藤井聡太名人への挑戦権争い混沌 A級順位戦は6回戦まで終わり、4勝2敗で4人が並ぶ大混戦
12月26日。愛知・名古屋対局場において第83期順位戦A級6回戦▲佐藤天彦九段(36歳)-△菅井竜也八段(32歳)戦がおこなわれました。
10時に始まった対局は22時21分に終局。結果は98手で菅井八段の勝ちとなりました。
6回戦を終えた時点でのリーグ成績は以下の通りです。
【6勝0敗】ー
【5勝1敗】ー
【4勝2敗】永瀬拓矢九段、佐藤天彦九段、佐々木勇気八段、増田康宏八段
【3勝3敗】渡辺 明九段、中村太地八段、千田翔太八段
【2勝4敗】豊島将之九段、菅井竜也八段
【1勝5敗】稲葉 陽八段
【0勝6敗】ー
藤井聡太名人(22歳)への挑戦権争いで暫定的にトップに立っていた佐藤九段は、4勝2敗に後退。同じ星で4人が並ぶ大混戦となってきました。
また菅井八段は2勝目をあげ、残留争いもまた、熾烈さを増しています。
菅井八段、一気の寄せで制勝
星取りの上では、佐藤九段は名人挑戦、菅井八段は残留を目指しての戦いとなりました。
菅井「ちょっと成績的にかなり苦しいので。でもあんまり、成績気にしても仕方ないので、普通にやろうかなと思いました」
菅井八段は生粋の振り飛車党。一方、佐藤九段は近年、居飛車党から振り飛車党にシフトチェンジした感があります。5回戦までで、菅井八段は4局が振り飛車。佐藤九段は全5局が振り飛車でした。
本局、先手の佐藤九段は初手で飛車先の歩を突き、居飛車で戦うことを明示します。対して菅井八段はなかなか態度を明らかにしません。そして序盤の駆け引きの末、定跡形をはずれた相居飛車となりました。
菅井「こういう展開もあるのかなと思ってました。(阪田流向かい飛車や△3三金型の三間飛車など)そういう可能性もあるんですけど。まあでも、自分が振り飛車党なので、あんまりそういう作戦はさせてもらえないとは思ってました。阪田流っていうのは、自分の意思ではできない作戦なので。△3三角成と交換してこなければ、居飛車は仕方ないかなと思います」
菅井八段は右玉に構えたあと、52手目、守りの銀で相手の攻めの歩を取り、銀を取り返す強気の順を見せます。ここから本格的に駒がぶつかる戦いが始まりました。
形勢は拮抗したまま、終盤戦に入っていた93手目。佐藤九段は桂を成り、相手陣に打ち込んでいた飛車の縦の筋を通します。しかしこの手が菅井八段からの鋭い寄せを見落とした敗着となったようです。
94手目。菅井八段は歩頭に桂を打ちます。これが鮮烈なハードパンチ。桂を取っても取らなくても、佐藤玉は寄り形に。菅井八段は一気呵成の寄せで佐藤玉を即詰みに打ち取りました。
大混戦の様相
7回戦の組み合わせは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)
△永瀬 拓矢九段(4勝2敗)ー▲渡辺 明九段(3勝3敗)
△佐藤 天彦九段(4勝2敗)ー▲中村 太地八段(3勝3敗)
▲佐々木勇気八段(4勝2敗)ー△千田 翔太八段(3勝3敗)
△増田 康宏八段(4勝2敗)ー▲豊島 将之九段(2勝4敗)
▲菅井 竜也八段(2勝4敗)ー△稲葉 陽八段(1勝5敗)
現在ですでに大混戦の様相ですが、7回戦の結果によっては、さらに混沌の度合が増す可能性もあります。
佐藤九段は年明け1月7日、中村八段と対戦します。
膝の手術を受けた渡辺九段は現在休場中。1月20日に復帰が予定されていて、そのあと、永瀬九段と大きな一番を戦います。
菅井八段は佐藤九段に勝ったあと、次のように語っていました。
菅井「結果としてはよかったんですけど。やっぱり、順位戦としてのリーグでの成績で見ると、相当に厳しいので。あんまり現状は変わってないかなと思います」
次の稲葉八段との対戦は、残留を目指す上では直接対決となります。
A級は7回戦までは基本的に1局ずつおこなわれ、最後の8回戦、9回戦は5局いっせいにおこなわれます。
8回戦は1月28日。「将棋界の一番長い日」と呼ばれる最終9回戦は2月27日に予定されています。