の経営の下、電子版有料購読者数は10倍増加した。

 ニューヨーク・タイムズは、先月、2020年7ー9月期の購読料収入について、デジタル関連の収入が紙媒体からの収入を上回ったと発表している。

 メレディス・コーピット・レビーン現CEOは、プレス・ガゼットに対し、2030年までに英語ニュース媒体の電子版有料購読者は1億人にまで増えると予測。ニューヨーク・タイムズはその4分の1(約2500万人)を占めたいと語っている。

 2位はワシントン・ポストの300万人。購読料は4週間ごとに15ドル(約1540円)。

 同紙はアマゾンのトップ、ジェフ・ベゾス氏が所有しており、有料購読者数などを発表していないが、米サイト「Axio」が今年11月時点で、300万人と推計している。

 3位はウオール・ストリート・ジャーナルの約240万人。購読料は月極めで38.99ドル(約4000円)。

 4位はUSAトゥデーほか100紙以上の米国の地方紙を発行するガーネット社で、約102万9000人。

 5位:米スポーツサイトのアスレチック、100万人。

 6位:英フィナンシャル・タイムズ、94万5000人。

 7位は:英ガーディアン、90万人。このうち、35万2000人が携帯電話及びタブレットのプレミアム・アプリへの購読で、54万8000人が寄付。

 8位:英エコノミスト、約79万6000人。

 9位:豪ニューズ・コープ・オーストラリア、約68万5000人。ザ・オーストラリアン、デイリー・テレグラフ、ヘラルド・サン、クーリエ・メールなどを発行。

 10位:投資媒体の米バロンズ、45万8000人。米ニューズ・コープのダウ・ジョーンズ社の一部門。

 11位:米トリビューン・パブリッシング、42万7000人。ニューヨーク・デイリー・ニュース、ボルチモア・サンなどを発行。

 12位:米アトランティック、40万人

 13位:英タイムズとサンデー・タイムズ、33万7000人。

 14位:英テレグラフ、約33万5000人。

 15位:米マクラッチー、29万9000人。サクラメント・ビー、マイアミ・ヘラルドなどを発行。

 16位:米ロサンゼルス・タイムズ、約25万7000人。

 17位:米ブルームバーグ・メディア、25万人。

 18位:米ニューヨーカー、24万人。

 19位:米ボストン・グローブ、22万3000人。

 20位:米インサイダー・インク、20万人。ドイツの大手メディアであるアクセル・シュプリンガー社が所有する。ビジネス・インサイダーを発行。

 21位:米ワイヤード、14万2269人。印刷版は86万4000部を発行。

 22位:米ナショナル・ジオグラフィック、14万2074人。

 23位:米ミネアポリス・スター・トリビューン、10万2000人。

 24位:米ダウ・ジョーンズほか(フィナンシャル・ニュース、プライベート・エクイティなどを発行)、10万2000人。

 詳しい購読料やどの時点での数字かなどは、サイトの記事をご参考にしていただきたい。

なぜニューヨーク・タイムズが人気なのか

 ランキングを見ると、ニューヨーク・タイムズがダントツで人気があることや、英国の媒体ではフィナンシャル・タイムズ、ガーディアン、エコノミストが健闘していることが分かる。

 なぜニューヨーク・タイムズはこれほど人気があるのか。

 筆者は米メディアの専門家ではないものの、

 ー「デジタル強化」という方針の下、以前にBBCでデジタル化を主導したトンプソン氏を経営陣に迎え、これにリソースをつぎ込んだこと

 ー独自のジャーナリズム(トランプ政権を批判的に見る姿勢)や調査報道

 ー最初のハードルが低い(無料でも数本は拝読可能、かつ低価で購読を始められる)

 などが挙げられそうだ。

 筆者自身も有料購読者の1人だ。グローバル時代に生きる社会人として興味を持つ「国際的視点からの様々なトピックがカバーされている」、「米政権の批判的な見方が出ている」、「人を主人公とした、物語的語りの文章が読める」、「調査報道を読める」といった理由の他に、やはり「購読料が手ごろ」という要素にも惹かれている。

 また、有料購読者ではなくても聞けるのが、日刊のポッドキャスト「ザ・デイリー」。

思わず引き込まれる作りになっており、これだけでもお金を払う価値があるように思っている。

(ニューヨーク・タイムズが提供するポッドキャスト番組「ザ・デイリー」。ウェブサイトより)

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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