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元叡王・永瀬拓矢九段、今期本戦トーナメントでベスト8に進出 1回戦、黒沢怜生六段に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2025年1月8日。東京・将棋会館において、第10期叡王戦・本戦トーナメント1回戦▲黒沢怜生六段(32歳)-△永瀬拓矢九段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時3分に終局。結果は88手で永瀬九段の勝ちとなりました。

 本戦1回戦の以後の日程は以下の通りです。

1月11日 斎藤慎太郎八段-大橋 貴洸七段 大阪

1月20日 豊島 将之九段-青嶋 未来六段 東京

1月22日 木村 一基九段-戸辺  誠七段 東京

1月23日 阿久津主税八段-狩山 幹生五段 東京

1月24日 鈴木 大介九段-黒田 尭之五段 東京

1月27日 糸谷 哲郎八段-本田  奎六段 大阪

 永瀬九段は阿久津八段-狩山五段戦の勝者と2回戦で対戦します。

永瀬九段、きれいに決める


 黒沢六段は埼玉県出身で1992年3月7日生まれ。幼少期の頃からその才能を知られ、2021年の小学生名人戦では準優勝しています。

 永瀬九段は神奈川県出身で1992年9月5日生まれ。両者は同世代で、永瀬少年は小学生の頃、黒沢少年にまったく勝てなかったそうです。


 叡王1期の実績を持つ永瀬九段。前期は挑戦者決定戦で伊藤匠七段(現叡王)に敗れています。


 黒沢六段は今期、段位別予選・六段戦に参加。高野智史六段、渡辺和史七段、田中悠一六段、西川和宏七段に勝って初の本戦進出を決めています。


 本局は振り駒で黒沢六段が先手。振り飛車党の黒沢六段は中飛車を選びました。対して永瀬九段は急戦の構え。時代が何周かして、古くて新しいような駒組となりました。

 序盤の駆け引きのあと、先に動いたのは黒沢六段。対して永瀬九段も反発し、中盤の難しい戦いに入りました。

 75手目、黒沢六段は銀を捨て、その代償に桂を取りながら角を成り込みます。その動きに応じて永瀬九段も反撃し、次第に優位を確かなものとしていきます。


 88手目、永瀬九段は王手で金を打ちます。これがきれいな決め手で、7手先には王手馬取りがかかります。黒沢六段は攻防ともに見込みなしと見て投了。永瀬九段の勝ちとなりました。

白熱のトーナメント


 前日の1月8日におこなわれた本戦開幕戦では、藤井聡太七冠が増田康宏八段に勝っています。

 厳しいトーナメントを勝ち抜いて、伊藤叡王への挑戦権を獲得するのは、果たして誰でしょうか。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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